なかなか結婚に踏み切れない2組のカップルが、7日間の海外旅行を経て、最終日に“結婚”か“別れ”のどちらかを決断しなければならない「ABEMA」オリジナル結婚決断リアリティ番組「さよならプロポーズ via スペイン」。

【写真】婚前契約書が話題となったタカミツ&タマミカップル

今シーズンは、交際2年半の26歳のアパレル店員のケイゴとアイブロウサロンを経営する29歳の彼女のヤワラ、交際4年目の43歳の会社経営者のタカミツと29歳モデル兼システムエンジニアのタマミの2組のカップルが、スペインを旅しながらふたりの未来について見つめ直しています。

今回は、結婚情報サービス「ゼクシィ」のブランディングプロデューサー・森奈織子さんと、女性向けのキャリアスクール「SHElikes(シーライクス)」などを展開するSHE株式会社代表取締役・福田恵里さんに、番組を見た感想、リアルなカップルとリンクする部分、結婚への悩みについて教えてもらいました。

■2組のカップルの悩みは今の社会構造をリアルに映し出している

――番組をご覧になられていかがでしたか?

福田 面白かったです。番組の中でも何回も出てきていますが、「付き合うことと結婚は違う」など、愛や好きという気持ちだけではどうにもできないことがあるのは、すごくリアルに感じました。私は結婚していて、自分とパートナーとの価値観のすりあわせをしたことがあるので分かるのですが、他人同士が価値観をぶつけ合ってすりあわせていくプロセスはなかなか見られないものなので、かなり面白く興味深かったです。

森 私はカップルのお話などを聞く機会があるのですが、価値観のすりあわせが上手くいかなくて揉めた、という悩みがかなり多いんですよ。だから共感しかなかったです。特に、仕事を頑張りたいヤワラさんが結婚しちゃって大丈夫かな?と悩んだり、ケイゴさんのロマンチックな結婚観を現実にすりあわせていったりする過程などは、本当にあるあるだなと思いながら見させていただきました

――結婚を意識しているカップルのあるあるが詰まっているんですね。結婚となると仕事のキャリアへの影響や出産を意識することでの葛藤も描かれていました。

福田 2人の女性は共に29歳で、仕事も順調なんですよね。20代後半から30代に向かって、自分の知識もついてきて、人脈も広がって仕事が一番面白くなってくるときに、結婚や出産の適齢期がやってくる…。キャリアを選ぶのか家庭に入るのかといった二項対立に迫りがちな社会構造をリアルに映し出しているカップルだったと思います。

森 弊社のリクルートブライダル総研の調査で「女性で結婚を悩む理由」を見ると、「行動や時間が制限される」とか「生き方が制限されてしまうのではないか」といった答えが上位なんです。それこそ結婚して出産などをすることでの自分のキャリアへの影響、人によっては趣味の制約を気にしている方が多いのだと思います。

福田 タイプこそ違いますが、ヤワラちゃんもタマミちゃんも今の自分の生活がやっぱり大切だし楽しいから、この自由を手放す怖さを抱えているんですよね。私もふたりとはタイプが違いますが当時は同じ悩みを抱えていたので、ちょっと面白いなと感じました。

――お二人とも結婚されていますが、当時の自分と重ねながら見ていましたか?

福田 私は27歳の時に結婚したんですが、登場する4人全員に共感ポイントがありました。それこそ結婚する前は、これから先が長い中、恋愛でいちいち気持ちを消耗したくないから誰か1人を一生愛したい、タマミちゃんみたいに愛の保証が欲しいと思っていました。私はどちらかというと、自由よりプライベートを安定させて仕事を頑張りたいという気持ちが強かったんです。

そして現在は色々な結婚の形を見ることによって、タカちゃんのように「結婚だけがふたりの形ではない」ということもわかると思うようになってきました。だからこそ、まずは婚前契約を結びたいという気持ちも分かります。それこそ会社経営をされている方なら、仕事に対してのリスクヘッジは必ずするので、なぜ結婚でも同じことを考えないのか…と思うと当然のことだなと感じたり。本当に色々なところで自分に置き換えて新たな発見がありました。

森 私も結婚しているのですが、どの段階でもこういう悩みがあったなと思い出しましたタカちゃんが持った「結婚するメリットとは?」「パートナーシップでもいいのでは?」という疑問は、「ゼクシィ」の読者からも聞こえてくることなので。今のカップルの縮図だなと思いました。

■“ふたりのルール”作りは素晴らしいアイデア

――2組のカップルは悩みながらもそれぞれのやり方で胸の内を伝え、解消するために動きましたが、ご覧になっていていかがでしたか?

