英語学習中に「どうしてこの文字は書いてあるのに読まないんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。例えば、know(ノウ)の「k」、climb(クライム)の「b」。英語には「黙字」が存在します。翻訳家・伏木賢一氏の著書『「英語のなぜ?」がわかる本』(青春出版社)より、誰かに話したくなる英語雑学をお伝えしていきます。

書いていても発音しない「黙字」の秘密

英語には、書いても発音されない「黙字」があります。例えば、know(ノウ)やknifeナイフ)のkは黙字です。kを読まない単語には「膝」を示すknee(ニー)、「編む」という意味のknitニット)などがあります。単語の末尾につく黙字もあります。櫛のcomb(コウム)、登るのclimb(クライム)、子羊のlamb(ラム)などの末尾のbも読みません。

kとbでは、「kは後ろにnがつく」「bは前にmがつく」と発音しなくなります。実際に声に出してみると、kが後ろに続くnの発音に取り込まれてしまったり、「bをブ」と発音すると読みにくかったりします。だから、読まれなくなったのです。

ではなぜ、発音されない字が書いてあるのでしょうか。その理由は、単語の語源を辿っていくとわかってきます。

発音されない字が書いてある理由

例えば、knowは、もともとインド・ヨーロッパ祖語のgno(知る)を語源としています。gnoはギリシャ語で「知識」を意味するgnosis(グノシス)の語源でもあります。そこから派生した古い英語のcnāwanがknowの直接の語源ですが、cnāwanでは冒頭のcを「ク」と発音していました。つまり、もともとは発音されていたのです。その後、cをkで書くようになり、発音されなくなった後もkが残っているのです。

なお、kやb以外にも黙字があります。writeのw、「しばしば」という頻度を示すoftenのtなどです。これらも「発音しにくい」「聞こえにくくなってしまう」といった理由から読まれなくなった黙字です。ただし、oftenのtは、最近になって、おもにアメリカ式英語で読まれることが増えてきているようです。

<Answer> knowの古い英語はcnāwanで、冒頭のcを「ク」と発音していたが、やがてcをkで書くようになり、発音されなくなった後も残ったから。

伏木 賢一 翻訳家

(※写真はイメージです/PIXTA)