
2024年のNHK連続テレビ小説「虎に翼」に続き、2025年もドラマ「地獄の果てまで連れていく」、映画「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」などで活躍中の俳優・井上祐貴。そんな井上がこの度「チョイ住み」(NHK)に出演。元プロボクサー・長谷川穂積とオーストラリアでいきなり1週間共同生活を送り、アップデートできた価値観とは? 2度目となる大河ドラマへの出演も決まった井上に、俳優としての現在地を語ってもらった。
■人見知りの準備人間、異国の地でいきなり…!?
――“その国にちょっとだけ住んでみる”がコンセプトの「チョイ住み」に対する印象は?
僕の性格上、最初は楽しみよりも不安のほうが大きかったです。今回のオーストラリアに行ったことがないだけではなく、海外への渡航経験も2度目、とほぼなくて。大学時代にタイに行きましたが、当時は友人たちと一緒の旅で、年齢的にも勢いがあって、何より単純に“旅行”でしたから。
――今回は、初対面の方と、旅行ではなくいきなり“共同生活”をする企画で。
そうなんです。僕にとって、同居って家族のような安心感や信頼が生まれてから考えることなのに、いきなり(笑)。人見知りなので、ワクワクもしたけれど、かなりドキドキでした。
――同居相手の長谷川穂積さんについてはいかがですか?
僕は格闘技が大好きなので、防衛戦などももちろん見ていました…10度も防衛してるんですよ!? ボクシング界のレジェンドなので、初めて対面した時は頭が真っ白になりました。
――(笑)。実際にお会いしてみて、印象はいかがでしたか?
意外にも人見知りで、何だか自分を見ているような感覚もありました。だから、あまりガツガツ行けなくて。「これ見ました!」「あれも見ました!」って言いすぎても多分、引かれるだろうなと。結果的にそれが良かったのかな? 今は“ほづ兄”って呼ばせてもらっています。
――すごい進歩ですね!
ほづ兄はめちゃくちゃ天然なんですよ。試合やドキュメンタリー番組などで見てきた強くてかっこいいイメージのまま、“ツッコミたくなる天然”を発揮してくるんです。だから、僕も普通に「いやいや、蓋、逆です」と言わざるを得ない(笑)。でもそのおかげで距離も縮んだ気がします。
――井上さんは普段からツッコミタイプですか?
別にツッコミたくてツッコんでるわけではないのですが、そういうことが多いですね(笑)。ある意味、僕も普段の自分をどんどん解放できたということかもしれません。
■他人の信じる自分を信じて…また次の壁へ挑む!
――俳優として心がけていることは?
僕は、カメラや観客の前に「これでいいのかな?」という不安や疑問を持ったままでは立ちたくないタイプです。わかってないまま何となく演じたものがたまたま合っていたとしても、自信にはつなげられないので…。演出する側とのすり合わせも事前に突き詰めて、“その人”として立つように意識しています。
――行き当たりばったりじゃないからこそ、臨機応変ができるという。
まさに、その心掛けです。でも最近は、その先の感覚になってきたといいますか…例えば、長くて重くて大変なシーンで、自分が目指していた100%をやり切ったと手応えを感じたときに、監督に「もう1回行ってみる?」と言われた瞬間、うれしさと高揚を覚えたんです。
――「今はもうこれ以上はできない」と真っ白にならず。
昔はそうだったのですが、「もっといいものが撮れそうな気がする」と、僕に可能性を感じてくださっているんだと思えるようになって。自分が全力だと思い込んでいたものより、さらに上があると信じてくださったのなら、僕もそう思ってくださる方を信じて応えたい、「よっしゃ、やってやる!」と。その時少し壁を超えた感覚がありました。もちろんまだまだ実力不足ですが。
――自分で気づいていないだけで、次の準備ができていたのかもしれないですね。そして、大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」に松平定信役での出演も決まりましたね。
松平定信という、その時代においてとても重要な人物を演じさせて頂けることがとても嬉しいです。早口ながらも相手を伺い、試しながら江戸幕府の財政を立て直していく定信を、楽しみながら全力で向き合っていきたいと思います。
――新たなキャリアになりそうですね。
そうですね、この作品をきっかけにまた新たな自分をお見せできればいいなと思いますし、自分自身の経験としても大きなものにできるよう、頑張りたいと思います。
◆取材・文/坂戸希和美

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