2025年6月24日に発表されたRTX 50シリーズのエントリーモデル「GeForce RTX 5050」。デスクトップ向けではGeForce RTX 3050以来、2世代ぶりに末尾が50型番が登場した。エントリー向けだが、DLSS 4によるマルチフレーム生成などRTX 50シリーズの特徴は備えており、RTX 3050からどこまで性能が向上しているのか、RTX 5060/4060も交えてさっそくチェックしていきたい。

GeForce RTX 5050は、デスクトップ向けでは久しぶりに登場したエントリークラスGPUだ。一つグレードが上のRTX 5060に対してCUDAコア数は50%も減り、メモリは高速なGDDR7ではなくRTX 50シリーズで唯一GDDR6を採用するなど、エントリーらしいスペックに仕上げられている。

RTX 3050とCUDAコア数とメモリ容量は同じである一方で、2次キャッシュ容量は12倍へと飛躍的に増加。実効性能を引き上げ、ブーストクロックも大幅に向上させたほか、最新のBlackwellアーキテクチャによってDLSS 4をサポートするなど機能面での強化も多数ある。

気になるのは価格だ。NVIDIAによるGeForce RTX 5050の目安は44,800円。発売が開始された市場での実勢価格では、44,800円から49,800円前後となっている。スペックが大幅に高くなるRTX 5060の最安値クラスは49,800円前後、前世代だがグレードは一つ上のRTX 4060の最安値クラスは41,980円前後。発売間もないとは言え、RTX 4060よりも高いのはなかなか厳しいところだ。

性能テスト前に、今回用いたMSIの「GeForce RTX 5050 8G VENTUS 2X OC」を紹介しておこう。ツインファンを搭載し、カード長は197mmと短めだ。ちなみに見た目はGeForce RTX 5060 8G VENTUS 2X OCとまったく同じである。

○DLSS 4対応タイトルならRTX 3050の2倍を超えるフレームレート

さっそく、性能チェックに移ろう。テスト環境は以下の通りだ。比較対象としてGeForce RTX 5060/4060/3050(8GB版)を用意した。ドライバに関しては「NVIDIA GeForce Game Ready Driver 576.80」を使用している。

CPU:AMD Ryzen 7 9800X3D(8コア16スレッド)
マザーボード:ROG CROSSHAIR X870E HERO(AMD X870E)
メモリ:G.SKILL TRIDENT Z5 neo RGB F5-6000J2836G16GX2-TZ5NRW(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2)
システムSSD:Micon Crucial T700 CT2000T700SSD3JP(PCI Express 5.0 x4、2TB)
CPUクーラー:Corsair NAUTILUS 360 RS(簡易水冷、36cmクラス)
電源:Super Flower LEADEX III GOLD 1000W ATX 3.1(1,000W、80PLUS Gold)
OS:Windows 11 Pro(24H2)

まずは、3D性能を測定する定番ベンチマークの「3DMark」から見ていこう。

RTX 5050は、RTX 3050に対して1.6倍から1.8倍もスコアが上回っており、しっかりと進化を感じさせる結果だ。その一方でRTX 4060とはあまり変わらないスコア。前世代のワングレード上に近いというのは、十分健闘していると言ってよいだろう。

続いて、実際のゲームに移ろう。まずは、アップスケーラーやフレーム生成を使わないタイトルとして「オーバーウォッチ2」、「ELDEN RING NIGHTREIGN」を試そう。オーバーウォッチ2はbotマッチを実行した際のフレームレート、ELDEN RING NIGHTREIGNは円卓の一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定している。

オーバーウォッチ2は3DMarkと同じ傾向だ。RTX 3050よりも1.6倍ほどフレームレートが上回り、RTX 4060とはほとんど変わらない。そして、格上のRTX 5060は1.3倍から1.4倍のフレームレートを出している。

ELDEN RING NIGHTREIGNは最大60fpsのゲームだ。ここでもRTX 4060とほぼ同じフレームレート。WQHDまでは快適にプレイできる。

アップデートにてDLSS 4/FSR 4に対応したハンティングアクションモンスターハンターワイルズ」を試そう。ベースキャンプの一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。描画負荷が高いゲームなので画質の設定は「中」とした。

