ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は7月11日、新作情報番組『State of Play』のなかで、10月2日発売予定の話題作『Ghost of Yōteiゴースト・オブ・ヨウテイ)』を特集した。

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 2024年9月にその存在が明らかとなったときから、2025年屈指の話題作として、界隈の注目をほしいままにしてきた同タイトル。本稿では、今回の配信の内容を踏まえたうえで、あらためて『Ghost of Yōtei』に求められるものを考えていく。

■『Ghost of Tsushima』の続編にあたるアクションADV『Ghost of Yōtei

 『Ghost of Yōtei』は、SIE傘下のゲームスタジオである米・Sucker Punch Productionsが開発を手掛けるアクションアドベンチャーだ。2020年に発売され、大好評を博した『Ghost of Tsushimaゴースト・オブ・ツシマ)』の続編にあたるタイトルで、今作では同作から約300年後の蝦夷地を舞台に、幼少期に家族を殺された孤独な武芸者・篤(あつ)の目線から、憎き「羊蹄六人衆」を追う復讐の物語を見つめていく。

 特徴となっているのは、さらに進化を遂げたオープンワールドの世界。ターゲットの選定など、物語の攻略順は自由に選ぶことができ、追跡の途中では、賞金首を成敗して銭を稼いだり、武器の達人を見つけ新たな技を身に付けたりと、幅広い遊び方が可能となっている。美麗なグラフィックで表現された「蝦夷地」の風景に酔いしれることもまた、同タイトルのひとつの楽しみ方であると言えるだろう。

 『Ghost of Yōtei』は、2025年10月2日発売予定。対応プラットフォームはPlayStation 5のみで、価格は、スタンダードエディションが8,980円、デジタルデラックスエディションが9,980円、コレクターズエディションが31,980円となっている(※)。

※コレクターズエディションはパッケージのみの展開。各版に同梱される特典については、公式情報を参照のこと。価格はすべて税込み。

■ストーリー、システム、遊び方……あらゆる箇所に散りばめられた「自由度の高さ」

 配信は約20分の内容で、大きく三部で構成されていた。司会を務めたクリエイティブディレクターのジェイソン・コネル氏とネイト・フォックス氏によると、映像は一部にトレーラー用にカメラアングルを調整した箇所があるが、基本的にはPlayStation 5実機でキャプチャーされたもので構成されているという。概要を説明した1分ほどの冒頭部分だけでも、『Ghost of Yōtei』の特長のひとつである、羊蹄山を臨む美しい景色をあらためて堪能できた。

 第一部にあたるパートでは、同タイトルの物語に焦点が当てられていた。印象的だったのは、主人公の篤が「怨霊」と表現されていた点。タイトル名にある「Ghost」というワードは、こうした篤のあり方を表しているのかもしれない。

 ナレーションによると、彼女は蝦夷地の人々に「仇討ちを求める亡霊」と思われているとのこと。「在りし日の温かい思い出」と「家族を殺された痛み」が篤の復讐の原動力であり、ゲーム中には、彼女に感情移入させるための仕掛けとして、幸せだった子供時代にワープする仕組みも採用されているという。説明を聞くかぎり、前作『Ghost of Tsushima』で好評だった秀逸なストーリーテリングは今作でも健在のようだ。

 他方、第二部にあたるパートでは、システム面をクローズアップ。制作にあたり、自由度が最重要視されたことが明かされた。プレイヤーは今作に新たに導入された手がかりシステムによって、さまざまな冒険へと誘導されていくのだという。その道の先には、敵との戦闘だけでなく、新たな技を習得する機会も待ち受けているようだ。配信内では、賞金首の仕組みや、技を習得するために探す必要がある地蔵の存在にも言及があった。

 また、『Ghost of Yōtei』には、刀や槍、鎖鎌、大太刀、二刀など、さまざまな武器が登場し、プレイヤーは好みや戦略に応じて、それらを使い分けることができるという。各武器はアップグレードによって強化も可能とのこと。この点もまた、今作に盛り込まれた自由度の一端と考えることができそうだ。

 第三部にあたるパートで触れられたのは、本編に付随するさまざまなゲームモードについて。『Ghost of Yōtei』には前作と同様に、フォトモードが実装されており、旅の各地で撮られたスクリーンショットを編集し、保存もしくはSNSへの投稿が可能だという。

 「黒澤モード」に代表される映像エフェクトも搭載。さらに今作では、『十三人の刺客』で知られる映画監督の三池崇史氏、『サムライチャンプルー』で知られるアニメ監督の渡辺信一郎氏に敬意を払い、新たなエフェクトも用意したとのこと。『Ghost of Yōtei』は、ゲーム本編以外の部分でも、さまざまな楽しみ方が見いだせる設計となっているようだ。

■懸念は人物描写と物語の背景に 『Ghost of Yōtei』はファンの期待に応えられるか

 はたして『Ghost of Yōtei』は、前作の成功によって膨れあがるシリーズファンの大きな期待に応えられるだろうか。今回の配信では、そこかしこに正統進化の様子をうかがうことができたが、その反面で、実際に全体をプレイしてみなければわからない懸念点も生まれたように思う。それは「主人公のパーソナリティや物語の背景が、『Ghost of Tsushima』のそれに匹敵するクオリティで描かれるのか」という点だ。

 たとえば、篤と前作の主人公境井仁とのあいだには「死に直面した家族を助けられなかった」という共通項があるが、前者が復讐心に駆られた存在である一方で、後者は「(後悔から)物怖じに対して強い嫌悪感を持つ」「武士としての道を重んじ、正々堂々と戦うことに固執する」というはっきりとした人格を持っていた。このことは『Ghost of Tsushima』の世界観、ストーリーテリングにも小さくない影響を与えており、それらによってプレイヤーは同作の世界へとのめり込むことができた面もあった。

 現時点で篤がおなじように複雑なパーソナリティを持つかは判明していない。場合によっては、復讐ばかりが先に立った描かれ方をしている可能性もあるだろう。もしそうであれば、『Ghost of Tsushima』の続編にふさわしい体験は期待できなくなると言わざるを得ない。

 また、物語の背景についても同様だ。『Ghost of Tsushima』では元寇に揺れる日本の対馬/壱岐を舞台に、その時代ならではの武士のあり方が描かれていた。今回、舞台はその約300年後、江戸時代の蝦夷地へと変更となっているが、少なくとも現時点では、同地をめぐる歴史的背景と世界観/ストーリーテリングとの交わりが十分に明らかにはなっていない。人物描写とおなじく、拙い描かれ方をするようであれば、前作のような評価を獲得するのは夢のまた夢と言えるのではないか。

 『Ghost of Yōtei』の発売までは、あと2カ月半ほど。このような懸念点はもしかすると、今後の情報公開で解消されていくものなのかもしれない。SIEの看板のひとつとなったこのシリーズだけに、ファンの期待を裏切ることなく、リリースに至ってほしいという気持ちが強くある。上述の懸念がすべて杞憂に終わることを期待したい。

(文=結木千尋)

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