フジテレビ系ドラマ『愛の、がっこう。』(毎週木曜22:00~ ※TVerFODで配信)の第2話が、17日に放送された。

今作は、まっすぐで不器用なあまり過去に恋愛で大きな過ちをおかしてしまった高校教師の愛実(木村文乃)と、複雑な家庭環境から義務教育すらまともに受けられなかった読み書きの苦手なホストのカヲル(ラウール)が出会い、お互いが本当の“愛”を知っていくというラブストーリー。

今回はこの作品最大のトピック「真面目な教師と軽薄なホスト」だけではない、様々な “2人の格差”がいくつも丁寧に折り重なっており、実に興味深かった。

○複雑さを平然と描いてしまう

冒頭の“くそ正しいこと”を言う教師(愛実)とそれに反発する生徒(夏希/早坂美海)を皮切りに、現役大学生のナンバー1ホスト(つばさ/荒井啓志)と文字すら書けない駆け出しのホスト(カヲル)、無償の愛とお金で買える愛、秘密をさらけ出し嫌われようとする女(愛実)と秘密を抱えたまま関係を深めたい男(洋二/中島歩)、ある男性にストーカーしてしまった女(愛実)とその彼を“寝取った”女(百々子/田中みな実)、これから結婚しようとするカップルと“輝かしい未来”を目前にした同伴男女…と、ストーリーを展開させるのはどれも“2人(もしくは2つ)の格差”。一見すると単純な段積みのようにも思えるのだが、どのキャラクターもどの事象にも吸引力があり、エンタテインメントたっぷりの物語に吸い込まれながら、実に考えさせられてしまった。

なぜなら、どれも“格差”とは言ってもどちらかに優劣をつけるわけではないからだ。例えば、無償の愛とお金で買える愛を、どちらが尊いのか「わかるわけない」と言い切ったり、自分の彼を“寝取った”としても親友であり続けたりと、そんな複雑さをこのドラマでは平然と描いてしまう。

また、今回登場したホストクラブの常連客・明菜(吉瀬美智子)とカヲルが同伴デートをした際には、“グリコ”と“パイナップル”の歩幅という遊び心のある“格差”があった。それについても、それぞれ“格差”はあっても結果が“同じ”であるような深読みができ、このドラマが何をどこまで描こうとしているのか、どうしても追求してしまいたくなる。

○格差を印象付ける“2画面”演出

こうした“格差”を画面の中で印象付けようとした西谷弘監督の演出についても、第1話同様に唸らされた。それは今回多用された、愛実とカヲルの電話シーンにおける、左右や上下に分割された“2画面”だ。この演出技法は現実の世界ではありえない画であるため、安易に用いると作り物感が出てしまいチープな印象を与えかねないのだが、今回の“2画面”には大きな意味が隠されていた。

それは、開店前の薄暗いホストクラブに昼間の明るい校庭、真面目を絵に描いたようなメガネに軽薄そうなサングラスといった、愛実とカヲルの2人を同時に“2画面”で映し出すことによってその“格差”を見せつける――そんな意図があったように思えるのだ。この真偽はわからないが、なぜその画なのか?どうしても考えてしまう演出が施されているのは間違いない。

さらに興味深い“格差”といえば、第2話のラスト。カヲルが明菜や愛実と接する、もしくは愛実が洋二やカヲルに接する際の、2人の圧倒的な“格差”だ。そこには大きな優劣が存在しており、言うまでもなく、カヲルは愛実に、愛実はカヲルに、明菜や洋二には決してない“何か”を持っており、惹かれ合っている。今作はその底知れない“何か”を描こうとしているに違いない。

「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平 おおいしようへい テレビの“視聴質”を独自に調査している「テレビ視聴しつ」(株式会社eight)の室長。雑誌やウェブなどにコラムを展開している。特にテレビドラマの脚本家や監督、音楽など、制作スタッフに着目したレポートを執筆しており、独自のマニアックな視点で、スタッフへのインタビューも行っている。 この著者の記事一覧はこちら
(「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平)

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