
e☆イヤホン主催の「ポタフェス 2025夏 秋葉原」が7月12日と13日にベルサール秋葉原で開催された。140以上のブランドが出展。各社が人気モデルを展示したほか、イベント初出展の製品も多く登場し、賑わいを見せていた。会場の展示から気になる製品をピックアップして紹介していこう。
ポータブルオーディオには最先端の技術が使われているが、最近増えているのが1980年代や1990年代の少し懐かしいデザインテイストを取り入れた製品だ。カセットテープやCDプレーヤーなどの新機種も登場し、所有感をくすぐる。
FIIOの「SK-M21C」は、カセットテープをモチーフにしたポータブルオーディオ用のケース。「FIIO M21」(実売6万円弱)を収納して使える。物理ボタンで再生/一時停止でき、装着すると、画面がテープに変わるギミックを持つ。ウォークマン Aなどでもあったコンセプトだが、大きさがテープに近いのでリアリティもある。実売価格は5500円前後。
クラシカルなデザインで軽量のヘッドホン「Snowsky WIND」(実売4000円弱)と組み合わせるとさらに雰囲気が出るかもしれない。SnowskyはFIIOのサブブランドとして展開されており、価格を抑えつつポップなデザインのシリーズとなっている。
ちなみに実際の昭和末期〜平成初期はこんな感じでした
ソニーは「みんなが喜びそう」ということで、昭和〜平成のウォークマンを展示していた。ポップでカジュアルな雰囲気で1980年代のものとはまた違ったテイストがある。ポータブルオーディオの分野ではレトロデザインの製品が再注目を浴びているが、本物の昭和〜平成ウォークマンはこんな感じだった。カラーリングや1990年代末にはやった半透明デザイン、大きめの物理ボタンなどに懐かしさがある。改めてデザインの味わいを感じられた。
ここのところ矢継ぎ早にCDプレーヤーを出しているSHANLING。ポータブルCDプレーヤー「EC Zero T」の中身はR2RのオリジナルDACと真空管を搭載した本格派というかかなりマニア度の高い内容。実売価格は9万9000円前後だ。
final初のゲーミングヘッドセット
引き続き注目の分野と言えるのがゲーミング。新製品としてはfinal初のゲーミングヘッドセットである「VR3000 EX for Gaming」が展示されており、大きな関心を集めていた。8月発売予定で、実売価格は2万円を切るあたりになりそうだ。低遅延なUSBトランスミッターでの接続が可能。サウンドステージの広さが特徴。前後左右、上下方向など空間情報も正確に再現できるとしている。FPSなどでは敵の足音だけを目立たせるモードも装備しているようだ。
箱庭的感覚、ネックスピーカーでリアルサラウンド
パイオニアが展示していたのは、リアルサラウンド再生ができるSound Tectorシリーズのネックスピーカー。首の部分にサテライトスピーカーが付いていて、本当に後ろから音が鳴る。バーチャルサラウンドとは異なるリアルな音の動きが楽しめて面白かった。
センター、サブウーファー、ネックスピーカー(TQ-FG3000、TQ-WG3000、TQ-RG3000)の3ピース構成で、個別に買えるが、合計すると9万円程度の実売価格になる。サラウンドに興味があるが、スペースに制約があるという人にいい。
finalはちょっとだけ見た目が上がったF.C.自作イヤホン
なお、finalのブースでは「MAKE MOD」も展示されていた。部品交換でユーザーが音をチューンしていけるのがMAKEシリーズの特徴だが、MAKE MODではメーカーのエンジニアが音決めしたファクトリーチューンというのがコンセプト。ドライバー構成や筐体の仕上げが異なる。8月発売予定。夏のヘッドフォン祭 mini 2025でも展示されていたが、ポタフェスに合わせて、急遽ロゴを追加したものが展示されていた。
ぶら下げられる完全ワイヤレス
スカルキャンディーの「METHOD 360 ANC」はカラビナ(クリップ)のついた大きめのケースで持ち運べる目立つノイズキャンセルイヤホン。ボーズとタッグを組んだサウンドも特徴だ。どちらも低音を重視したブランドなので意外に相性がいいかもしれない。収納時には左右がたがい違いに入る仕組みになっており、区別がつきやすく収納/取り出しがしやすそうだ。直販価格は2万円弱。8月1日予約開始。
発売直前のフラッグシップイヤホンや高性能DACの参考展示、FIIO
