
Z世代から絶大な人気を集めるインフルエンサーのMINAMIさん(18)は、小学生の時から毎日、ショート動画を投稿するようになり、いまやTikTokやYouTubeなどの総フォロワー数は500万人を超える。
一方で、光が強ければ強いほど、影も濃くなるのがSNSの世界。MINAMIさんもこれまで、多くの誹謗中傷を受けてきたという。
匿名による言葉の攻撃からどう身を守り、発信を続けてこられたのか。10〜20代の若者に向けたメッセージと合わせて思いを語ってもらった。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●「死ね」「ブス」、バズるたびに増えた誹謗中傷──これまで誹謗中傷にあたるようなコメントやメッセージを受け取ったことはありますか?
「はい、あります。動画の投稿を始めた頃は、ファンというか、ただ通りすがりに見てくれた人が『いいね』を付けてくれたり、コメントを残してくれたりしていました。
でも、中学生ぐらいになって動画がよくバズるようになると、私を知らない人も見ることになるので、『死ね』や『ブス』といったアンチコメントが来るようになりましたね。
SNSのおすすめ欄に私の動画が自動的に上がるようになると、誹謗中傷をする人もそのぶん多くなってくるような気がします。
コメント欄に悪質な誹謗中傷に対するフィルターをかけても、縦読みすれば誹謗中傷と受け取れる内容のコメントが書き込まれることもありました。
LINEの「オープンチャット」で卒業アルバムの写真や自宅の住所をさらされたこともありました」
──誹謗中傷やアンチコメントを見た時、どんな気持ちになりましたか?
「正直、活動当初だと記憶が曖昧な部分もあるんですけど、純粋に『なんでこの人たちはこんなこと言うんだろう?』って不思議に思う気持ちの方が強かったかもしれません。
悪いことをしていなくても、こういうアンチコメントが来るんだなって。『理解できない』という感覚でしたね」
●父親がアンチコメントを読み上げ「覚悟が決まった」──子どもがネット上で悪口などを言われたら親も心配になりますが、MINAMIさんのご両親はどんな様子でしたか?
「たぶん、親は私の知らないところでけっこう悩んでる部分があったと思います。私には見えないようにしてくれていたのかなとは思うんですけど。それぐらいひどいコメントもあったので。
特に父は、『私には言えないぐらいコメント欄がひどいことがあった』と言っていたことがあるので、私に対する誹謗中傷や傷つけるコメントを私の目に入らないようにしてくれていたんだと思います。 そういえば、書き込まれたアンチコメントを父が私に読み上げたことがありました。『こういうコメントも来るということを知っておかないとやっていけないよ』って教えてくれたことがありました。今思えば、そこで覚悟が決まった部分もあったかもしれません」
●「人間はちっぽけ」身を守るためのMINAMI流マインド──MINAMIさん自身は、動画を投稿する際や発信する際にどんなことに気をつけていますか?
「私は、見せる部分と見せない部分を自分の中ではっきりと分けています。自分が好きなことだけをしても、それを見て不快に思う人もいると思います。ファンの中には私に憧れみたいなものを感じてくれる人もいると思うので、そういった人たちの期待を裏切らないようにしないといけないなって」
あとは、動画を投稿する時、その中の一部が切り取られて誤った伝わり方がされないように、ドッキリ企画のように一部だけ見たら嫌な思いを持たれる可能性があるようなシーンには補足や説明のテロップを入れることもあります」
──SNSを使う上で、誹謗中傷の被害者や加害者を生まないために、MINAMIさんが同年代の若者たちに伝えたいことはありますか?
「私の個人的な意見になってしまうんですけど、世界地図などなんでもいいんですが、広い世界を見ると、良くも悪くも『私ってちっぽけな存在なんだな』と思うんです。
私は、良いことがあれば素直に喜ぶんですけど、悪いことが起きたり嫌なことを言われたりすると、『人間ってちっぽけだよね』って都合よく思っているんです。自分を俯瞰(ふかん)して見ることで、少し安心できるというか。
もちろんそんなふうに考えられない人もいると思うので、そういう時は1回休むとか、コメントをオフにしたりDMを解放しない設定にしたりとかすればいい。
みんなと合わせる必要はないし、我慢して使い続けなければいけないことでもないので、自分のペースでやるのが大事だと思います」
●「なぜ人は誹謗中傷するの?」MINAMIさんの疑問に弁護士が回答なぜ人は誹謗中傷をするのでしょうか?
そんなMINAMIさんの素朴な疑問に対して、ネット上のトラブルに詳しい清水陽平弁護士は次のように説明する。
「深い理由はありません。動画などをちょっと見ただけで不快に思って、軽い気持ちで投稿しています。誹謗中傷しようと思って投稿していないことが多いです。コメント欄などが荒れているところでは目立たないので、より荒れていくことがあります」
もし誹謗中傷を受けた時は、問題の画面をスクリーンショットし、可能であれば投稿されたURLと投稿日時がわかる形でPDFにして保存しておくと良いという。
清水弁護士はそのうえで、「ネット上の書き込みを気にしすぎないことも重要です。SNSの世界は狭いので、誹謗中傷のようなコメントがたくさんあっても、一度冷静になって、世界中から批判されているわけではないということは知っておくと良いと思います。そして、1人で悩まずに周りの人に相談してほしいです」と話す。

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