
この記事をまとめると
■交通量の多い道にはよくオービスやNシステムが設置されている
■いずれも通過する車両を記録し警察が管理するシステムだ
■オービスとNシステムを統合することはできないのだろうか?
オービスとNシステムは役割が異なる
高速道路や比較的交通量のある一般道を走っていると、カメラを備えた箱のようなものが、道路の側方や上部に据え付けられているのを見ることがあるだろう。そういったカメラのなかに、警察の管轄となるNシステムやオービス(通称)という装置が存在する。このほかにも、道路には防犯や交通状況把握などを目的としたカメラが、必要各所に別途多数設置されているのだ。
Nシステムとは「自動車ナンバー自動読取装置」のことで、当該道路を走行中の自動車のナンバープレートを自動的に読み取り、警察が確認を必要とする車両のナンバーと照合するシステムだ。オービスは「速度違反自動取締装置」のことで、当該道路走行中の車両速度を測定し、制限速度違反がある車両を撮影記録するシステムである。
Nシステムは1980年代後半ごろに登場し、全国の主要な道路のなかでもとくに車両の移動を効率的に把握できる場所に設置された。システムの詳細は明らかにされていないが、カメラの設置個所を通行する車両を対象に、その車影とナンバープレートを撮影、記録しているといわれている。
オービスは1970年代前半ごろから、高速道路を皮切りに設置されるようになった装置。本来、速度超過の取り締まりはパトカーや白バイ、臨時に設置した取り締まり装置などを使い、警察官を配置して行うのが一般的である。しかし、これらの方法では人手がかかるため、機械を使って自動化することで効率化を図ったわけだ。
技術的には不可能ではないが……
両方とも警察が管轄しており、かつカメラで通過する車両を撮影、記録する装置なのだから、統合すれば設置数を減らせるなどして予算的にも節約できるように思える。たしかに、オービスは車速を計測するための仕組みがあり、Nシステムにはそれがないという違いはあるが、撮影、記録という機能は変わらないので、両装置の統合に技術的な困難があるとは思えない。
しかし、実際にはそう簡単な話ではない。こういった装置の導入は税金が原資であるために、導入目的、期待する効果などが明確に定まっている。Nシステムは、自動車を利用した凶悪犯罪や自動車盗難などの捜査に利用することが導入の目的になっているのだ。これに対してオービスは、速度超過の取り締まりが目的である。すなわち、それぞれ目的のために設置計画が作られて予算が執行されるので、それ以外の目的で利用することは難しいのである。
オービスの所在を知らせる機能を持つ「レーダー探知機」には、Nシステムについても対応しているものが多く、いずれNシステムでも速度取り締まりが行なわれる可能性を説明書などに記載している例も見られるが、そもそも設置目的が違う以上、その可能性は極めて低い。実際に、装置を運用している警察組織内の部署も異なる。安易に、統合するということにはならないようだ。
ただ、現在はトクリュウこと「匿名・流動型犯罪グループ」が関与する事件の多発など、犯罪が凶悪化、複雑化する傾向にある。そのために、監視、防犯カメラとともにNシステムの重要性が増してきているのだ。こういった背景の下、オービスがNシステムのネットワークに組み入れられる可能性は皆無ではないといえよう。
Nシステムの映像が犯罪の証拠として扱われるのであれば、そういった運用は慎重に行なう必要がある。しかし、これまで証拠として裁判所に提出された事例は、極めて少ないといわれている。要するに、Nシステムのデータは捜査資料という扱いなのである。それならば、相互のデータを併せて解析するなどといったこともハードルは低い。近い将来には、オービスのデータが犯罪捜査に使用されるようになるかもしれない。

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