
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、電波利用に影響を及ぼす「スポラディックE層」がどのようにできるか調べる観測ロケットを、内之浦宇宙空間観測所(鹿児島・肝付町)から7月15日12時に打ち上げた。ロケットは正常に飛行し、内之浦南東海上に落下。搭載した実験機器で取得したデータの確認・評価を今後行う。
JAXAが今回打ち上げたのは、磁場や電場などを調べる観測機器を搭載した小型ロケット「S-310-46号機」。上空100km付近(中緯度域電離圏)に突発的に現れる、スポラディックE層と呼ばれる“金属イオンの雲”を観測し、その形成過程を解明することが今回のミッションだ。
ロケットの大きさは全長8m、直径0.31mで、重量は0.8t。頭胴部の先端部をはじめ各所に、磁場計測器や電場観測機器のほか、大気やイオン、電子の状態を調べる機器など、計7つの観測機器を取り付けており、いずれもスポラディックE層内部と周辺においてデータ取得に成功したとのこと。
当初、S-310-46号機は7月8日に打ち上げ予定だったが、「打ち上げ条件が整わない」として同月15日に延期していた。なお打ち上げ条件は、情報通信研究機構(NICT)の山川観測所のイオノゾンデ観測により、打ち上げ予定時刻にスポラディックE層が十分な強度で存在することが予想され、また打ち上げに支障をきたさない天候であることの2点だった。
一般的に、スポラディックE層が発生すると、本来は受信できないはずの遠方のFMラジオの電波が受信できたり、逆に混信によって音声などに乱れが生じる(妨害される)といった影響が知られている。スポラディックE層という単語は、「散発的な」という意味のsporadicと、高度100km付近の電離層であるE層からなる。
その正体は高度100km付近に急に現れる、鉄など金属でできた雲のようなかたまり。もとになる金属は流星が燃え尽きて放出されたものと考えられていて、大部分が、原子イオンと電子に分かれたプラズマ状態になっている。現れたり、消えたりを繰り返すが、その原因は未解明。ただし、流星の量とは直接関係していないとも考えられている。
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