発売からたった4日で受注停止のジムニーノマド! 簡単に想像できそうな人気っぷりをなぜメーカーは予想できなかったのか?

この記事をまとめると

ジムニーノマドは発売4日で5万台を受注し販売停止に

スズキは過去同様、生産計画を控えめに見積もり続けた

■特殊な構造ゆえ増産困難であることも背景にある

「バカ売れ」で済ませてはならない事情

 ジムニーノマドは2025年1月30日に発売され、4日後の2月3日には、メーカーによると「約5万台のご注文をいただいて」受注を停止させた。ノマドは発売前の予約受注をほとんど行わなかったから、ほぼ正味4日間で5万台の注文を獲得している。日本車史上最速の大量受注であった。

ジムニーノマドが早々に受注停止となった理由

 ジムニーノマドが受注を停止させた直接の理由は短期間の大量受注にあるが、スズキはあらかじめそれを見抜いて生産体制を整える必要があった。規模の大きな自動車メーカーはユーザーに対しても多大な影響力をもつからだ。

 昨今のスズキは、自社製品の売れ行きを少なく想定する傾向が強い。ジムニーノマドの目標販売台数も、1か月当たり1200台に留まった。2024年におけるコンパクトSUVの1カ月平均登録台数を見ると、トヨタヤリスクロスとカローラクロスがそれぞれ約6800台、ホンダ・ヴェゼルは約6300台だ。ノマドの月平均1200台は、日産キックスマツダCX-30と同等となり明らかに少ない。

 ちなみに2018年に発売されたジムニージムニーシエラでも、スズキは国内の販売目標を少なく設定した。ジムニーは1年間で1万5000台(月1250台)、シエラは1年間で1200台(月100台)に留めたのだ。

ジムニーノマドが早々に受注停止となった理由

 その結果、ジムニージムニーシエラは納期を1年から1年半に遅延させている。そこで徐々に生産台数を増やし、2024年の1カ月平均販売台数は、軽自動車ジムニーが3451台、シエラは2154台であった。この販売実績を見ても、待望の5ドアボディとなるノマドの目標販売台数が1カ月当たり1200台では、明らかに少ない。

 そしてスズキは、ジムニージムニーシエラに続いて、ジムニーノマドでも需要に対する生産計画を少なく見積もった。そのために、ジムニーシリーズの全車種にわたり、納期を大幅に遅延させたり受注を停止させている。

ジムニーノマドが早々に受注停止となった理由

ジムニーには増産し辛い事情もあるが……

 ジムニーシリーズが納期遅延や受注停止に陥った理由として、クルマづくりの特殊性も挙げられる。純粋な悪路向けSUVだから、スペーシアハスラースイフトといったほかのスズキ車と共通化できない独自のユニットやパーツが多いのだ。

 まずジムニーシリーズは、ボディ骨格から異なる。モノコック構造をとる他モデルに対して、頑丈なラダーフレームにボディやエンジンを架装しているのだ。サスペンションは前後ともにコイルスプリングを使った車軸式で、これも悪路に対応した設計だ。

 駆動方式は、ほかの乗用車はFFだが、ジムニーシリーズは後輪駆動をベースにしたパートタイム式の4WDになる。悪路で駆動力を高める副変速機も装着した。

ジムニーノマドが早々に受注停止となった理由

 以上のようにジムニーシリーズには専用のユニットやパーツが多く、サプライヤーも少量生産で供給している場合がある。増産するにはその供給能力も高めねばならない。

 そして生産規模を一度増やすと、同じ生産ペースを長く保たねばならない。生産ペースを下げたら、余剰な生産設備を抱えることになるからだ。サプライヤーに対しても、減産を強いることは難しい。

 そのためにジムニーシリーズのような特殊性を伴う車種は、抜本的な増産に踏み切りにくい。しかしそれを納期遅延や受注停止のいい訳にすることはできない。ほしいユーザーに責任をもって届けないと、転売が横行して中古車市場の混乱まで招き、ユーザーに迷惑を掛けたり、不利益を与えてしまう。ここに自動車産業の厳しさがある。

ジムニーノマドが早々に受注停止となった理由

ジムニーノマドが早々に受注停止となった理由

発売からたった4日で受注停止のジムニーノマド! 簡単に想像できそうな人気っぷりをなぜメーカーは予想できなかったのか?