
第77回カンヌ国際映画祭で、インド映画史上初のコンペティション部門グランプリを受賞したほか、100を超える世界の映画祭・映画賞にノミネート、25以上の賞を獲得した「私たちが光と想うすべて」のパヤル・カパーリヤー監督2021年に手がけた初長編ドキュメンタリー「何も知らない夜」のポスター、予告編、場面写真、監督コメントが公開された。
「何も知らない夜」は、カパーリヤー監督がインド映画テレビ技術研究所の学生であった自身の体験を元に映画化、第74回カンヌ国際映画祭監督週間に選出、ベスト・ドキュメンタリーを受賞、山形国際ドキュメンタリー映画祭2023でも大賞を受賞した作品。映画大学の寮から学生L(エル)の恋文が入った小箱が発見され、Lの手紙が語るカースト制度によって阻まれた恋人たちの苦難を背景に、2016年に実際に起こった政府への抗議運動、極右政党とヒンドゥー至上主義者による学生運動の弾圧事件の真実が描き出され、叶わぬ愛の物語と記録映像を通じて、インドの社会の問題を炙り出す。変革を望む学生たちの情熱や信念、映画への愛を描き出す。
予告では、ダンスを踊り、ベッドに横たわりうたた寝をする大学生の若者たち、家族との食事会や婚礼などの日常の映像が、次第に学生たちの路上デモや警官たちとの緊迫した衝突シーンなどリアルな闘争の様子へ変化し、モノクロームと淡いカラーの映像が混ざり合い、フィクションと現実の境界線が失われていく様子が捉えられている。
カパーリヤー監督は2017年頃から自分たちの身の回りや友人たちを撮影し、大学で友人たちが撮影した映像や古い家族のアーカイブ、ネット上の投稿画像などを収集した。記憶のアーカイブともいえる映像群からイメージを発見し、そこに架空のラブストーリーを加え、映像を再構築し生まれた。叶わぬ愛の物語と記録映像を通じて、インドの社会の問題を炙り出す。
「私たちが光と想うすべて」は7月25日から、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。「何も知らない夜」は、8月8日からBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか期間限定で全国順次公開。
▼パヤル・カパーリヤー監督コメント
「何も知らない夜」は、インドの公立大学制度への讃歌です。何世紀もの間、社会の特定の層は教育を受けることを否定されてきました。インドの公立大学制度は、こうした歴史的な過ちを正すために作られたのです。いまだにカーストやその他の差別がその固有の構造の中に存在しているため、必ずしも成功しているとは言えないかもしれません。それでも公立大学は今もなお、物理的にも知的にも真の自由――何ものも神聖視することなく、どんなことでも疑うことのできる自由――をもたらす空間になりうるでしょう。これこそが、私たちが目指すべき未来の世代の自由であり、この自由を手にした若者たちが、自分たちを縛り付ける社会から自由になれるようにするためのものです。
この映画は、優しく女性的な声という視点から語られる、長い夢なのです。

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