許せないカスハラ行為がはびこるタクシー&路線バス! 加えて客じゃない「周囲の乗用車」からの嫌がらせも目立つ現状

この記事をまとめると

■タクシーやバスのドライバーは客から暴言や暴行を受ける場合がある

■従業員専用の送迎バスなど限られた人しか乗らない車両はストレスが少ない

■会社名などが入ってるタクシーやバスは反撃してこないと思われている背景がある

タクシーやバスの運転手が悩むカスハラの現状

 バスやタクシー運転士を悩ますもののひとつが、カスハラカスタマーハラスメント)となる。

 タクシーに関しては単なる暴言だけにとどまらず、乗客による暴行事件に発展することも珍しくない。テレビニュースや情報番組でタクシー会社が提供した車内向けドライブレコーダー映像の提供を受け番組で紹介されることもよくある。お酒に酔って前後不覚となって乗車した末のカスハラ行為というのではなく、意識がはっきりとしており、車内撮影用のドライブレコーダーがあることを確認していてもカスハラ行為に及ぶケースもあるのだから、ほとほと呆れるしかない。

迷惑客からカスハラを受ける背景には何があるのか

 酔った勢いでの運転士への暴言や暴行は、酔ったからこそ、そのひとの本性が出てしまっているともいわれている。つまりタクシー運転士という職業を差別的に日ごろから見ており、それが酒に酔ったときに表に出てしまうというわけだ。

 カスハラ行為(タクシー車内での暴言や暴行)に及ぶひとは老若男女さまざまであるが、意外なほど社会的地位が高かったり、エリートと呼ばれるひとが運転士を暴行したうえで警察に逮捕されることが意外と多い(タクシー会社も差別意識が暴行の背景にあることを見透かしており、被害届けを提出し示談に応じないことが多い)。

迷惑客からカスハラを受ける背景には何があるのか

 カスハラに遭わないための心構えとして、とくに新人のころは行き先を告げられ、わからないときは素直に「わからないので道順を教えてください」とするように指導されるとのこと。あるタクシー運転士経験者は、東京23区内のいわゆる下町エリアを流していたとき、どうみてもその筋とわかる強面の男性を乗せたが、行き先を告げられたがよくわからなかったので、生返事をしてタクシーを出したそう。

迷惑客からカスハラを受ける背景には何があるのか

 するとその乗客がいつもと道が違うと言い出したとのこと。さらに続けて「本当にわかってんのか?」とやや怒り口調でいわれたので、そこで「すいませんわからないです」と伝えると、「はじめからそういえや」といわれ、その後は乗客の指示で目的地まで行きつくことができたとのことであった。運転士を攻撃する隙(あるいは口実)を少しでも与えてはいけないということらしい。

 とはいっても、はじめからハラスメントをしようと乗ってくるひともいるし、どこで導火線に火がついたのかわからないケースが最近多いので、ドライブレコーダー装着による抑止効果にすがるしかないのが現状ともいえよう。

 路線バスでは、バスの運行という本来の業務以外でのハラスメント行為が目立っている。乗車または降車時の料金収受だったり、あるあるとしては時間どおりにバスが来ないといったクレームは、お年寄りからのものが目立っている。始発停留所は別としても、途中の停留所にある時刻表はその時間に到着するというものではない。道路の状況を考えれば、これが予定通過時間となるのはわかるはずだが、これがなかなか周知徹底されず、「時間どおりにバスがこない!」ということになる。

迷惑客からカスハラを受ける背景には何があるのか

 何か文句をいわれるという以外にも、必要以上に接近されてものを聞かれるということも、感染症へ気をつかう現在では運転士としては相当のストレスというか、ハラスメント行為に近い精神的負担となるようである。

 最近は観光地だけではなく、主要都市を中心にインバウンド(訪日外国人観光客)が路線バスを利用する機会も多くなっている。当然、英語を中心とした外国語で何か問い合わせを受けることも多くなり、まさかバス運転士になって英語(外国語)で苦労するとは……と、英語ハラスメントではないが、運転士だけではなく、路線バス事業者もこれに頭を悩ませているようである。

迷惑客からカスハラを受ける背景には何があるのか

反撃してこないから……と舐めているユーザーも多い

 同じ旅客運送事業でもカスハラとは縁遠いのが、企業送迎請け負いのバス事業者や貸切、いわゆる観光バス事業者となっているらしい。

 企業送迎バスとは、郊外のバイパス沿いにある大規模物流センターなどの事業所と最寄りバス停の間で、そこに勤務する人を送迎するバスのこと。そもそも最寄り駅と送迎先とを結ぶので運行距離は短い場合が多いし、途中にバス停がなく停車する必要もない。また、利用するひともそこに勤務する関係者なので、顔なじみまではいかなくても、ある程度特定されるし、利用者も勤務先が用意するバスなのだから、そのバス車内で問題を起こすとあとが面倒ということを把握している。料金収受など、運転以外の業務がほぼ存在しないので、ドライバーのストレスも少ないようである。

迷惑客からカスハラを受ける背景には何があるのか

 観光バスでは、路線バスやタクシーのような乗客によるカスハラ行為はほぼないとのことであった。

 これはインバウンドで目立つようだが、集合時間を守らないといったことは目立つそう。しかし、これは運転士にとっては完全に業務外の話といえよう。動画投稿サイトでは、公共鉄道などでのインバウンドの迷惑行為の動画があがっていることがあるが、そんなインバウンドも車内で大騒ぎするなどの迷惑行為は聞いたことがないとのことであった。

 日本との慣習の違いもあるようで、特別嫌な印象はないとしながらも、日本人利用者に比べると車内を散らかす(ゴミを放置する)ということはあるようだ。日本では習慣がないので仕方ないが、インバウンドを乗せると、降車時にチップを渡してくれることも多いとのことであった。

迷惑客からカスハラを受ける背景には何があるのか

 聞いた話では、車内のお客ではなく周囲のクルマからのハラスメントが多いとのこと。複数の車線のある道路で、無理にバスの直前に入ってくるような車線変更や幅寄せのようなことを、あえてバスだからとして行ってくるクルマが結構いるそうだ。

 車体に事業者名が入っているので……ということで、何をやっても売り言葉に買い言葉で、何かいい返してくることはないというということもあり、観光バスだけではなく、路線バスやタクシーでも似たような周辺車両からのハラスメントみたいな行為を受けることはよくあるようだ。

迷惑客からカスハラを受ける背景には何があるのか

 ドライブレコーダーが普及する以前では、とにかくタクシーをめがけての当たり屋行為が多かったようだ。見た目で当たり屋をやりそうだというクセのある風貌のひと以外でも、主婦や高校生もタクシーめがけて自転車で突撃してきたと聞いたことがある。

 道で客待ちしているときに、酔っ払いや反社系のひとが意味もなくタクシーを蹴ったりしてくることもそんなに珍しくないようだ。看板を背負っているから反撃はしてこない、そんな妙な安心感からタクシーやバスを意味もなく攻撃してくるひとは、車内や車外問わずいるようで、運転士にとってそのようはハラスメント行為への心理的負担は大きいのである。

迷惑客からカスハラを受ける背景には何があるのか

許せないカスハラ行為がはびこるタクシー&路線バス! 加えて客じゃない「周囲の乗用車」からの嫌がらせも目立つ現状