
長い耳を持っているのでウサギの仲間と思いきや、実はネズミ(げっ歯類)の仲間であるというこの愛くるしい動物はビスカッチャ(ビスカーチャ)の一種だ。
トロ~ンと眠そうな表情があまりにも愛くるしすぎると、海外のSNSで話題となり、寝落ち状態のビスカッチャの画像がシェアされている。
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ビスカッチャがとろ~んとした眠そうな顔をしている理由
ビスカッチャ(Viscacha)はビスカーチャとも呼ばれ、チンチラ科、ラギディウム属(Lagidium)およびラゴストムス属(Lagostomus)のげっ歯類だ。
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南米アンデスやペルー、チリ、アルゼンチンやエクアドルの山岳地帯などの高地で暮らしており、現在5種が確認されている。
とろ~んと眠そうな顔がネット上で人気を集めているのは、主にミナミビスカッチャ(ヤマビスカッチャ)と呼ばれる種だ。

日中に、いつもウトウト眠そうな表情をしているのは夜行性だからだ。
本来昼間は地下に掘った巣穴のなかで休んでいるのだが、朝日が昇りはじめると、日光が当たるところにじっと座り込で日光浴をする。
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自らの身体を温めることで一日が始まる。半分眠りながらも太陽エネルギーを蓄えているのだ。
ビスカッチャは現在5種が確認されている
それぞれ5種の特徴は以下の通り
ミナミビスカッチャ(学名:Lagidium viscacia)
「ヤマビスカッチャ(Mountain viscacha)」の名でも知られる種で、アンデス山脈の高地に広く分布する代表的な高山性ビスカッチャである。
体長は約29.5〜46.4cm、尾長は21.5〜37.6cm、体重はおよそ3〜7kgとされ、同属の中では比較的がっしりとした体格を持つ。
全身は厚い毛皮に覆われており、特に腹部から体側にかけて赤みを帯びた黄褐色の被毛が特徴的だ。
標高3,500〜5,000m級の極寒地に生息しており、夜間は-15℃以下にもなる厳しい気候の中で暮らす。
そのため、日中は岩の上でじっと日光浴をする習性があり、寒さをしのぐとともに体温調整を行っている。
このときの姿勢や表情が非常にかわいらしいことから、SNSなどでも人気を集めている。
ミナミビスカッチャはアンデス山脈南部(ボリビア、チリ、アルゼンチンなど)に広く分布し、観察例・写真・映像の多さから“ビスカッチャの顔”的存在となっている。
Photo by:iStock キタビスカッチャ(学名:Lagidium peruanum)
ペルーのアンデス山脈に生息する高山性ビスカッチャで、ミナミビスカッチャと同じラギディウム属(Lagidium)に属する。分布は主にペルー中央部の高地で、標高は森林限界から雪線の間にあたる岩場に多い。
体長は約30〜45cm、尾の長さは20〜40cm、体重は0.9〜1.6kgと、ミナミビスカッチャよりもやや小柄でスリムな体格をしている。
被毛は灰色または褐色で、長い耳とふさふさした尾を持つ点は共通するが、全体的に色味はやや落ち着いており、赤みがかることは少ないことからミナミビスカッチャと区別できる。
生活様式も似ており、大規模なコロニーを作りながら、家族単位で縄張りを分けて暮らす「集合住宅型」の社会構造を持つ。
生息地が過酷なため、あらゆる植物を幅広く食べる雑食性で、厳しい環境でもしたたかに生き抜いている。
キタビスカッチャも岩の上で休む姿が観察されるが、ミナミビスカッチャよりは撮影例は少ない。
Photo by:iStock パンパビスカッチャ(学名:Lagostomus maximus)
アルゼンチンの草原地帯に分布し、ビスカッチャの中では唯一ラゴストムス属(Lagostomus)に属する種である。耳は他の種より短く丸みを帯びる。
体長は約47〜66cm、尾の長さは15〜20cm、体重はオスで5〜9kg、メスで2〜8kgと、家猫よりもやや大きいがっしりとした体格をしている。
10匹から100匹以上の大規模なコロニーを地下の巣穴に作って生活する。警戒心が強く、外敵を見つけると大きな声で警報を発する。
顔にある黒と灰色の口ひげのような模様が特徴的で、他種と容易に見分けがつく。10匹から100匹以上の大規模なコロニーを地下の巣穴に作って生活する。警戒心が強く、外敵を見つけると大きな声で警報を発する。
Photo by:iStock アウアカビスカッチャ(学名:Lagidium ahuacaense)
ラギディウム属(Lagidium)に分類される比較的新しい種で、エクアドルのアンデス山脈で発見された高山性ビスカッチャである。詳細な生態はまだ十分に解明されていないが、標高の高い岩場に生息していると考えられている。
体長は約40.3cm、尾長は約40cm、体重は約2.03kgとされており、同属の中では中程度のサイズである。
Image credit:© Josh Vandermeulen[https://www.inaturalist.org/observations/261679857] / CC BY-NC-ND 4.0[https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/] ヴォルフソーンビスカッチャ(学名:Lagidium wolffsohni)
現存する5種の中で最も希少とされるビスカッチャで、アルゼンチン南西部からチリ南部にかけての高地に生息する。標高800〜4,000mの岩場を好み、岩陰で日光浴をする姿が見られる。
体長は約47cm、尾長は約30.5cmで、他のラギディウム属に比べてやや大型とされるが、体重に関する詳しいデータは未記録である。
被毛は赤みがかった黄土色で、尾は特にふさふさと長く、耳は短めで黒色。現在は「情報不足(Data Deficient)」として扱われ、詳しい生態や分布は今後の調査に委ねられている。
Joaquin Valentinuzzi [https://www.inaturalist.org/photos/86694586] / WIKI commons[https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Lagidium_wolffsohni.jpg] / CC BY-NC-ND 4.0[https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/]
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高地に住むビスカッチャは日光浴で体温調節
ミナミビスカッチャなど、高地に生息する種は、空気が薄く、夜間の気温は-15℃以下となる環境のため、厚い毛皮を持ち、毛皮で寒さをしのいでいる。そして日光浴をして血の巡りを良くし、体温調節をする。

それにしてもほわーんとしたこの表情。愛嬌があってかわいい。ポケモンにでてくるカビゴンのウサギバージョンといった感じだろうか?
ウサギじゃなくてチンチラ科に分類されるげっ歯類の仲間だけども。
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普段はめったに動かないが天敵発見で素早く逃げ込む
酸素濃度が薄いことから、体力を無駄に消耗しないようにするため、普段はほとんど動くことはない。
落石以外はほとんど動かないとも言われるが、敵を発見すると仲間に知らせるために大きな鳴き声をあげ、外敵を見かけると岩の上を素早く飛び回り、巣穴に逃げ込む。
草についた霜が溶け始めると食物をさがし始める。基本的に草食性であり、草や草の種子などを食す。
乾燥地には草があまりなく、採餌は楽ではない。生きるために必要な水分は食物からとっている。

天敵はアンデスに住むネコ科やキツネ、ピューマなどの食肉目やワシなどの猛禽類、ヒトなどである。
あのかわいらしい希少なネコ科のコロコロも天敵である。
ただし、酸素濃度が薄いために捕食者も追跡に体力を大きく消耗することから、深追いされることはあまりないそうだ。
こんなにおっとりしたビスカッチャだけど、過酷な環境を生き延びる知恵を十分に身に着けているので、国際自然保護連合(IUCN)では、「低危険種(絶滅のおそれもなく、近い将来絶滅に瀕する見込みが低い種)」に分類されている。

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