森 タマミさんが、婚前契約書ではないけれど、結婚したら守っていこうという“ふたりのルール”を書いていくプロセスはすごくいいと思いました。書くことで、実際に口に出せなかった疑問などを明確にしていけるんですよ。

福田 “お互いへのお願い事”がリアルでしたね。話しているだけだと流れていってしまうこともあるので、お互いに書き留めることで自分の思考を整理し、自分の価値観に照らし合わせて何が絶対に譲れないのかを明確化するのは本当に大事ですね。きっと結婚した後も、あのノートはずっと指針になっていくと思います。

森 形に残すというのがいいんですよね。宣誓とかしてもいいのかも。

福田 我が家もファミリールールのようなものは作りました。結婚式で結婚証明書にしてみんなにサインをしてもらって…。

森 最近は人前式とかあるので、大事な事はルールとして多くの人に共有してもらうというのも今後、うまくやっていくコツなのかもしれないです。

■お互いの優先順位を尊重するには?

――今回見ていて、意外と大事な事を話し合わないでここまできたのか…と思うシーンが多かったと思うのですが。

福田 ケイゴくんが「子どもが欲しい」と思っていたことを、旅先でヤワラちゃんが知りますが、2年半も付き合ってきてそこから?とは思いました。

森 でも意外とあるんですよ。日々忙しいし、休みの日はリラックスしたいからそこまで詰めて話したくないというか…。最近は結婚相手の方とマッチングアプリでの出会いがきっかけの方もいるのですが、お互いの価値観を知るきっかけを、意識的に作っていくと良いと思います。

福田 そんな中、ヤワラちゃん&ケイゴくんカップルが、自分たちのライフサークルで何を優先したいのかをすりあわせていたのは、本当にこの人と一緒に生きたいんだという思いが伝わってきました。これってとても大事で。お互いの優先順位がズレることは大いにあるのですが、そこで悩むのではなく、お互いの優先順位の高いところを認め合い、では何をすれば尊重できるようになるのかを考えることも大事だと思います。

私も結婚前に家事配分が多いと感じて「家事を可視化しよう」と提案したのですが、夫が私に言ったのは「俺たちは家事がイヤだから家事をやらないためにはどうしたらいいかを考えよう」と言ってくれて。結局、IoT家具を購入したり、お互いの財布から家事代行さんを頼んだり…とアイデアを出し合って、悩みの根本を解決しました。

森 パートナーと一緒に生きていくことを選択する以上、そのすりあわせは大事ですよね。そしてすりあわせたことで、自分の知らなかった世界を見ることができて世界が広がったり、成長につながったりすると思います。それこそが、誰かと一緒に生きていくと決めた醍醐味だと思うので。大いに話し合って、まだ見ぬ自分たちと出会っていくことがとても大事だと思います。

福田 大切なのは、価値観が違ったときに相手に合わせる、妥協するといったネガティブな話し合いではなく、お互いの思いを叶えるためにどうするか、クリエイティブなアイデア出しだと思って話し合うと、すごく明るく議論が進んでいくと思います。

森 そうですね。そして意外と大事なのが、ステレオタイプに囚われないでいること。家族ってこうあるべき、子どもを持つとこうしなければいけない…なんてことに悩まれる方が多いですが、それこそふたりのやり方でいいと思います。

