
この記事をまとめると
■GTI生誕50周年にあわせ「GTIロードスター」実車版がお目見えしていた
■503馬力・0-100km/h加速3.6秒の性能で究極のGTIの姿を具現化した
■市販化の可能性は低いが世界のGTIファンから熱い視線を集めた1台
究極のGTIを具現化したコンセプトカー
VWにとって、「GTI」の称号がいかに特別なものであるのかは、改めて詳しく説明する必要もないだろう。VWのコンパクトスポーツカーを意味するGTIの歴史は長く、つい先日はGTI生誕50周年を記念する特別仕様車「ゴルフGTI EDITION 50」が2026年に発売されることも発表されたばかり。ちなみにこのモデルは、ニュルブルクリンクのノルド・シュライフェ(北コース)で7分46秒13という驚異的なラップタイムを達成。それはオンロード走行が可能なVW車としては史上最速の記録である。
ゴルフのほかにもポロや古くはルポにも設定されていたGTIには、当然のことながら熱狂的なファンが世界中に多く存在する。毎年オーストリアで開催されるGTIファンのための「GTIミーティング・アット・ウォルフスブルク」などは、その人気ぶりを物語る象徴的なイベントだ。
そんなGTIミーティングであるウォルフスブルクでは、毎回斬新なニューモデルが発表されることが常となっているが、2014年の同イベントでは、究極のGTIともいえる1台が登場し、大きな話題を呼んだ。それはソニー・エンターテインメントのゲームソフト、「グランツーリスモ6」における「ビジョン・グランツーリスモ」とコラボレーションするために、VWがデザインした「GTIロードスター・ビジョン・グランツーリスモ」の実車版だ。
VWによれば、それは伝統的なゴルフGTIのデザインDNAを継承し、さらに迫力あるボディデザインを実現した、まさに究極ともいえるGTI像を具現化したモデルであるという。
フロントマスクのデザインなどには最新のゴルフGTIの面影も感じられるものの、新たに「GTIロードスター」とネーミングされたそれには、まったく新しいデザインコンセプトが採用されている。
中身はスーパーカーそのもの
ロードスターというネーミングからも明らかなように、このモデルは軽快さを強く演出したオープン2シーターとしてスタイリングされており、フロントウインドウは低く、そしてサイドウインドウもそれに呼応するかのようにコンパクトな造形を持つ。フロントフェンダーからボディサイドを経て、リヤフェンダーに至るシャープなライン構成も、このGTIロードスターにおいては大きな見どころのひとつだ。
リヤには巨大なウイングが装備され、エアロダイナミクスの最適化が図られている。前後のホイールは20インチ径とされ、それもまたフットワークの力強さをイメージさせる重要なアイテムだ。このままプロダクション化が実現すれば、GTIの究極形として話題を呼ぶことは間違いないだろう。
フロントに搭載されるエンジンは、3リッターの排気量をもつ直噴V型6気筒ガソリン、すなわちこれもVWのファンならば特別な感情を抱かずにはいられない「VR6」だ。それにツインターボのシステムを組み合わせることで得られる最高出力は503馬力。最大トルクは666Nmを発揮する。組み合わせられるミッションは7速のDSG。駆動方式はVW独自の4WD機構である「4モーション」で、この強大なパワーを常に効率的に路面へと伝達する。
GTIミーティング・ウォルフスブルクでは、その予想される運動性能についての発表もあった。まず誰もが注目する最高速は310km/h、加えて0-100km/h加速で3.6秒という数字を公表してきたのは、やはりVWがこのコンセプトカーに対して抱く自信の表れといったところだろうか。
GTI、そしてVWのファンとして気になるのは、はたして近い将来、VWがこのGTIロードスターのプロダクションモデルを生み出すのかどうかといった点にあるはず。現在の段階では、それに関して一切のアナウンスはないが、仮に実現すれば、GTIはコンパクトスポーツカーからコンパクトスーパースポーツの称号へと、さらなるバリューを得ることになる。
1990年代終盤、6リッターのW型12気筒エンジンを搭載するコンセプトカー、「W12シンクロ」と「W12ロードスター」、そして「W12ナルド」で、スーパースポーツの世界にも興味を示した過去もあるVW。このときは残念ながらそのプロダクション化は実現しなかったが、今回こそはと願うファンはきっと多いに違いない。
GTIロードスターは、VWの目論みどおりGTIミーティング・ウォルフスブルクにおいて大きな話題を呼び、そしてまた将来、GTIの歴史を語るうえでは欠かすことのできない存在となるはず。世界のGTIファンのプロダクション化への願いが叶うことを、切に願いたい1台である。

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