コミックの映像化やドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、理不尽な職場に限界を感じた女性が、異動を決意するまでの物語「私の同期はバリキャリ」をピックアップ。

【漫画】本エピソードを読む

作者のおとさんの作品を6月3日にX(旧Twitter)に投稿したところ反響を呼び、多くの「いいね」が寄せられ話題を集めている。この記事では、作者のおとさんへのインタビューを中心に、シナリオ面のこだわりや創作の裏側を語っていただいた。

■異動を希望する女性社員の決意

社員のゆきは、上司との面談で異動を希望している旨を伝えた。理由は、一課での経験を活かし、他部署で新たな成長を試みたいというものであった。

しかし上司は、現状では他部署で即戦力になるほどの実力が備わっていないとし、異動には正当な理由が必要であると伝えた。ゆきはその後、業務のやりとりで同僚との人間関係に悩み、精神的に疲弊していた。最終的に二課の課長に相談し、一課の先輩との関係が原因であることを明かした。

ゆきは異動希望の背景を正直に伝えられなかったことを後悔しつつも、現状が変わらなければ退職も検討していると訴えた。二課の課長は事情を一課の課長に伝えることを提案したが、異動の判断は本人の訴えに基づく必要があると説明するーー。

物語を読んだ人からは、「これじゃ壊れるよ」「いつか息切れしそう」「普通に努力家気質で憧れる」「『普通』って何なんだろう」など、反響の声が寄せられている。

■表面的な評価に振り回された日々とその気づき

――『私の同期はバリキャリ』を創作されたきっかけや理由を教えてください。

自分自身の経験をもとに創作しています。当時、テーマとなっている同期の方を「とても優秀だ」と思い込んでいて、落ち込むことがよくありました。彼女の行動や発言に一喜一憂し、自分を責めることもありました。

上司からの評価も高く、「バリキャリ」として会社で存在感を放っている同期だと感じていましたが、最終的には彼女自身の発言や言動によって苦しみ、退職していきました。まだ若く社会人経験の浅かった私は、表面的な評価ばかりに囚われていたことに、数年後にようやく気づけました。

私はこの同期の存在を通じて、焦りや苦しさを感じることがありましたが、同じように他人の言動や評価に振り回される方は多いのではないかと感じています。

SNSが発達した今、自分にとって本当に大切なことや、本質を見て評価してくれる人の存在を、つい見失いがちです。だからこそ、目の前のできることや、自分をきちんと見てくれる人に目を向けてほしい。そんな思いを込めて、この作品を描きました。

――主人公や登場人物のキャラクター造形で、特にこだわった点があれば教えてください。

シンプルに、表情やセリフで気持ちが伝わるよう意識しました。あくまで「私の主観」で物語が進んでいることを大切にしています。

他者からの見え方や憶測を入れることもできたのですが、他人の考えや内面は私には分からないことなので、できるだけ控えるようにしました。そのことで、リアルで言葉にならない“モヤっとした”感覚に、読者が共感してくださったのではないかと思います。

――本作のテーマや、制作を通じて読者に伝えたいメッセージがあれば教えてください。

会社や学校など、社会の中で他人と比べてしまい、生きづらさを感じることもあると思います。時には、自分の嫌な面が出てしまうこともありますし、私自身も同僚や上司に愚痴をこぼしたくなったこともありました。

でも、自分が吐き出す言葉で誰かを傷つけていないか、誇りを持てる自分でいられるかを、立ち止まって考えることは大切だと思っています。

理不尽なことがあっても、思いやりを持って真っ当に生きていれば、きっと認めてくれる人はいるはずです。他人と比べるのではなく、自分に与えられた役割や、自分が大切にしたい生き方に誠実に向き合っていってほしい。そんなメッセージを込めています。

――作中で特にお気に入りのシーンやセリフがあれば、理由とあわせて教えてください。

マウントだと感じたのは、私の中にある不安だったのかも」というセリフです。マウントを取る人が悪い、という見方もありますが、「マウントされた」と感じるのは、自分の心の不安定さが関係しているのかもしれません。自分自身ときちんと向き合っていたら、人の言葉に動じることはなかったのではないかと、今では思えるからです。

――漫画を描くうえで「ここだけは譲れない」と感じていることや、こだわっている制作ポリシーがあれば教えてください。

実際に体験した出来事をもとに、モヤっとした感情や嫌な気持ちをテーマに描いています。ただし、誰かを一方的な悪者にしすぎないよう、自分自身の反省点も交えて描くことにこだわっています。

また、最後には必ず「得られた学び」や「気づき」を伝える構成を意識しています。

――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。

いつも読んでくださり、ありがとうございます。

「私も同じように悩んでいました」と言っていただけることが多く、とても励みになっています。辛いこともあるけれど、それも含めて人生を楽しもう!と思っていただけるような作品になっていたら嬉しいです。

おとさんの『私の同期はバリキャリ』が話題/画像提供/おと