イベントでは毎回多くの製品が登場するFIIO。今回の注目は7月18日に登場したばかりの「FX17」。実売30万円弱のブランドとしてはかなり高額な製品で、8基の静電ドライバーを搭載。加えてリチウムマグネシウム振動板を採用したダイナミック型ドライバーと、Knowles製のBAドライバーを4基搭載した、かなり贅沢なマルチドライバー構成だ。ハウジングはチタン製となっている。
日本初公開の製品としては平面磁界型イヤホンの「FP3 TC」にも注目。ドライバーは独自開発したもので第2世代14.5mm振動板を採用している。接続はUSB Type-Cとなっており、国内での販売価格や発売時期は未定だが、海外では99.99ドル(税別)で売られているということでなかなかリーズナブルな印象だ。384kHz/24bitの伝送に対応するなどDAC部分のスペックも高そう、ケーブルはMMCXタイプなのでリケーブルもできる。
一方でカジュアルなサブブランドSnowskyも展開。小型ヘッドホンアンプの「Snowsky MELODY」は、天然木の無垢材シェルを採用。高性能DSPとデュアルデコーディングDACを搭載し、端子は3.5mmと4.4mm。音声通話機能も持つようだ。メープルとウォールナットの2種類の木材が選べる。発売時期や価格は未定とのこと。
ハイレゾ伝送にも対応したiFi audioのBluetoothアダプター
iFi audioの「GO pod」はケーブル交換対応の有線イヤホンをワイヤレス化できるアダプター。Snapdragon SoundやLDACに対応し、96kHz/24bitの伝送にも対応する。「GO pod Air」は本体が軽量化してケースも持ち運びやすいものに変更。価格を抑えている。発売時期/価格は未定だが、海外価格は249ドル(税別)。「GO pod Max」はSoCをGO podの「QCC5144」よりも上位グレードの「QCC5181」に変更し、aptX Lossless、K2HD、アルミ製ボディ、大きいイヤホンも収納できるケースを採用している。発売時期/価格は未定だが、海外価格は599ドル(税別)となっている。
シンプルかつゴージャス! 金色に光るIntium
ミックスウェーブのブースでは、ケーブルブランドBeat Audioが手がけるイヤホン「Initium(仮称)」が登場。参考出品で開発途中とのことだが、ゴールドの美しい筐体で勝つスリムな筐体になっており装着感も良さそうだ。
BA1基のシンプルな構成で、ケーブルの音の違いなども把握しやすいだろう。装着しているケーブルにもこだわりが感じられた。発売時期などは未定となっている。また、MMCX端子を2pinに変換するケーブルも用意されていた。
また、同じミックスウェーブが扱うCampfire Audioからは、USB DAC「Relay」も展示。AKMのDAC(AK4493SEQ)を内蔵しており、3.5mmと4.4mmの出力を備える。スマートフォンに接続するとロゴが赤く光る。価格や発売時期などは未定だ。
NUARLはMEMS搭載のオープンイヤーを開発中
NUARLのブースでは、MEMSスピーカーを使用したオープンイヤーイヤホンνClip「X033(仮称)」が登場。装着方法はイヤーカフ式で、完全ワイヤレス型となっている。人気のオープンイヤー型だが、MEMSスピーカーとダイナミック型のハイブリッド構成の機種というのは今のところレア。LDACコーデックにも対応するなど高音質設計になっているということで期待が持てそうだ。
展示が急遽取りやめになったガラス振動板ヘッドホン
ヘッドホン関連では、振動板にガラスを使用したSIVGAのヘッドホンが興味深かった。01Diverseのブースで展示されている試作機で日本電気硝子の“超薄板ガラス”を振動板に使った50mm径のドライバーを使用している。SIVGAというと、ガラスの平面振動板を使ったイヤホン「Que UTG」が話題になっている。これをさらに大口径にしたものとなるが、強度の確保とそれに合わせた音質のチューニングがなかなか難しいということだった。特に振動板の厚さは薄いと割れやすく、厚いと特性が出しにくいということで、低域再生など会場で色々意見を聞きながら改善を加えていくとのことだった。
完全ワイヤレスが有線イヤホンに変わる
Acoustuneブランドのイヤホンを扱っているピクセルは、完全ワイヤレスイヤホン「HSX1001 Jin -迅-」の新オプションとなるC:03とM:02を展示していた。
