
「そうだ 京都、行こう。」 青もみじ、すだれ越しの光、ひんやり縁側…“しつらえの美”で心を整える、初夏の京都旅スポットを巡ってみたの画像一覧
今年で31年目を迎える「そうだ 京都、行こう。」キャンペーン。2025年のテーマは、“初夏のしつらえ” です。でも正直、「しつらえって何?」って思いませんでしたか?(私は思いました)。調べてみると、季節や空間に合わせて暮らしを整える、日本ならではの美意識のこと。昔の人は、季節ごとに空間に手を入れて、心にも余白をつくっていたんですね。そんな文化が、今もちゃんと残っているのが京都。町家の一室に入るやわらかな光、風にゆれる簾(すだれ)、ひんやり涼しい縁側、青もみじの美しさ……。そんな風景にふれるだけで、なぜか心までスッとほどけてくるから不思議です。
今回のキャンペーンでは、そんな“初夏のしつらえ”を体感できる特別プランが目白押し。普段は入れない寺院や町家、会員限定の体験など、どれもプレミア感たっぷりです。実際に一足早く訪れてきましたが、人混みとは無縁の“京都らしさ”を満喫。気づけば、普段あまり向き合えていなかった自分の心が、ふっと軽くなっていた気がします。忙しい毎日にちょっと疲れたら、しつらえの美と静けさにふれる旅、いかがでしょう?
#01 華やかさと静けさが調和する、初夏の“しつらえ空間”へ。『妙心寺 天球院』
今回の新CMの舞台にもなった、禅寺・妙心寺 天球院。日本最大級の禅寺・妙心寺の境内にある48の塔頭(たっちゅう=小さな寺院)のひとつで、江戸時代の1630年代に建立された歴史あるスポットです。
建物の中心にある「方丈(ほうじょう)」には、狩野山楽・山雪の超絶技巧が光る障壁画がずらり!「竹に虎図」「梅・柳に遊禽図」「籬(まがき)草花図」などの華やかな金碧画から、水墨画の「山水人物図」まで、見る者の目を釘づけにします。
個人的に好きだったのが「竹に虎図」の襖絵。虎に交じり描かれているこちらの豹。江戸時代の人は、虎がオスで豹がメスと思っていたそうで、ペアで描くことが多かったそうです。なんかかわいいですよね。
そして印象的だったのが、本堂の廊下にある「血天井」。関ヶ原の戦いの前哨戦で落城した伏見城の床板が使われているのだそうです。“血天井”という言葉を聞いたときは、思わずドキッとしましたが、血痕の残る板を床ではなく、あえて天井に上げて供養する。当時の人々の祈りのかたちにグッときました。
天井を見上げて、静かに手を合わせたくなる、そんな空間でした。こうした血天井は、京都のいくつかの寺院にも残されているそうです。
また、柔らかな光が差し込む室内から眺める新緑の庭園も最高!青もみじをはじめ、色とりどりの緑がキラキラ輝き、時間を忘れて見入ってしまいます。華やかさと静けさが絶妙に調和したこの場所で、心までリフレッシュできるはず。
販売されていた御朱印帳とクリアファイルもとても素敵で、特に御朱印帳は上品でかっこよく、まだ御朱印帳を持っていない人にはぜひおすすめしたい一品です。
普段は非公開の天球院ですが、「そうだ 京都、行こう。」キャンペーン期間中は、事前申込制の特別拝観が開催。住職さんの案内付きで、オリジナル絵葉書のお土産もゲットできる特別感満載の体験です。
※写真は特別な許可を得て撮影したものを含みます。二次利用や転載はお控えください。
#02 一歩、足を踏み入れた瞬間。全身が緑に包まれる。『常寂光寺』
紅葉の名所として有名な常寂光寺ですが、実は新緑の季節もとびきりの美しさ。小倉山の中腹にあるこの寺、入口からもう空気が違います。石段を登っていくと、あたり一面、目にやさしい苔のグリーン。見上げればカエデの葉が風に揺れて、差し込む光がまるでスポットライトみたい。もう、自然に深呼吸したくなるレベルです。
もともとは、藤原定家の山荘「時雨亭」があったとも言われる場所で、16世紀末に日蓮宗の僧・日禛(にっしん)がこの地に入ってお寺を開いたのが始まり。苔むした石段の先には、歴史を感じる本堂がひっそり。派手さはないけど、そこがまたいい感じでした。
なによりも圧倒されたのは、苔のグリーン。石段の脇や境内のあちこちに広がるその景色は、まるで緑のじゅうたんのようでした。手入れの行き届いた静かな庭を歩いていると、なんだか視力まで上がる気がしてきます(笑)。
