何もかもが規格外! ポルシェが疑うほどの速さ! ついに終了する日産GT-Rの知られざるエピソード

この記事をまとめると

R35と呼ばれる第3世代のGT-Rは2007年に登場した

■革新的な1台で当時のスポーツカーの常識を覆すクルマだった

■販売当時は異質なモデルだったためさまざまな伝説を残した

日本が世界に誇るスーパースポーツのトリビア

 2025年8月、ついにその歴史に幕を下ろす第3世代GT-RことR35型。欧州スーパースポーツに対抗できるブランド構築を命題とされたこのモデルは、これまでの日本のスポーツカー作りとは異なるさまざまなアプローチで開発されている。

 国内初めての試みは多くのユーザーに衝撃を与え、日産としても初めての本格的なスーパースポーツの開発ゆえに、発売当初は本格的なスーパースポーツとしての試行錯誤も垣間見えるなど、なにかと話題が尽きなかった。今回はR35GT-Rにまつわる驚き(!?)のトリビアを紹介したい。

スポーツカーの歴史を変えた日本車「R35GT-R」の裏話

坂道でラフなシフト操作をするとミッションが壊れた

 超初期ロット(5400番台以前)は車体が完全に停止していない状態で、シフト操作をすると突如走行不能になるトラブルが起こった。原因はトランスミッション内部のアウトプットシャフトを固定するCリングの溝が浅く、縦方向に応力が掛かるとリングが外れ、動かなくなるというものだ。しかも、ハードな走行だけでなく、通常の街乗りでも起こるため始末が悪い。

スポーツカーの歴史を変えた日本車「R35GT-R」の裏話

 不具合のサインは「ガラガラ」という金属音。不用意に動かすことで、外れたCリングによりほかのギヤにも被害がおよび、最悪はミッション交換が必要となってしまう。なお、現在のミッション単体価格は現在165万円(税込)だが、初期は驚きの275万円(税込)だった。

タイヤとブレーキ交換で100万円オーバー! 国産車の常識を超えた維持費に驚愕

 R35GT-Rに純正採用された20インチランフラットタイヤとブレンボ製の6ポットキャリパー&380mmローターは当時としては最大級のスペックだった。このため、発売から数年間は性能に見合った社外品は存在せず、交換時は、ほぼ純正部品一択。

スポーツカーの歴史を変えた日本車「R35GT-R」の裏話

 しかもその価格はブレーキローターとパッド交換で50万円強、タイヤ交換は40〜50万円と高額で、SNSでは「パーツ代だけで100万円は当たり前」と話題に。欧州スポーツオーナーには当たり前であった、このコスト感は当時の国産車オーナーにとっては常識を覆す金額で、「GT-Rの維持費は高い」というネガな印象を与えることなった。

開発にはゲーム「グランツーリスモ」のノウハウも活きている

 R35型のセンターコンソール上部に組み込まれた液晶ディスプレイMFD(マルチファンクションディスプレイ)」の開発には、なんとドライビングシミュレーターゲーム「グランツーリスモ」を生み出したポリフォニーデジタル社が関与している。エンジン始動後の初回起動時に「POLYPHONY DIGITAL & CLARION」のロゴが表示されるのがその証だ。

スポーツカーの歴史を変えた日本車「R35GT-R」の裏話

 同社が担当したのは車両のさまざまな情報をリアルタイム表示する「MFM(マルチファンクションメーター)」の部分で、美しいグラフィックはグランツーリスモのUIをそのまま車内インフォテインメントに取り入れたといわれている

スポーツカーの常識を覆した1台

チューニングしただけでディーラーは出禁!?

 R35型の発売当初は、ディーラーによる改造車拒否問題が話題となった。保安基準に適合した社外パーツであっても、装着しているだけで、ディーラーでの点検、整備が断られ、保証も受けられなくなる扱いを受けた情報がいくつも上がった。これについては、当時真偽を確認したのだが、「社外品に交換したカ所については補償対象外」で、改造をしていない部分については継続できたという。

スポーツカーの歴史を変えた日本車「R35GT-R」の裏話

 ただし、ディーラーによっては「面倒なものは受け入れたくない」姿勢からか、すべてお断りとしていたところもあったと聞く。これは、R35GT-Rはメーカーが多大なる開発費を掛けて、トータルバランスを磨き上げてきたクルマ。ヘタに手を加えて、バランスを崩してしまうことを懸念したからといわれている。R35型への理解が深まるとともにその規制は緩和されていった。

ポルシェ社から正式にいちゃもんをつけられた

 2008年4月、開発テストの総仕上げの一環であるニュルブルクリンク北コースのタイムアタックで7分29秒03を記録。これは量産車として世界最速記録であった。ところがこのタイムにポルシェ社が「このタイムは疑わしい」と異議を申し立てた。ポルシェ社は実際に北米仕様R35GT-Rを購入し、ニュルブルクリンクポルシェ911ターボ、911GT2を交えて比較テストを実施。その結果は、日産の発表したタイムより25秒遅かったことで、「日産は市販車と異なる仕様で、タイヤはセミスリックをつかったのでは?」と疑問を呈した。

スポーツカーの歴史を変えた日本車「R35GT-R」の裏話

 これに対して、即日産が「タイヤは純正のダンロップ製を使った」と反論している。同条件で比較したものではないため、どちらが速いのかは闇のなかだが、日本車に対してポルシェ社が公式に抗議した例は過去にはなく、結果的にR35GT-Rの存在を世に知らしめた出来事になった。

「重いのに速い」という非常識なクルマ

 日産GT-Rの車重は1.7トン強。発売当時のライバルたちの重量は1.4〜1.6トン程度で、4WDであることを差し引いても150kg近くは重かった。それにもかかわらず、それらの車種を凌駕する走りを見せ、「軽いが速い」というこれまでの常識を覆し、「重いのに速い」という新たなベクトルを提示した。これは単に重さを許容した訳ではなく、前後重量配分や各輪への荷重を緻密に設計し、路面状況が変わっても安定したトラクションを確保するという考えがベースにあった。

スポーツカーの歴史を変えた日本車「R35GT-R」の裏話

 また、価格を777万円〜と手に届く範囲に抑えるため、高額な軽量素材や空力デバイスの装着は避けられた。その厳しい条件のなかで、どんな場面で、誰が乗っても性能を引き出せるように導き出されたのが、各輪にあらかじめ最適な荷重をかけることで、路面状況が刻々と変化する状況でも常にグリップを得る手法なのだ。GT-Rの1.7トンの車重にはそうした理由があったのだ。

スポーツカーの歴史を変えた日本車「R35GT-R」の裏話

スポーツカーの歴史を変えた日本車「R35GT-R」の裏話

スポーツカーの歴史を変えた日本車「R35GT-R」の裏話

スポーツカーの歴史を変えた日本車「R35GT-R」の裏話

スポーツカーの歴史を変えた日本車「R35GT-R」の裏話

何もかもが規格外! ポルシェが疑うほどの速さ! ついに終了する日産GT-Rの知られざるエピソード