
参議院議員選挙は20日、投開票が行われた。「日本人ファースト」を掲げた参政党が14議席を獲得して、非改選の議席と合わせて15議席とし、野党では3番目の議席数と躍進した。一方、自民党は非改選と合わせて101議席、公明党と与党として参議院の定数「248」の過半数「125」に届かなかった。参政党顧問の元航空幕僚長・田母神俊雄氏はこの結果に「自民党はもはや保守ではない。見切りをつけた人々が参政党に流れた」と語った。
20日午後8時。7議席が争われた“激戦”の東京選挙区でいち早く当選が報じられたのは参政党から出馬したさや氏(43)だった。政治学者の岩田温氏はその衝撃をこう表現した。「選挙が始まる前まで『参政党に勢いがある』とは思っていたが、それは『比例で何議席取るか』という話だった。しかも(7人当選者が出る東京で)ギリギリの7番目に入ってくるなどならまだ常識の範囲内で理解できるが、1番手に来るというのが従来の予想をはるかに超える地殻変動を国民が求めているのだろう」
さや氏とはどんな人物なのか。シンガーソングライターとして活動後、保守系のメディアでMCやコメンテーターを務めてきた。今回の選挙期間中には自身が投稿したXの内容について公選法違反ではないかという指摘が相次ぎ、党の公式アカウントが「不適切な内容が含まれていたことを深くおわび申し上げます」と陳謝する事態になったことでも話題になった。
主張はもっぱら保守的だ。3日配信のネット番組で「核武装が最も安上がりで、安全を強化する策の一つだ」などと発言して波紋を広げたほか、当選後の会見でも「日本のために。日本人の皆様のために。これから本当の戦いがスタートしていくと思います」などと語っている。
それを教えたのが田母神氏だったという。この日、スタジオで田母神氏は「(さや氏は)田母神塾というネット配信でアシスタントを5年ほどやっていた。核武装論の主張は私のアレ(考え)が入っている」などと述べ、「これからはさやボーイズにならないといけない」と笑いを誘った。
2020年に結党した参政党はどういった人たちから支持を集めたのか。近大を休学中で、参政党支持を表明している石井雄己氏は「国に搾取されているという感じがあって、学生もバイトして厳しい生活をしている人が多い。そういう違和感の積み重ねで参政党の意見に共鳴している」と話す。
ANNの出口調査を支持政党別に比例の投票先を分析したところ、「支持政党なし」と答えたいわゆる無党派層では自民党と国民民主党がともに14%でトップ、次いで参政党の13%、立憲民主党は12%と続く結果に。
作家の竹田恒泰氏も、参政党の躍進は自民党の課題が招いた結果だとしたうえで、「(安倍晋三さんが)長い間、選挙を勝ち続けた。それは保守だけれども、無党派の人も結構いるわけで、ここをしっかりと繋ぎ止めてきた。ところが岸田(文雄)さん、石田(茂)さんが無党派の保守の人をバッサバッサと切り捨てて前回の衆院選なんて、自民党の中の保守の人たちを辻斬りのように消し去った」と分析。
田母神氏も「日本は保守派の国民が多いと思うし伝統文化を尊重する。だから自民党がこれまで多数を取ってきた。でも最近の自民党を見ていたら、経済はもう全くダメだし国家の自立も目指さない。憲法改正もする気がないし拉致問題の解決もしないで、とても保守とは言えないという状況になってしまった。完全に立憲民主党とほとんど変わらない状況になり、自民党は『やるやる詐欺政党』だと見切りをつけて、この人たちが『参政党がもっともだ』と流れた」と述べた。
岩田氏は、参政党の躍進に2つの要因を挙げた。「1つは、やはり現状に不満足であるという閉塞感で、これを多くの人が抱えている。なんとかしなくちゃいけないのに、どうしたらいいのか。それが自分でわからないが閉塞感があるという状態だ」
もう一点については、安倍元総理が亡くなった大きさを語った。「安倍さんがいなくなってから、自民党は本当に今まで保守だと言っていたが『この人たちは保守でもなんでもない』『保身のための政党』という思いが多くの人たちに広がりつつある。『日本を取り戻す』なんていうのは、まさに安倍さんがおっしゃってたこと。それを自民党ができないなら誰ができるんだというところを(参政党が)間隙を縫ってきた」
(『ABEMA Prime』より)

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