
アニメハックで連載中の聞き書きコラム「明田川進の『音物語』」を書籍化した「音響監督の仕事」(星海社新書)が7月15日に発売された(電子書籍も発売中)。
同書には、「AKIRA」「銀河英雄伝説(OVA)」など多くの作品で音響監督を務め、日本アニメの黎明期からアニメ音響の現場に関わり続けている明田川進氏(マジックカプセル会長)のオーラルヒストリーを、連載コラムを再構成するかたちで収録。岩田光央、佐々木望、松風雅也、伊藤かな恵、杉井ギサブロー監督との対談も再構成のうえ収録し、書籍だけで読める要素として、明田川仁氏との音響監督親子対談、原口正宏氏(リスト制作委員会)による明田川氏のフィルモグラフィーなどを新たに収録している。
星海社が運営するサイト「ジセダイ」の内容紹介ページから、まえがき、目次のほか、コラムの一部を読むことができる(https://ji-sedai.jp/book/publication/2025-07_onkyokantokunoshigoto.html)。
本書のまえがき全文は以下の通り。
【「音響監督の仕事」まえがき】
本書は、エイガ・ドット・コムが運営するアニメ情報サイト「アニメハック」で2018年から連載中の聞き書きコラム「明田川進の『音物語』」を再構成し、新規取材などを追加した1冊です。
アニメーションにおける音響制作の舞台裏、声の芝居の奥深さ、映像と音の関係などが平易な言葉で語られ、明田川さんのお話自体が、国内アニメの音響の歴史を紐解く秘話が満載のオーラルヒストリーでもあります。アニメ・声優ファンの方はもちろん、日本のアニメの歴史に興味のある方、アニメに限らず「映像の音」全般に関心がある方にも面白く読んでいただけるはずです。
語り手の明田川進氏は、音響制作会社マジックカプセルの創業者・会長で、音響監督として「AKIRA」、OVA「銀河英雄伝説」シリーズなど、多くのアニメ作品を手がけてきました。「鉄腕アトム」の放送がスタートした1963年にアニメ業界に入り、日本のアニメ黎明期から現在にいたるまで60年以上、アニメーションの音の現場に携わり続けています。
アニメーションは基本的に、音のない映像にセリフ、音楽、効果音などが付けられることで完成します。音響監督は、監督やプロデューサーの意向を聞きながら、声優、音楽家、音響スタッフらをディレクションし、音に関する責任を一手に担う役割です。音響監督が具体的にどんな仕事をしていて、どんなことを考えたり感じたりしているのか。明田川さん自身の仕事を振り返りながら、様々な角度から語ってもらっています。
この本は、どこから読んでも構いません。目次を見て気になったところからお読みください。コラムパートの「音響監督が考えていること」ではオーディションや収録などアニメの音響に関すること全般、「音響監督クロニクル」では明田川氏が手がけてきた作品や一緒に仕事をしてきた人物に関するエピソード、「音響監督はどう生まれたか」では、まだ音響監督という言葉がなかった頃からアニメの音響に関わってきた明田川氏が、手塚治虫の自宅を訪ねたことをきっかけに音響監督の道を歩むことになった足跡をまとめました。
対談パートには、明田川さんと縁の深い声優の岩田光央氏、佐々木望氏、松風雅也氏、伊藤かな恵氏、『鉄腕アトム』からの長い付き合いである杉井ギサブロー監督、明田川さんの息子で同じ音響監督の明田川仁氏とのトークを収録(掲載順)。対談とコラムの話題はリンクしており、あわせて読むとより理解が深まることでしょう。
巻末には、明田川氏の仕事歴をまとめた作品リストを収録しました。国内商業アニメの基礎情報を記録し続けている「リスト制作委員会」代表の原口正宏氏(アニメーション史研究家)による大変な労作です。このリストを一望すれば、明田川氏が長年多数の作品に携わってきたことを分かっていただけると思います。
アニメハック編集部

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