
この記事をまとめると
■パガーニから「ウアイラ・コーダルンガ・スピードスター」が発表された
ロングテールのコーダルンガをオープン化
スーパーカーという言葉も、そしてそのさらに上をいくハイパーカーという言葉も、イタリアのパガーニが生み出すモデルを語るには物足りない。あえてそれを表現するのならば、やはりもっとも適切な言葉は「芸術品」ということになるのだろうか。
自動車という工業製品の世界において、まさに究極の美を追求するブランド、パガーニ。天才的なデザイナーであり、また同社を率いるリーダーでもあるオラチオ・パガーニは、どこまで美というものについてストイックな姿勢を貫くのか。それを改めて印象づけてくれるニューモデルが発表された。その名前は「ウアイラ・コーダルンガ・スピードスター」という。
コーダルンガとは、英語に翻訳するのならば「ロングテール」を意味するものだ。パガーニが初めてウアイラをベースにしたコーダルンガのプロジェクトに着手したのは2018年のこと。それは熱狂的なパガーニ車のコレクターが、ウアイラベースのロングテールモデルの製作を依頼したことから始まったものだった。そのフィニッシュの美しさは世界のカーマニアに感動を与え、実際に5台のウアイラ・コーダルンガがデリバリーされるに至った。
今回発表されたスピードスターは、そのデザインコンセプトを継承したオープンモデルで、こちらは10台の限定生産を計画し、2026年にはデリバリーが開始される予定。おそらくそのすべてに、早くもカスタマーの名前が決定しているのは、これまでの例から考えれば間違いないところだろう。
オラチオ・パガーニは、このウアイラ・コーダルンガ・スピードスターのデザインを評して、「それはエレガンス、抑制、そして調和を体現するものであり、またラインの純粋さと細部への絶対的なこだわり、美学と機能のバランスが感じられるもの」であると語る。それはまた「スポーツカーを軽さと勢いというもののアイコンとして想像するカスタマーへのオマージュである」とも。
オラチオ・パガーニのデザインによるこのモデルは、パガーニのなかでも特別な限定車を担当する社内部門、「グランディ・コンプリカツィオーニ」によって、ハンドメイドで製作される。完全な新設計による軽量なカーボンモノコックを基本構造体とするウアイラ・コーダルンガ・スピードスターのデザインは、先に引用したオラチオ・パガーニの哲学を忠実に具現化したもので、スピードスターというネーミングからも想像できるとおり、基本コンセプトとなっているのは軽さの表現だ。
AMG製のV12ツインターボは864馬力
このスピードスターにはパノラミック・ハードトップが備えられ、それを使用したときにはベースとなったクーペのシルエットも再現される。エアロダイナミクスはもちろん世界の最高水準にあるもの。徹底したシミュレーションによって、その性能はさらなる高みへと導かれたことも忘れてはならない。
インテリアのフィニッシュもまた、一瞬言葉を失うほどに美しく、そして機能的だ。その色調は1960年代のスポーツカーを彷彿とさせ、熟練した職人による伝統的な技法と最先端の技術を融合することでそれが具現化していることは、誰もがそれを容易に理解するに違いない。洗練された独特のカラーと触感の組み合わせはすべてカスタムデザインで、使用される細かい部品のひとつひとつも、また芸術品の如き、感動的な美しさを感じさせる。
ちなみにこのインテリアでは、パガーニが創業時からひとつのアイコンとする4本出しのエキゾーストシステムにインスパイアされたパターンを採用した独自の生地も採用。どこまでも趣味性の強いインテリアが作り出されている。
ミッドに搭載されるエンジンは、メルセデスAMGとの共同開発となる、5980ccのV型12気筒ツインターボ。最高出力と最大トルクは、それぞれ864馬力、1100Nmと発表されている。ミッションにエックストラック社との共同開発による7速AMT(オートマチック・マニュアル・トランスミッション)と、オーソドックスな3ペダルの7速MTを設定し、その選択を可能にしているのもカスタマーには嬉しいところ。チタン製の6ウェイ・エキゾーストシステムが奏でるサウンドも、また魅力的な響きをもつ。
前後のサスペンションは、鍛造アルミニウム合金製のアクティブタイプ。ダブルウイッシュボーンの独立懸架レイアウトを採用し、可変レートスプリングと同軸ショックアブソーバーを組み合わせることで、あらゆる走行条件にシームレスに適応する。
ブレーキシステムはブレンボとの長年のパートナーシップから生まれたもの、フロントに410mm径のカーボンセラミックディスクと6ピストンキャリパーが、またリヤには390mm径の同ディスクと4ピストンキャリパーが装備される。タイヤサイズはフロントが20インチ、リヤが21インチと前後異径の設定になる。
パガーニの新たな究極作ともいえるウアイラ・コーダルンガ・スピードスター。参考までにその最高速はリミッター作動による350km/h。そのわずか10台のキーを手にいれることができるカスタマーは本当に幸せだ。

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