
いつまで続くか分からない物価高。家計が厳しくなるなか、サラリーマンの懐事情も同様に厳しさを増しています。節約できることも限られ、その影響はランチタイムにも及んでいます。「コンビニおにぎりでさえ高い!」。そんな悲鳴が聞こえてきそうです。
月収45万円・42歳会社員…公園のベンチでため息
昼休みのオフィス街。その一角にある小さな公園のベンチで、コンビニのおにぎりを食べている田中健一さん(42歳・仮名)。ここから徒歩15分ほどのオフィスビルで働くサラリーマンです。
「ここなら知り合いに会わないかと思って。今日も『ランチはどうする?』と誘われた手前、顔を合わせづらいんですよね」
そう苦笑いを浮かべながら、スマートフォンに視線を落とします。今日の昼食は、コンビニで買ったおにぎり2個と、毎日自宅から持参するお茶です。「おにぎりは1個税込150円以内に抑えたいのですが、最近はコンビニのおにぎりも高くて……」とため息をつきます。
田中さんの月収は45万円、年収では750万円です。厚生労働省の『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、大卒40代前半のサラリーマン(正社員)の平均給与は月収で42万円、年収で704万円。田中さんの給与は平均を上回っていますが、手取りは月に約34万円です。2歳下の妻もパートで家計を支えていますが、やりくりは厳しく、この春から自身の小遣いを月3万円から2万円に減らしたといいます。
【月収45万円・42歳サラリーマンの手取り額(目安)】
■額面収入:450,000円
■手取り額:342,058円
(内訳)
所得税:16,890円
住民税:22,770円
健康保険:21,802円
厚生年金:40,260円
介護保険:3,520円
雇用保険:2,700円
※東京都在住、40歳以上の場合
「昔は300円もあれば牛丼を食べられたのに……。みんなどんな風にやりくりしているんだろう」
周囲には、テイクアウトのランチを広げる会社員の姿がちらほら見えます。どこかのキッチンカーで買ったのか、おしゃれな雰囲気のランチボックスです。思わず、自分が手にしているおにぎりと比べてしまいます。
「惨めだな……」
負担重い「住宅ローン」と「教育費」…しかし給与は上がらず
田中さんは2年前にマイホームを購入しました。駅近の4LDK、6,000万円の新築マンションで、4,500万円を借り入れたといいます。30年返済で月々の支払いは約13.4万円。返済負担率は20%ほどで、適正とされる範囲内です。
ただ、最近家計を圧迫しているのが、小学6年生の長男と小学4年生の長女の教育費です。中学受験を控える長男の塾代は月に5万円を超え、さらに季節講習などで年間30万円ほどの追加費用がかかります。
長男の頑張りに触発されたのか、長女も「私も塾に行きたい!」と言い出しました。子どものやる気を無下にするわけにもいきません。まだ小学4年生のため、国語と算数だけでも月に3万円、長期休みの講習を最小限に抑えても、年間でさらに10万円ほどの費用が発生します。
「子どもたちの将来のためだ。ここで投資を惜しむわけにはいかない」
しかし、教育費は公立と私立のどちらに進むかで大きく異なります。文部科学省の『令和5年度 子供の学習費調査』によると、公立中学校の学習費総額は年間約54万円に対し、私立中学校では約156万円と、100万円以上の差が生じます。これでは、中学受験の合格を素直に喜べない家庭もあるのではないでしょうか。
しかも、物価高で負担が増す一方、給与はほとんど上がらず足踏み状態です。
「新卒の給与は随分と上げたようですが、その分、私たち中堅層はさっぱりです。この年齢になると転職にも覚悟が要りますし、単に『給与が安い』という理由だけで会社を辞めては、失敗する確率も高い。会社も足元を見ているんですよ」
内閣府の経済財政報告によると、2023年4月~7月の平均賃上げ率は、29歳以下で前年比3.1%増、30代は2.4%増だった一方、40代と50代はいずれも0.1%減でした。2024年は全世代で賃上げとなったものの、29歳以下で4.2%増、30代で3.6%増に対し、40代は2.7%増、50代は1.0%増にとどまり、中堅層以上が「給与が上がらない」と嘆く実態が浮き彫りになっています。
「下の子が大学を卒業するまで、あと12年……。そのとき私は50代半ばです。長い我慢になりそうですね」
[参考資料]
内閣官房『新しい資本主義実現本部(第35回)配布資料』(令和6年4月23日)

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