なお、今回DLSS SR/FSR SRという表記はSuper Resolutionの略ですべて「バランス」設定だ。FGはFrame Generationの略でフレーム生成を指す。MFGはMulti Frame Generationの略でDLSS 4のマルチフレーム生成を指し、1フレームに対して3枚の生成をMFG x4と表記している。

マルチフレーム生成に対応しているRTX 5050/5060に対して、対応できないRTX 4060/3050とは大きな差ができた。RTX 5050はRTX 3050よりもフルHDで約2.1倍のフレームレートを出している。4Kでも平均98.2fpsと高いフレームレートが出ているが、パワー不足およびビデオメモリ不足のためか描画にカクつきが出ることも。マルチフレーム生成でプレイするならWQHDまでがよいだろう。

同じくDLSS 4のマルチフレーム生成に対応した重量級ゲームとして「The Last of Us Part II Remastered」、「サイバーパンク2077」を実行しよう。The Last of Us Part II Remasteredはジャクソンの一定コースを移動した際のフレームレート、サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定している。

The Last of Us Part II Remasteredは、フルHDだとRTX 3050の約2.1倍のフレームレートが出ており、マルチフレーム生成の威力がよく分かる結果だ。しかし、4Kだとパワー不足もあってマルチフレーム生成がうまく機能しておらず、RTX 3050以下という結果に。大本のフレームレートが低すぎるとうまく生成できないと見た方がよいだろう。サイバーパンク2077も同じ傾向だ。フルHDでは平均122.4fps出ているが、4Kだと一気に下がる。RTX 5060も同様だ。パワー不足やビデオメモリ不足のシーンでは、マルチフレーム生成の効果は弱くなる。
○CGレンダリングやAI処理もテスト

続いて、3DCGアプリの「Blender」を使ってGPUによるレンダリング性能を測定する「Blender Open Data Benchmark」を実行しよう。

一定時間内にどれほどレンダリングできるかとスコア化するテストだ。CUDAコア数が効きやすいテストだがRTX 5050とRTX 3050のCUDAコア数は同じ。アーキテクチャの進化やブーストクロックの違いが出ている。そしてRTX 4060には微妙に届かないという結果だ。

AI処理はどうだろうか。LLM(大規模言語モデル)の処理性能を見るProcyon AI Text Generation Benchmark、さまざまな推論エンジンを実行してスコアを出すProcyon AI Computer Vision Benchmarkを試した。

パラメーター数が多くなるLlama-2-13Bを用いた場合、ビデオメモリが8GBだと実行できないためスコアがゼロだ。ビデオメモリを求めるAI処理を行いたいなら、しっかり16GBを搭載しているGPUを選びたいところ。ここでもRTX 5050はRTX 4060にちょっと届いていない。しかし、Procyon AI Computer Vision Benchmarkではわずかに上回った。
○性能向上も消費電力はRTX 3050とほぼ同じ

ここからはカード単体の消費電力をチェックしよう。ビデオカードの消費電力を実測できるNVIDIAの専用キット「PCAT」を使用した。サイバーパンク2077の各解像度での消費電力を測定している。

RTX 5050とRTX 3050のカード電力は同じ130Wなので、それがそのまま結果に出ている。RTX 4060は115Wと低いため、カード単体の消費電力も今回もっとも低くなった。
○ゲーミング性能は旧上位モデル級、焦点は価格か

と、ここまでがGeForce RTX 5050のテスト結果だ。久しぶりに登場した50型番だが、RTX 3050から着実に進化しており、マルチフレーム生成に対応したタイトルなら2倍以上のフレームレートを出すことも。フレーム生成のないタイトルでもRTX 4060と同クラスの性能を見せており、フルHD中心にプレイするエントリーGPUとしては十分よいデキと言ってよいだろう。

しかし、価格は44,800円からとRTX 4060の最安クラスよりも高いのは厳しい。8GB版のRTX 3050は安いときには3万円を切っていた。エントリーGPUは息の長い製品になるだろうから、今後の値動きに注目しておきたい。
(芹澤正芳)

画像提供:マイナビニュース