最近あまり話題にならないけど「自動運転」っていまどうなってていつ頃実現される? 自動運転の現在地

この記事をまとめると

■全国各地で実証実験が行われている自動運転だが多くのユーザーにとってはピンとこない

■日本ではオーナーカーの自動運転はひとまずADASの発展系を目指している

■自動運転でもっとも重要なのは「自動運転は本当に必要か?」を考えることだ

日本の自動運転技術の現在地

「まあ、いまでもたまにはニュースとかで見るけど、結局どうなの自動運転」。

 一時は、テレビやネットのニュースで特集されることが多かった自動運転。確かに、全国各地で長期の実証実験が行われ、また一部では実用化されているのだが、多くユーザーにとって「ピンとこない」。そんな感じが、日本での自動運転の実状だろう。

 そもそも、日本で自動運転に注目が集まったのは2010年代中頃。アメリカを中心として、自動運転の実用化に向けた研究開発が加速したことを受けて、日本では国家プロジェクトである「戦略的イノベーション創造プログラム(通称:SIP)」のひとつとして、自動運転を産学官連携で取り組む活動が始まった。

国家プロジェクトである「戦略的イノベーション創造プログラム」のロゴ

 筆者は、全国各地でSIPの各種活動の現場を数多く取材してきた。また、欧米、東南アジア、韓国、そして中国などで自動車メーカー、ITメーカー、行政機関などが行う自動運転実証についても現地現物で肌感覚で接してきた。

 直近では、過去1〜2年で自動運転に関する業界図式がだいぶ変わったという印象をもっている。

 キッカケは、AIを活用したロボットタクシーだ。グーグル(親会社がアルファベット)から独立したウェイモが巨額の開発費用をかけて、この分野の主導権を一気に奪った印象がある。

ウェイモの自動運転車両

 一方で、中国では政府主導で独自路線を敷いて、完全自動運転の実用化を急いでいる状況だ。

一般車両と公共交通機関それぞれが自動運転で目指すところ

 こうしたタクシーやバスなどを用いる公共的な領域を、日本政府は「サービスカー」と呼ぶ。直近では、海外でのAIを活用したロボットタクシーや、2024年問題に対応する高速道路での長距離トラック向け自動運転などについて、「自動運転2.0」と命名して日本での普及を再検討しているところだ。

トラックによる自動運転の実証実験

 他方、国が「オーナーカー」と呼ぶ乗用車の自動運転については、コストに見合った形で段階的に高度化するという方針を、日系メーカーの多くが取っている。

 自動運転は、自動運転レベルとして1〜5までの5段階あるが、レベル1〜2はクルマの運転の主体がドライバーな担う。つまり、先進運転支援システム(ADAS)のことだ。さらに高度化して、レベル3〜4になるとクルマの運転はクルマのシステムが担う。そのうち、レベル3はシステムが自動運転の継続が不可能だと判断すると、乗員に対して運転することをリクエストしてくる、という考え方に基づく。

 オーナーカーについては、ホンダレジェンド」が世界初の量産型レベル3を実現したものの、コストが高く普及には至らなかった。その後、グローバル市場で見ても、レベル3を導入するケースはまれで、多くのメーカーが当面の間、高度なレベル2を目指すとしている。一般的には、レベル2.5と表現されることもある。

自動運転レベル3を搭載したホンダ・レジェンドの高速走行シーン

 このように日本では、オーナーカーはADASの発展系、またサービスカーはドライバーレスのレベル4に向けた実証が続くことになりそうだ。

 いずれにしても、自動運転を考える上でもっとも重要なことは、「自動運転は本当に必要か?」という点だ。自動運転は万能ではない。どんな場所で、どんな時に必要なのか。コストを考えながら、自動運転が社会にとってプラスになることを願う。

最近あまり話題にならないけど「自動運転」っていまどうなってていつ頃実現される? 自動運転の現在地