信じると危険?「アレルギー出にくい卵」実験結果は…

 「平飼いの卵はアレルギー反応なし」「独自の飼料でアレルギーが出にくい」

【映像】大学で卵を分析 実験結果は

 SNSやショッピングサイトには、鶏の飼い方やエサを工夫することで、その鶏が産んだ卵を食べてもアレルギーが出ないなどとする情報がたびたび投稿されている。果たして本当なのだろうか。

 卵アレルギーの人が卵や卵を含む食品を食べると、蕁麻疹などの皮膚症状や呼吸困難、重篤な場合はショック状態に陥る場合もある。

 消費者庁は2010年、「アレルギー患者が食べられる」などと称する卵の販売サイトについて、「生命に関わる可能性がある」として注意喚起している。

 しかし、現在も似たような表現で販売するサイトが複数存在する。ニュース番組『ABEMAヒルズ』が事業者らに「アレルギーが出ない」とする根拠を問い合わせたところ、「販売を取りやめる」と回答した事業者もあった。

 しかし、ある事業者は…。

「実験結果や測定結果は、弊社は持ち合わせておりません。経済的になかなか難しいです。弊社の販売も40年以上たつが、いまだ『アレルギーが出た』というお声はいただいておりません」(A社担当者)

 従業員や購入者らの「食べてもアレルギーが出なかった」という声を元に販売を続けているという。ただ、それらの声が本当だったとしても「個人の体験談」がすべての人に当てはまるとは限らない。

 果たして、飼育方法やエサを工夫すれば卵アレルギーが出にくくなるということはあるのか。

アレルギーが出ない卵?大学で実験

「アレルギーが出にくい卵」と普通の卵の組成の違いを検証

 食品成分などの分析設備を持つ、名古屋学芸大学・管理栄養学部の内藤宙大助教に、実験をしてもらった。

 卵アレルギーの主な原因は卵白のタンパク質で、代表的なものには4つの種類がある。今回は、「アレルギーが出ない」などとされている卵と普通の卵で、その組成に違いがあるのかを調べた。

 実験に使ったのは、「アレルギーが出にくい」と謳って販売されているA社の卵、「平飼いの卵」として売っている一般的な卵など、計5種類だ。

 実験は電気泳動という方法で行った。網目状のゲルに卵の試料を通過させると、タンパク質を分子の大きさで分けることができ、組成が可視化できる。

 その結果は…「5つの卵全てでタンパク質組成は変わらず、ということが読み取れる」(内藤助教)
 
 実験結果を学部長の和泉秀彦教授が次のように解説する。

「主なアレルゲンには、オボアルブミン、オボムコイド、オボトランスフェリン、リゾチームというタンパク質がある。どの卵にもすべてのタンパク質が入っていて、卵によってタンパク質の組成が大きく変わることはない。基本的にどれかがなくなったり、どれかが増えたりすることはない、ということが明らかだ」(和泉秀彦教授、以下同)

「実際にタンパクレベルからの話をすると、タンパク質そのものが入っているので、それに対してアレルギー症状を起こしてしまう」

「アレルギー出にくい」検証の“解析結果”

「アレルギーが出にくい卵」は本当?

 一方で、世の中のすべての卵を同様に実験できるわけではないため、これからもさまざまな効果を謳う卵が出てくる可能性もある。

「それは論文化されたデータを元にして言っているのか、ただ1人や2人の例で言っているのか、全くわからない。ただの1例や2例がネットに上がっているだけでそれを信じるのは危険だ」

 今回の分析結果をA社に伝えたが、見解は変わらないということで販売は続いている。

「“アレルギーが出にくい”という表現は、正直なところグレーであることは存じておりますが、表現しても良いのではないかと現在、掲載しております」(A社担当者)

法に触れる可能性は?

誤情報 法的責任は?

 事業者が販売サイトに「アレルギーが出にくい」という文言を掲載した場合、法的にはどのような点が問題になるのか。弁護士の佐藤みのり氏は次のように述べる。

「食品衛生法の20条に違反する可能性がある。食品衛生法20条は、食品に関して公衆衛生に危害を及ぼす恐れがある虚偽の、または誇大な表示、広告を禁じている。『アレルギーが出ない』とまでは言っていなくても、『出にくい』としていれば、内容によっては誤解も生じさせ、規定に触れてくる可能性はある」(佐藤みのり氏、以下同)

 患者やその家族は、アレルギーに対する知識もあるため、情報の真偽を見極められるかもしれない。

 しかし、注意が必要なのは、それ以外のアレルギーに詳しくない第三者がこうした情報を信じて他人に勧めるケースだ。

 番組の取材では、祖母が孫のアレルギーを知りながらも、「平飼いの卵はアレルギーが出ない」と信じて食べさせようとした事例もあった。

 ちなみに、「アレルギーが出にくい卵」などとウェブで検索をすると、広島大学などが研究中の卵に関する情報が多く出てくるが、これは今回番組で取り上げた「アレルギーが出にくいと謳った卵」などとは別物だ。

 広島大学などで研究中の卵は、ゲノム編集によってアレルゲンの一つであるオボムコイドをなくしたもので、一般販売はされていない。

(『ABEMAヒルズ』より)

「アレルギーが出にくい卵」を信じると危険 大学で実験すると…アレルゲンに差はなし 販売事業者は「正直グレーだが掲載」