俳優・飯島直子が地元民に愛されるお店を飲み歩き、ゲストとぶっつけ本番でフリートークを展開する番組「飯島直子の今夜一杯いっちゃう?」(BSフジ)。2023年6月に不定期で放送が始まり、好評につき2024年4月から毎週木曜日・夜10時からレギュラー放送されるようになった。初回放送から2年…視聴者の数も増え続け、注目度も上昇中。いい意味で素の飯島直子が見られる同番組の魅力、見どころを本番組のプロデューサー・稲本祐子とともに語ってもらった。

【写真】飯島直子、7月17日(木)の放送ではゲスト・相川七瀬とサシ飲み

■番組スタート時の飯島直子の心境は…「無謀だなと思いました(笑)」

――最初の放送が2023年の6月ということで、2年がたちました。ご自身の名前がついた冠番組が始まると聞かされた時、どう思いましたか?

飯島直子(以下、飯島):「無謀だな」と思いました(笑)。これまでレギュラーで出させてもらった番組はいろいろありましたけど、“1人で”というのは初めてで。外にロケに出る時はヒデちゃん(中山秀征)や松本明子さんが一緒にいてくれましたからね。1人で初めて訪れるお店に入って、知らない人とおしゃべりをしながら呑むというのは無謀だなと思いました。

――飯島さんにとって大きなチャレンジでもあったわけですね。

飯島:はい。でもお酒を呑んだり、街ブラがメインの番組がたくさんあるのは知っていましたから。やるなら、他と同じにはしたくないなという気持ちはありました。

――普通に営業している店に飯島さんが入り、しかも一般のお客さんとも積極的にコミュニケーションを取る。ほかに見ない企画ですし、すごく驚かされました。

飯島:うわぁ、そう言ってもらえるとすごくうれしいです。「他と同じ感じにしたくない」と言いましたが、実はこういうタイプの番組をほとんど見たことがなかったんです。だから「これって他と違うのかな?」なんて、最初の頃は思いながらロケしていたんですよ。

番組を見た人から「これまでに見たことない感じで新鮮でした」と言ってもらえた時、すごく嬉しかったのを覚えています。

■四ツ谷ロケでの飯島直子の言葉にハッとさせられた(稲本P)

――稲本さんとしては、最初からこういう内容でいこうと考えていたのでしょうか?

稲本祐子(以下、稲本):はい。「“仕込み”や“やらせ”はナシ」というのが番組を作る上でのルールでした。私も含めて番組に関わっているスタッフはいろいろな番組を作ってきたので、番組を作る時のクセと言いますか…“何か盛り上がったほうがいいんじゃないか”と考えてしまいがちなんです。

やらせではないんですけど、無意識にそういう気持ちがあった。でも飯島さんの言葉で、気持ちが一気に切り替わったことがありました。

――それはどういったものなんですか?

稲本:四ツ谷のお店で撮影をした時、全然お客さんが来なかったんです。居酒屋の広い2階のフロアに飯島さんがひとりポツンと座った瞬間に、番組スタッフが全員慌て始めました。「まずい!このままだと番組が成り立たない」と。

仕込みなしというのは決めいてたのですが、流石にお客さんが誰もいないというパターンは考えていませんでした。「お客さんを呼んだほうがいいのかな?」とスタッフがザワザワし始めたところ、飯島さんが「やめて!そういうの、いいから。お客さんがいないならいないでいいじゃん!」と言ってくださったんです。その瞬間、「あ、そういう番組でもいいんだ!」とハッとさせらました。その回も最後の最後にお客さんが1組来店されたのをそのまま放送したのですが、この時のことは教訓みたいになっています。

飯島:あったねぇ…。番組スタッフの方たちの気持ちもわかるんですけど、私としてはこういう状況もあり得ると想定していました。でもそこでお客さんを呼んだりするのは、やっぱりちょっと違うかなと思ったんです。

稲本:お酒を飲むといっても番組なので、ベロンベロンになって潰れるまで飲むわけにはいかないじゃないですか。限られた時間で撮影をおこなうなかで仕込みがない分、お客さんが来るのか不安でいっぱいだったんです。でも飯島さんが「それでいい」って示してくれたので、私たちにも焦りがなくなりました。

飯島:お客さんがいればお話とかして、一緒に飲みながら楽しめればいい。でもお客さんがいないんだったら、私が最近あったことをひとり言のように話す感じもありかなと思ったんです。

■出演ゲストへのエアコンの当たり方まで配慮する、飯島直子の“おもてなし力”

――番組で訪れるお店はどのように決めているのですか?

稲本:まず番組スタッフがネットでリサーチして、いくつかピックアップしたお店に私が実際に行って決めています。

飯島:いつも稲本さんが先に飲んだり食べたりして選んでくれているので、ロケに行くのが楽しみなんです。いつも良いお店を選んでくれるし!