さらに奥、多宝塔の近くまで行くと、パッと視界がひらけて、晴れた日は比叡山や東山まで見えることも!近くの緑と、遠くの山なみ、両方をぼーっと眺めてると、自然と心が整っていく感じ。これぞ癒やしの景色、間違いなしです。
今回のキャンペーンでは、苔庭が美しい6つの寺院を拝観できるパスポートが登場。2日間有効で、価格は1,000円。対象の寺はどこも“苔の名所”ぞろい。しかも、このパスポートの内側には、京都を代表する6種類の苔の紹介も載っていて、ちょっとした自然の勉強にもなる優れモノ。静かな時間を味わいたい人、緑に癒されたい人。夏の京都で、ひと味ちがう旅を楽しんでみてはいかがでしょう? ※通常はパスポート表面にご利用可能日が入ります。
苔庭めぐりパスポート
実施期間:2025/6/1(日)~9/29(月)
旅行代金:¥1,000
引換場所:ジェイアール東海ツアーズ 京都支店(京都駅八条口)
<対象寺院>三千院、勝林院、圓光寺、常寂光寺、祇王寺、東福寺(本坊庭園)
#03 “しつらえ”が生きている、京町家の夏。『杉本家住宅』
京都の町なかにひっそりたたずむ杉本家住宅。江戸時代から呉服商「奈良屋」として栄えた京町家ならではの趣が、今も大切に守られています。現存する町家の中でも最大級の規模を誇り、その美しさと歴史的価値から、この夏の「そうだ 京都、行こう。」新CMの舞台にも選ばれました。建物は2010年に国の重要文化財に、庭園も国の名勝に指定され、伝統的な京町家の美意識と工夫が息づく貴重な空間です。
また、京都の暑い夏を心地よく過ごすための工夫も、家のあちこちに散りばめられています。薄暗い室内から見える庭の緑、その涼しげな空気感がたまりません!夏の建具が、日差しを遮りながらも風を通す設計で、肌で感じる涼しさが心地よかったです。
杉本家では、季節ごとのしつらえがしっかりと受け継がれています。冬は障子や襖、夏は葦戸や葦簾に交換され、花や掛け軸も季節に合わせて変わる。こうした一つひとつに、「自然を大切にし、人を思いやる心」が込められているのが、見ているだけでも伝わってきます。
畳に腰を下ろすと、座った目線の高さに葦の編み目越しの緑が透けて見え、思わずため息が出るような美しさ。京町家ならではの繊細な感性が詰まっています。
案内してくださった当主・杉本節子さんは、昔ながらの京町家の知恵や暮らしを、これからの時代へつなぐ活動を続けています。建物の維持や修繕には、想像以上の手間と費用がかかるのだそう。大切な文化を守り続けることの重みを感じました。
クラウドファンディングでの支援も呼びかけているそうなので、訪れて終わりではなく、「応援してみたいな」と感じたら、気軽に参加してみるのもおすすめ。未来とつながる仕組みがあるのも、この場所の魅力です。
一般公開を定期的に開催している杉本家住宅ですが、「そうだ 京都、行こう。」キャンペーン期間中には、松北園茶店のほうじ茶・和紅茶のティーバッグ各1個つきの見学プランもあり。夏のしつらえを体感できる貴重な機会に、ぜひ足を運んでみてください。
※写真は特別な許可を得て撮影したものを含みます。二次利用や転載はお控えください。
重要文化財 杉本家住宅[すぎもとけじゅうたく]
住所:京都市下京区綾小路通新町西入ル矢田町116
TEL:075-344-5724
https://www.sugimotoke.or.jp/
今回の旅では、“しつらえ”という日本ならではの文化にふれて、季節との向き合い方を見直すきっかけになりました。こういう文化がしっかり残ってるのって、やっぱり京都ならではだなと改めて感じました。訪れた場所はどこも静かで落ち着いていて、しつらえをじっくり感じられたのがすごくよかったです。
洋服の衣替えはちゃんとするのに、空間はゴザを敷くくらいしかしてなかったな……と反省(笑)。でも建具や掛け軸、花を替えるだけで、気持ちまで整う感覚にびっくり。これからは空間の季節感も、少し意識していきたいと思いました。
もちろん、現代の暮らしでは昔の町家のようにはいかないけれど、カーテンを軽やかなものに替えたり、季節の花や枝ものを飾ったり、風鈴を出してみたり。そんなちょっとした工夫だけでも、暮らしが変わってくる気がします。
“しつらえ”って難しそうに見えて、意外と気軽に楽しめるもの。気になった方は、「そうだ 京都、行こう。」の特設サイトも、ぜひのぞいてみてください。
詳細は「そうだ京都、行こう。」特設サイトをCHECK!
文/鈴木恵理子

コメント