
北海道大学と海洋研究開発機構(JAMSTEC)の両者は、小惑星リュウグウから採取されたサンプル中から、太陽形成直後の約45億6730万年前に形成された太陽系最古の岩石を発見したと共同で発表した。
同成果は、北大大学院 理学研究院の川﨑教行准教授、同・大学院 理学院の宮本悠史大学院生、同・大学 総合イノベーション創発機構の坂本直哉准教授、JAMSTECの荒川創太研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の地球・環境・惑星科学を扱う学術誌「Communications Earth & Environment」に掲載された。
天体の起源を探る上で重要な手がかりとなるのが、その原材料物質の分析だ。これまでの「はやぶさ2」が回収したリュウグウサンプル初期分析から、同小惑星は主に約40℃の低温の水溶液から生成した鉱物で構成され、その形成は約45億6200万年前と判明している。
こうした鉱物は、リュウグウ内部で氷が溶けて生じた水溶液が、元来の原材料物質(リュウグウを形成した最初期の固体物質)を二次的に変質させることで生成したものである。しかし、これらは現在のリュウグウの主要な構成物質に過ぎず、リュウグウを形作った最初期の原材料物質そのものが「いつ」形成されたのかは、これまで未解明だった。
そこで研究チームは今回、リュウグウサンプルについて、北大の走査電子顕微鏡で形状観察や化学組成の分析を実施。年代測定が可能な原材料物質を探索し、同大学の同位体顕微鏡(二次イオン質量分析計)を用いた「アルミニウム-マグネシウム放射年代測定法」により、その年代測定を実施することにしたという。
今回の研究では、リュウグウサンプルから、初期太陽系の1000℃を超える高温領域で形成された「CAI」が発見された。CAIは、カルシウムとアルミニウムに濃集した固体物質で、初期太陽系の高温ガスから凝縮したと考えられている。
鉱物学的観察の結果、CAIは水溶液から生成した鉱物と混ざり合った、リュウグウの原材料物質の生き残りであることが判明した。このCAIに対し、アルミニウム-マグネシウム放射年代測定が実施された。これは、アルミニウムの放射性同位体である「26Al」が、半減期約70万年でマグネシウムの安定同位体の1つである「26Mg」に放射壊変する現象を利用し、約45億年前という初期太陽系において形成された物質であっても年代を精密測定できる手法だ。
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(波留久泉)

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