不正アクセスによって証券口座を乗っ取られる被害が相次ぐ中、「証券口座のっとり被害者の会」が7月16日、発足した。

会の代表をつとめる里吉竜一さん(60)は、自らも被害を受けた一人。「声をあげたくてもあげられない人が全国にたくさんいる」と語り、被害者の参加を呼びかけた。

7月21日には都内で被害者説明会を開く予定だという。

●SBI証券を提訴、被害は全国規模

ネット証券「SBI証券」の証券口座が不正アクセスを受けて乗っ取られ、金融商品を勝手に売買されたとして、里吉さんは7月4日SBI証券を相手取り東京地裁に提訴した。被害を受けた金融商品の返還を求めている。

こうした不正アクセス被害は全国で相次いでおり、金融庁によると、被害額は5700億円以上にのぼるとされている。被害に気づいていない人も相当数いるとみられる。

複数の証券会社で被害が明らかになっているが、補償対応には差があり、誠実に応じてもらえないケースもあるという。

証券会社や国に対して効果的に働きかけていくため、里吉さんは、全国で孤立した被害者たちがまとまる必要性を感じて会の設立を決意したという。

●「複雑で構造的な国家的問題を含んでいる」

里吉さんは7月18日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開き、次のようにうったえた。

「これは単なる一企業と私の一個人の補償交渉にとどまる事件ではありません。実体経済からデジタルエコノミーへの移行、国境なきグローバルな金融環境という極めて複雑で構造的な国家的問題を含んでいます。

日本における制度設計の遅れ、対応の不備、構造的不作為、将来世代への無責任と深く関係しています」

●相場操縦の疑いも「被害は測定不能」

被害者の会の顧問弁護士をつとめる野崎智裕弁護士は、同席した会見で「これはスルガ銀行事件に続く、今の時代の非常に大きな社会問題です。被害者が一致団結して、SBI証券などと戦っていこうと考えています」と話した。

もう一人の顧問弁護士である河合弘之弁護士は、口座の乗っ取りによって相場が操縦された疑いがあることについても言及。「その被害は測定不能なくらい大きい」と述べ、証券取引等監視委員会への告発を検討しているとした。

被害者説明会は、7月21日午後2時から東京都新宿区四谷本塩町4−15「さくら共同ビル」で開催される予定だ。

証券口座乗っ取り、SBI提訴の男性が「被害者の会」発足 「一致団結して戦う」参加呼びかけ