Acoustuneのイヤホンは一般的なイヤホンにはないモジュラー構造を採用。素材やドライバーなどが異なるモジュールに交換することで音の変化を楽しめるのが特徴。完全ワイヤレス機でも音に関わる部分と通信に関係するワイヤレスモジュールの部分を分けている。モジュールを取り外して交換することで機能や音を変えられるのがポイントなのだ。
C:03は筐体に洋白(ジャーマンシルバー)を用いた音響チェンバーで、標準の「C:01」など既存のものよりも世代の新しい第4世代ミリンクスドライバーを採用している。M:02は完全ワイヤレスイヤホンを有線イヤホンとして使うためのモジュールで径が太く、4.4mmプラグを備えたケーブルが付属する。
ピクセルは新規取り扱い予定のシンガポールKOTORI AUDIOの製品群も展示していた。「VAMPIRE」はBA1基の構成、「ZEPHYR」はBA+ダイナミック型の構成。さらにシングルダイナミックの開発中モデルも存在するようだ。VAMPIREとZEPYRの発売は近く、価格は1万円台後半と2万円台半ばになる見込みだという。
最大規模の展示ブースを構えたアユート
ポータブルオーディオは輸入もの割合が高く、メーカーやブランドは個別に存在するのだが、国内で販売している代理店ごとに製品が集められまとまった展示になっているケースが多い。最近は輸入代理店が大手に集約されている印象だが、中でもAstell & Kernなどを扱っているアユートはかなり多くのスペースをとって豊富な種類の製品を展示していた。1Fと別のフロアに分けていたこともあったが、種類と広さは過去最大規模だったのではないだろうか。
イヤホンでは2000円台と高コスパなAZLAの「TRINITY」から、新たに輸入代理店となったVOLK AUDIOの第一弾製品で予価69万3000円の「ÉTOILE」(エトワール)まで幅広い選択肢を提示していた。Empire Earsの「ODIN MK2」も初展示となった。代理店契約を結んだFitEarもブースの一角を占めていたが、FitEarをポタフェスで見るのもここ数年ではなかったことかもしれない。
注目機種はやはりAstell & Kernの「SP4000」。発売は8月ごろを予定していて、価格は70万円クラスの超ハイエンドプレーヤーだ。夏のヘッドフォン祭 mini 2025に続く出展。また、64 Audioとコラボしたイヤホン「XIO」も展示されていて、注目を集めていた。XIOは64 Audioの「Volur」をベースに筐体の素材やデザイン、チューニングをSP4000とマッチするものに仕上げている。価格は約55万円とこちらもかなりのもので、8月ごろの国内発売を見込んでいる。
10ドライバー構成で、ダイナミック型の2基は連結され、片側は通常の音を出し、もう一方は音を出さずそのサポートをするトゥルーアイソバリック構成。BA8基のうち超高域は64 Audio独自の“オープン型BA” tiaドライバーで高解像な音を鼓膜にダイレクトに送り出す設計だ。筐体はブラックDLCコーティングを施した904Lステンレス。
Maestro audioは3つのイヤホンを参考展示「MAPro1000 II」の予価は1万4300円、「MAPro1000 Drop」は1万5400円で、EDM系再生に適したMAPro1000 IIの派生モデル。ともに8月発売予定。「STAGEAR」は予価2万7500円で、FitEarの監修で新規開発したステージモニターとのこと。9月発売予定。
エトワールは8月の発売予定。珍しい静磁型ドライバーを超高域に使用した10ドライバー/クアッドブリッド構成で、超低域~低域用に独自の10mmダイナミック型ドライバー(M10)、中域~中高域にSonionのBA型ドライバーを4基、高域~超高域にSonionの静電型ドライバーを4基、静磁ドライバー(M8)は8mm。静磁ドライバーは、静電型(EST)の一種で、静電磁気(MST)とも呼ばれている方式。ESTのように高電圧が必要ない。
会場を歩くとデスクトップ向けのUSB DACの新製品にも出会い、ちょっと良さそうだなと思った。先に挙げたFIIOからはデスクトップオーディオ製品についても新機種が登場する見込みだ。