稲本:“いいお店”はたくさんあります。でも選ぶ時は「飯島さんが1人で来た時にこのお店で楽しんでもらえるかな?」「ゲストの方と来られた時にこういうお店はどうなのかな?」などといった基準で考えますね。そこで大事にしているポイントは、「地元で愛されている店」というのが一番大きいです。

飯島:私1人の時はどんなお店でもいいんですけど(笑)、ゲストの方が来られる時は話し合ったりするよね。

稲本:ゲストには人見知りの方もいらっしゃいますし、そういう方がゲストの回は周りの目を気にせずにリラックスしてお話しできる感じのお店がいいんじゃないか…などなど。

あとこれも飯島さんに気づかせてもらったのですが、お店に入ったあとゲストの方が来られる前に飯島さんはゲストの席に座ってみるんです。そうするとゲストから見える景色、周りのお客さんの目線がどれくらいあるか、さらに冷暖房の風の当たり具合もわかります。そういうふうにゲストのために準備して考えている飯島さんを見て、本当に勉強になりました。ロケハンに行ってお店の雰囲気などは見ていましたが、そこまで気を配ったりしてなかったので。

■番組は「飯島直子の人柄の良さで成り立っている」(稲本P)

――そういう気遣いができるというのは素敵ですね。

飯島:いえいえ(笑)。

稲本:この番組は、飯島さんの人柄の良さで成り立っています。お店で出会う初めましてのお客さんとフランクに話ができるのも、ゲストも普段バラエティ番組に出演されないような方が「飯島さんだったら」ということで出ていただけることも多いんです。

――お話を聞かせていただいていると、飯島さんが最初に「無謀だな」と思われていたのがウソのように感じます。もしかして、番組によってコミュ力もさらに高まったということなのでしょうか?

飯島:どうなのかなぁ? 

稲本:最初は「1人では…」とおっしゃっていて、不安がっていたのを覚えてます。だけど、今は普通にひとりでやられてますよね。

飯島:ヒデちゃんや徳光(和夫)さんなどしっかりしたMCがいて、これまではそこに添え物として生きてきちゃったんですよね(笑)。だから自分で何か話したり、トークを回したりするのは「どうかな?」と不安だったんですよ。

素晴らしい名司会者の方たちのマネはできないし、自分らしくやらないと後々キツくなってしまう。だからあくまで自分らしく、自然体な感じがいいかなと。トークをきっちり回したり、仕切ったりというのは見ている人もきっと望んでないだろうなと思いましたし(笑)。

稲本:飯島さんは最初からそのスタンスでやられていて、ずっと変わらないですよね。良い意味で飯島さんは波がないので、いま「#45」まで放送していますが…たとえば一桁台の放送回と入れ替えたとしても見ている人は気づかないんじゃないかと思います。

飯島:番組の内容も変えてないですからね。

稲本:そうなんです。番組の人気が上がったり認知度が上がると「新コーナーを入れよう」「テロップでもっと遊ぼう」といった欲が出てしまうんですが、この番組はそういうことを一切やってません。1人飲みか、ゲストとの2人飲みか…大きく分けてその2つなので。

飯島:それでも毎回違う街、違うお店ですから。番組の内容を変えなくても、いつも新鮮で新しい発見があるんです。お料理やお酒もおいしいし(笑)。

■九州、韓国ロケも実施、「地方にも足を伸ばしていきたい」(飯島直子

――この番組が始まってから、食べ物やお酒への興味も強くなったのでは?

飯島:なりました!おいしかったお料理を家で作ってみたりしますし。

稲本:Instagramに試作写真をアップされてましたよね?

飯島:はい。あとこれはビックリなのですが、私が番組の中で「これ、すっごくおいしい!」と言った料理があったんです。普段通っているお店に行ったら、そこのお店の方がいつも番組を見てくれていて、同じものを作って出してくれたんですよ! 

稲本:えぇ、すごい!

飯島:イノッチ(井ノ原快彦)がゲスト出演してくれた三田のお店の「エイヒレの天ぷら」なんですけど、まさか作って出してくれるとは思ってもいなかったのでうれしかったですね。めちゃくちゃおいしかったですし!

――公式サイトの「過去の放送リスト」を見ると、本当にいろいろなところでロケされていますよね。

稲本:いまは東京が多いのですが、まだ場所はかぶってないんですよ。地方だと熊本にも行きましたし、韓国にも行きました。

飯島:放送開始から2年たたないうちに韓国にも行けたって、すごいですよね!

稲本:番組の内容はこれからも変わらないながら、地方に足を伸ばすことは増えるかもしれません。実は、すでに計画もあります。

飯島:じゃんじゃん足を伸ばしましょう!熊本の時もそうでしたが、地方は地方でその場所独特の雰囲気があります。その土地の名産があったりもして、とっても良いんですよね。

――いろいろ楽しみが増えました。最後に番組に興味を持っている人へ向けて、見どころとメッセージをお願いします。

稲本:長く続けていきたい番組です。長く愛して欲しいですし、温かく見守ってほしい番組でもあります。飯島さんが1人で、あるいはゲストの方と2人で…楽しい時間が流れていますので、木曜夜10時はぜひこの番組をご覧ください。

飯島:見方は人それぞれですので、「ゲストが見たいから見る」「お料理が好きだから見る」という方どちらもいらっしゃるんじゃないかと思います。お酒の番組でもあるので、お酒が好きな方は番組が始まる時にお酒を用意していただいて、飲みながら見てもらうと一緒に飲んでるような気持ちになれるかと思うのでおすすめですよ。変化はあまりないかもしれないですけど(笑)、ゆったりのんびりと見てもらえたらいいなと思っています。

◆取材・文=田中隆信

「飯島直子の今夜一杯いっちゃう?」プロデューサーが明かす飯島直子の人柄/撮影=田中隆信