福田 特に女性側に多いですが、昔の自己犠牲が美徳みたいな女性像がまだ根強く残っていたりするんですよ。そして完璧にできないことに勝手にプレッシャーを感じて疲れていく…。完璧主義は身を滅ぼすだけなので、いろんなことを手放すことを許容することも大事だと思います。あと、今の時代、全てふたりでやらなければいけないなんてこともないので。家族、友達など周りにいる人と助け合いながら生活していくことが大事だと思います。

■結婚はゴールではなく、ふたりで生活していくスタートライン

――悩みができたら、その都度、話し合う習慣をつけていくといいのかもしれないですね。

福田 対話をするクセはつけた方がいいと思います。ちょっとしたことから言い出せなくなって限界を迎えてしまうより、違和感を察知したときはすぐに相手に伝えるようにすることが相手へのリスペクトのような気もします。

森 よく結婚してからも“3年目の壁”と言われる亀裂が入るタイミングがありますが、これも一緒に生活したからこそ見えてくるズレをその場で解決しなかったことで生まれることだったりします。それこそ靴下を脱ぎっぱなしにするとかバスタオルをどれくらいの頻度で洗うのかというような衛生問題が発端だったりして…。たいしたことないと思っていても、こまめにガス抜きをしないといずれ大きな問題になっていくので、常に話し合う習慣づけをしていくといいと思います。

――その最初のきっかけとして、今回みたいにじっくり話し合うための旅行は大事なのかもしれないですね。

森 普段、時間が取れないカップルこそ、強制的にこのような時間を取ることは大事だと思います。この人と結婚するかしないかを決める大きな一歩になると思います。

福田 今回、旅の途中でケイゴくんが、「実は俺、貯金ないんだよね」と勇気を持って言っていましたが、こういうことも非日常でないと言えないですよ。それもお酒が入っていないと(笑)。そして受け止める側も、非日常だからこそ素直な気持ちで聞けるのかもしれません。心に余裕が持てる時間って本当に大事だと思います。

森 あと旅先で素敵なカップルに出会ってお話を聞いていたのも良かったです。

福田 ふたりだけだと主観のぶつかり合いになってしまいますが、第三者の鏡を置くことで自分たちを客観的に捉えることができるんですよ。そして学ぶことも多い。特に旅先だと今後絶対に会わないだろうから何でも言えたりしますし。結婚を考えているカップルは、みんな「さよならプロポーズ」に出るのがいいのかもしれないですね(笑)。

――改めて、「さよならプロポーズ」の魅力を教えてください。

森 やはり自分と照らし合わせながら見ると、自分の結婚観や自分が何をしたいのかが見えてくると思います。ここまでリアルにカップルを映すことってないと思うので、自分事のように捉えて見ることで、自分の人生をどうするのか考えるきっかけになる気がします。

福田 恋愛リアリティーショーですが、もっと奥が深いですよね。

森 人生や生き方を考える、といった裏テーマがあるような気がしました。

福田 改めて、結婚はゴールではなく、ふたりで生活していくスタートラインなんだと思いました。そしてこの番組を見ることで、何が自分の心地いい生き方なのか、自分の幸せの輪郭を確かめることができる、いいきっかけだと思いました。

私は、タマミちゃんとタカミツくんが、サグラダファミリアを見て「未完成って我々みたいだよね」と言っているシーンが印象的で。人間は不完全だからこそ美しいし、その不完全なふたりが寄り添いあって新しい形になるからこそ結婚って面白いんだと思いました。お互いのいいところをミックスさせて足りないところを補っていく…。完璧なんて求めなくていいんだって教えてもらったような気がします。

森 未完成なところが愛おしかったり、ふたりの形を作り続ける工程に楽しみがあったりすると思うんですよね。2組のカップルがどういう決断をするのか、見守りたいと思います。

さよならプロポーズ via スペイン最終話は17日(木)まで無料配信中。ABEMAプレミアムでは全話視聴可能なほか、2組のカップルのその後とスタジオでのMC陣とのアフタートークを公開している。

SHE株式会社代表取締役・福田恵里さん(左)と「ゼクシィ」ブランディングプロデューサー・森奈織子さん/撮影=阿部岳人