
全面開通60周年を迎えた名神高速!じつは当初より400m短くなっていた
2025年7月1日、名神高速道路が全面開通60周年を迎えました。1965年7月に全面開通した際の名神高速道路は延長189.7kmでしたが、現在は189.4kmへと400m短縮されています。それは日本の高速道路として初めてルート変更を伴う工事を行ったからです。今回はこの工事によって廃道となった部分を取材してきました。
日本初の高速道路に静かに佇む歴史の生き証人
1963年7月、日本初の高速道路として名神高速道路が滋賀県栗東IC〜兵庫県尼崎IC間で開通。その後1964年には尼崎IC〜西宮IC間、一宮IC〜栗東IC間。そして1965年7月1日に小牧IC〜一宮ICが開通したことで、名神高速道路189.7kmが全面開通。そして2025年7月1日で60周年を迎えた。
当時トヨタは全面開通した名神高速道路で、3代目コロナを使って58日間、276往復して10万km耐久テストを行い、その模様がテレビやラジオでも放送。その優れた高速性能と耐久性を証明してみせた。
1965年開通当時の名神高速道路の距離は189.7kmだったが、現在は189.3kmと400m短縮されている。それは1978年に線形改良が行われたからだ。線形改良というのは、道路などでより安全で効率的な運行を可能にするために、路線の形状(線形)を改善する工事のことを指す。
全面開通からわずか13年で路線の形状を変更
名神高速道路は、全面開通からわずか13年で路線の形状変更を行わなければならなくなった。それは岐阜県の関ヶ原ICと滋賀県の米原JCTの間にある今須トンネル付近だ。
一宮IC〜栗東IC間は1964年に開通した区間であるが、当時は山間に沿ったルートが取られていた。その結果、今須カーブと呼ばれる半径280mという急カーブで事故が多発。その結果、線形改良が行われることとなったのだ。
高速道路のカーブ半径は道路構造令によって設計速度に応じて、最小値が定められている。この今須付近にあったカーブはこの最小値をはるかに下まわる半径280mという急なカーブだったため、事故が多発したという。Youtubeに当時の映像が残っているが、その映像には目の前に山の斜面が広がりほぼ直角に曲がるようなシーンが映っている。
1972年当時の今須付近の地図。写真の中央の下のほうに名神高速の半径280mという急カーブが存在。出典:国土地理院
1978年に今須トンネルが完成して線形改良された名神高速道路だが、旧路線の名残は残っている。名神高速道路下り線の関ヶ原ICを通過し、今須トンネル手前の左側に除雪車などが停車している大きなスペースがある。実はこれが旧路線跡なのだ。
地図で見ても、旧路線跡はほとんど残っていないのだが、唯一、彦根117と書かれたボックスカルバート(地下に埋設される箱型のコンクリート構造物)が残っている。約47年前はこのコンクリートの建造物の上を高速道路が走っていたという証拠だ。
また、旧路線と現在のルートが合流する地点に向かってコンクリートと盛り土された場所があり、こちらも名神高速道路の旧路線の遺構と言えるだろう。
1965年の開通から2024年度まで累計約47億台が走行した名神高速道路。物流の大動脈として、日本の経済を支え続けているが、より安全な走行を目指して全面開通からわずか13年で路面改良された歴史の生き証人として遺構は60周年を静かに祝っているようだった。
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