コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、7月16日(水)に最新6巻を刊行する、昭和の懐かしい日常を姉弟の笑いと共に描くコミックエッセイ『しなのんちのいくる』をピックアップ。

【漫画】本エピソードを読む

作者の仲曽良ハミさんが6月12日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ反響を呼び、1.4万以上の「いいね」が寄せられ話題を集めている。この記事では、仲曽良ハミさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。

■シールと一緒に流れた涙

ここは、夏の陽ざしが眩しい、ちょっと懐かしい下町。家の前で名前を呼べば、誰かが出てきてくれる──そんな時代の、少年たちの物語。

主人公の少年“いくる”は、今日も「シュウくーん!」と家の前で声を張る。しかし返事はない。代わりに聞こえてきたのは、家の奥から響く、泣き叫ぶ声とドタバタの足音。

「なんで洗濯しちゃうんだよ!」

「知らないよ、ポケットに入れっぱなしにしてたでしょ!」

干されたのは、思い出のシール。もう手に入らないものを選択してしまい、シュウくんは泣き崩れてしまうーー。

物語を読んだ人からは、「昭和生まれの40代くらいの世代は共感できる話じゃないかな」「ただのノスタルジックなマンガではない、人に対する温かな視点を感じる良作」「世知辛い時代における心のオアシス的な作品」「氷河期世代ならささりまくる世界観」「あの頃のゲームやお菓子、遊び方がふんだんに盛り込まれ、子どもの頃の思い出を理想的なストーリーで楽しませてくれます」「単なるお懐かしマンガではな」「普遍的なリアル」「昔懐かしいお話の中に昭和の良かった頃の人間関係が散りばめられていて胸が熱くなるよ」など、反響の声が寄せられている。

■子どもたちのやり取りは実体験

――本作を振り返って、特に印象に残っているエピソードやシーンはどこか教えてください。

3巻で、主人公のいくるがナッちゃん(病気のお姉さん)と出会う長編の回があります。いつもとは少し異なる、繊細な感情の動きをたくさん描けた回で、特に印象深いです。

――作中の“遊び”や“ケンカ”の描写が非常にリアルですが、実体験や取材に基づいているか教えてください。

取材は特に行っていませんが、近所の子どもたちのやり取りなど、実体験に基づいて描いていることが多いです。というのも、主人公・いくるのモデルは僕自身なんです。

――家族・友人・近所の人など、登場人物の関係性を描き分ける上で、意識している点を教えてください。

多くの人物が登場しますが、それぞれの性格や個性を明確に描くことを心がけています。そこを丁寧に描くことで、物語全体がより魅力的になると思っています。

―― 連載開始当初と比べて、作品づくりに変化や成長を感じることはありますか?

連載を続ける中で、物語の舞台が広がっていったのは大きな変化だと思います。家から学校へ、そして町へと、描ける世界が少しずつ広がっていったのは、自分なりの成長だと感じています。

連載を続ける中で、制作のモチベーションとなっているものがあれば教えてください。

やはり、読者の反応が一番の原動力です。物語に深く入り込んでコメントをいただけると、本当に嬉しくなりますし、「早く続きを描かなければ」と思わされますね。

――先生ご自身の“子ども時代”が、本作にどのように影響しているか教えてください。

ほぼすべてと言っていいかもしれません。もちろん、全てが実話というわけではありませんが、あの頃の僕たちの記憶や空気感をベースにして作品を作っています。

――最後に、6巻を手に取ってくださる読者へ、今のお気持ちをメッセージとしてお願いします。

いつも応援してくださる読者の皆さんのおかげで、ここまで描き続けることができました。心から感謝しています。そして6巻には、木村くん登場のエピソードなど、自分でも特に手応えを感じている回を収録しました。ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。

仲曽良ハミさんの 『しなのんちのいくる』が話題/仲曽良ハミ/KADOKAWA