「FIIO K15」は「FIIO K9」の後継機種で、旭化成エレクトロニクス(AKM)製のDACチップ「AK4497S」を2基搭載。ディスクリート構成のClass ABトランジスタ電流増幅ヘッドホンアンプ回路や2つの超低位相ノイズ フェムト秒クリスタルオシレーターなどを採用。出力は3000mWと強力で、フロントに3.93インチのタッチスクリーンを搭載。リモコンも付属する。Wi-Fiや有線LAN(GbE)接続も可能。ハーフサイズ筐体で本体は約2100g。価格や発売時期は未定だが、海外では550ドル(税別)前後で販売されているという。
「FIIO K13 R2R」は「FIIO K7」の後継機種でDAC部分は完全差動補完型の24BitR2R抵抗アレイ。自然で温もりの高いサウンドだという。オーバーサンプリング設定の切/入の切り替え(NOS/OSデュアルモード自由切換機能)も搭載している。出力は2300mWと強力で、Bluetooth接続時はLDACコーデックの使用に対応。AC/DCデュアル電源設計など、高音質設計。10バンドのパラメトリックEQや完全バランス構成のアンプ回路を搭載して、XLRとRCAのプリアンプ/ライン出力を持っている。価格や発売時期は未定だ。
「FIIO FT7B Black」は7月18日発売の開放型ヘッドホンのフラッグシップ機。106mmの大型ドライバーを搭載した平面駆動型で、金・銀多層コーティングを施し1μmと超薄型の振動板を採用。カーボンファイバー使用で427gと軽量だ。e☆イヤホンでの価格は12万5400円。
Questyleのブースでは、ポータブルアンプの新モデルが展示されていた。「SIGMA」「SIGMA Pro」でSIGMAが先行して秋頃の発売、Proはその上位モデルとなる。価格などは未定だが、SIGMAは10万円程度になるようだ。
SIGMA Proは、アンプとしてだけでなくオーディオインターフェースとしても利用できる。アナログ入力を持っていて、パソコンに音を取り込むことも可能だ。ヘッドホンをつないで音楽を高音質に楽しむだけでなく、デスクトップオーディオを充実させる用途でも活躍しそうな製品だ。
「内容は10年経っても変えてません」なPaw Gold復刻機
トップウィングのブースではデスクトップなどで据え置いて使うUSB DAC「Gungnir」が参考出展されていた。Lotooの製品で、すでに販売している「Mjolnir」に近いが、デジタルオーディオプレーヤーの機能は持たない。Mjolnirは132万円と高価な製品だが、価格はぐっと抑えたものになりそうだ。鋭意開発中とのことで、仕様などは今後確定していくことだろう。
Lotooブランドの製品としては、ブランド10周年を記念して、同ブランドを有名にしたデジタルオーディオプレーヤー「Paw Gold」の復刻版が800台限定で販売されるというので注目。
「Paw Gold 10th Anniversary Edition」は仕様なども当時と全く一緒で、筐体がジュラルミンからステンレススチールに変更となっているというもの。独自OSでファイル再生のみの対応という硬派なプレーヤーだが、当時の音は衝撃的だった。価格も本国では変わらないが、当時とは為替レートが大きく変わっているので、国内価格は高くなる見込み。
ライティング&透明天板がいい感じの多機能DAC
MUSINが取り扱っているTOPPING「D90 Discrete」はブランドではハイエンドラインに位置付けられるUSB DAC/ヘッドホンアンプ。上が透明でイルミレーションされている様子がいい。1bit DAC搭載でアナログ/デジタルの電源を分離するなどこだわった構成。価格は30万円前後になる見込みだ。
MUSINのブースでは、iBassoブランドのデジタルオーディオプレーヤー「DX340」の交換アンプカード「AMP17」も展示されていた。AMP17では窒化ガリウムアンプ技術とトランジスタのハイブリッド構成を採用しているとのこと。
会場は秋葉原のメインストリートである中央通りに面していることもあり、1Fには目をひくオブジェが多数展示されていた。
ポタフェスの会場ではタワーレコードの物販コーナーもあり、ポタフェスとのコラボグッズも並んでいた。また、アニソンを中心とした迫力あるアナログLPレコードも販売されており、会場に華を添えていた。
ヘッドホンイベントとしては比較的広い裾野を狙っているポタフェス。オーディオに興味を持っている人が買いたい製品を確かめにくるのはもちろんだが、気軽に立ち寄れるイベントであり、ポータブルオーディオなどの音モノを中心にトレンドやライフスタイルを感じ取りたい、とにかく雰囲気を楽しみたいという人も楽しめる内容になっていたと思う。

コメント