「この動画を見つけたそこの君、聞いて欲しい」
「この国の選挙への関心の低さ、やばいらしい」

7月20日の参院選を前に、人気グループ「INI」の池﨑理人さんが自作した曲「GO VOTE FREESTYLE」がSNSで話題となっています。

ラップ調で期日前投票や当日の投票を呼びかけており、曲を聞いた人たちからは「背中押された」「選挙に行くよ!」といった反響が相次いでいます。若者の投票率アップに一役買っているようです。

歌詞には「この国の明日を決めるのは俺たちの義務」という一節がありますが、日本では現在、法的に投票は義務づけられていません。

一方、海外には、投票が義務化されて、投票しないと罰金が科される国もあります。今回は、そうした国々を紹介しながら、「投票の自由」について考えてみたいと思います。

●投票しないと罰金?投票義務のある国

世界には30カ国以上、投票が義務化されている国があるとされています。その中から、罰則が設けられている代表的な国を紹介します。

【オーストラリア】
1924年に連邦選挙法で投票義務制度を導入しました。連邦議会の公式サイトによると、きっかけは投票率の低さだったそうです。1922年の選挙で投票率が6割未満だったため、投票が義務化されたといいます。

投票を義務づけられていることについて反対意見もありながら、国民の強い支持があるといいます。連邦・州・地方のすべての選挙で投票が義務とされています。正当な理由がなく投票を怠った場合、20豪ドル(約2000円)の罰金が科されます。

【ベルギー】
1892年から投票を義務化しています。投票の棄権が多かったことから、民主主義の発展のために導入されたとのことです。

国政選挙や地方選挙が対象です。EUの公式サイトなどによると、15年間に4回以上投票しなかった場合は、10年間選挙人名簿から抹消され、官公庁からの任命や昇任、表彰を受けられなくなるそうです。また、40〜80ユーロ(約6800〜13000円)の罰金も科せられます。

【シンガポール】
1959年の総選挙をきっかけに投票義務化が導入されました。シンガポールの公式サイトによると、無断で棄権すると、選挙人名簿から除外され、再登録には病気や出産、出張、留学などの正当な理由が求められます。正当な理由がない場合は、50シンガポールドルの罰金がかかるそうです。

これらの国では、いずれも投票率が90%前後と非常に高く、制度が一定の効果をあげているといえそうです。

●日本でも導入される可能性は?

日本でも、投票の義務化やそれにともなう罰則を設けるべきか、国会で議論されたことがあります。

2016年3月、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会で、大西健介議員が、オーストラリアの事例を紹介しつつ、投票義務化して投票率を上げることについて、どう思うか質問しました。

これに対して、当時の高市早苗総務相は次のように答弁しています。

「現行憲法に規定されている選挙権の性格でございますが、これも権利であると同時に、公務員の選定という公務の性質をもあわせ持つという学説が多数説であると承知しています。

罰金などのペナルティを伴う投票の義務化ということなんですが、選挙権は、仮に公務としての性格を踏まえたとしても、ペナルティを科すことによって国民を強制し得るような性質を有するものなのかどうかということ、それから、選挙権の行使というのは、選挙人御本人の自覚にまつべきであって、外部からの強制によるべきではないのではないかという考えもあります」

つまり、選挙権は「権利」と「公務的性格」の両面があるものの、罰則による強制には疑問があるということを述べています。さらに、投票は本人の「自覚」に委ねるべきものであり、「強制」は慎重に議論されるべきとしました。

投票の義務化がベストな方法かどうかは、今も意見が分かれます。

ただ一つだけ確かなのは、民主主義を支えるのは「誰か」ではなく、私たち一人ひとりの意思だということです。まずは、自由に与えられた権利として、一票を投じることから始めてみませんか。

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