
サイコムの「Silent-Master NEO Z890」は、最新のAAAタイトルも快適にプレイできる実力がありながら、静音性に優れているゲーミングPCだ。静音へのコダワリは並々ならぬものがあり、独自の静音ビデオカード「Silent Master Graphics」(通称、SMG)を作ってしまうほど。
そのおかげもあって、動作音は電源が入っているかわからないほどの静けさだ。前回は、そんなSilent-Master NEO Z890の内部について詳しく紹介したが、今回は性能面についてチェックしていこう。
CPUやGPUの温度はどのぐらい?性能低下は?
まずはCPUベンチマークの定番となっている、「CINEBENCH 2024」を試してみよう。このベンチマークソフトは、CGレンダリング速度からCPU性能を測ってくれるもの。「pts」という単位の独自スコアーで評価してくれ、この数値が良いほど高性能なCPUとなる。
テストは全コアを使用する「Multi Core」と、1つだけ使用する「Single Core」の2つ。テスト時間は、デフォルトの10分以上のループで試した。
スコアーはMulti Coreが1692ptsで、Single Coreが137pts。同じくCore Ultra 7 265Kを搭載した「Premium Line Z890FD」の過去データ(Multi Coreが1892pts、Sigle Coreが136pts)と比べると、Single Coreは同程度だが、Multi Coreは1割減といったところ。
その理由はズバリ、電力設定の違いだ。Core Ultra 7 265Kの標準仕様は、プロセッサーのベースパワー(PL1)が125W、最大ターボパワー(PL2)が250W。つまり、短時間の処理であれば最大250Wで動作し、長時間の処理は125Wで動くということ。
この設定はインテルの推奨値であり、PCメーカーはこれを変更して出荷できる。実際、Premium Line Z890FDでは、PL1が159Wに引き上げられていた。冷却性能が高い水冷クーラーを採用し、長時間の高負荷動作が可能だからこそできる設定だ。
では、Silent-Master NEO Z890はどうかというと、PL1は125Wのまま。こちらは高性能状態を長く続けることよりも、発熱を抑えて静音性を重視する電力設定になっているということだ。
この電力設定はどちらがいいとかではなく、なにを重視するかというポリシーの違い。とはいえ、せっかくPL1=125Wで動かしても、冷却が間に合っていなければ意味がない。
そこで、Multi Coreテスト実行中のCPU温度をチェックしてみた。PL2動作時こそ瞬間的に100度を超えることがあったものの、PL1動作に入ってからは、80度前後をキープ。余裕を持った安全な範囲で動作していることが確認できた。
なお、テスト時の室温は29.2度と高めだったが、それで80度前後は素直に感心してしまった。しかも、CINEBENCH 2024のMulti Coreテストのように長時間高負荷がかかるシーンは限られている。イマドキは動画エンコードもGPUでアシストしたほうが効率的だし、CPUの全コアがフル稼働させたい作業は減ってきている。
ゲームはマルチスレッド処理に最適化したタイトルが増えたとはいえ、そう大きな負荷ではない。とはいえ、気になる人もいるだろう。そこで、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」(以下、FF14ベンチマーク)で検証してみた。解像度はWQHD、画質のプリセットは「最高品質」に設定した。
スコアーは19726で、同じCPUとGPUを搭載したPremium Line Z890FDの過去データ(19737スコアー)とほぼ同じ。このことから、CPUの電力設定の違いによる性能差はほぼないということがわかる。CPUの温度も見てみよう。
CPUの温度は最大81度、平均で72度と余裕で安全圏。空冷CPUクーラーでもしっかり冷やせていることがわかった。ついでにビデオカードのGPUの温度も見ておこう。
GPUの温度は最大68.9度、平均60.4度と、こちらもかなり余裕がある。独自開発の静音ビデオカードとはいえ、冷却性能はしっかりしており、きっちりGeForce RTX 5070のポテンシャルを引き出せていると言える。
なにはともあれ3DMarkで地力をチェック
定番ベンチマークソフトの「3DMark」の結果もご覧いただこう。テストは複数種類あるが、まずはDirectX 12 Ultimateに対応し、レイトレーシングやグローバルイルミネーションが多用されている「Speed Way」を試してみよう。
Silent-Master NEO Z890のスコアーは5738と、Core Ultra 7 265K+GeForce RTX 5070なら期待通りの性能だ。AAAタイトルでも画質次第では、4Kプレイも狙えるだけのポテンシャルがあると言っていい。Speed Way以外のテスト結果については下記にまとめておいたので、買い替えの参考にしてほしい。
FF14ならDLSSで4Kでも快適プレイ
続いては、FF14ベンチマークを深掘りしてみよう。WQHD&最高品質の結果は先述の通り、19726スコアー。評価は「非常に快適」で、最低フレームレートも68fpsと、かなり余裕がある状態だ。では、4K(3840×2160ドット)の場合はどうか。
スコアーは11840、評価は「とても快適」なので、Silent-Master NEO Z890で快適に遊べることは間違いない。ただし、最低フレームレートが53fpsと、60fpsを切ってしまった。MMORPGは30fpsもあればプレイできるが、気持ちよくプレイしたければ、滑らかに表示されるに越したことはないだろう。
そこで、DLSSの出番だ。DLSSは設定よりも低い解像度で描画し、その画面を超解像技術で高解像度化する機能だ。計算量が少なくなるため高速化できるうえ、画質も大きく見劣りしないという点がメリットだ。
設定方法は簡単で、「グラフィックス設定1」で「グラフィックスアップスケールタイプ」で「NVIDIA DLSS」を選択するだけ。なお、「適用するフレームレートのしきい値」は「常に適用」とした。
結果はご覧の通りで、スコアーは18055に大幅上昇。評価も「非常に快適」と文句なしだ。最低フレームレートは69fpsと、これなら重たいシーンでも滑らかに表示されるだろう。
モンハンワイルズでも4Kプレイはイケる?
続いては、「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」(以下、MHWsベンチマーク)だ。やや重ためのため、解像度はWQHD、画質はグラフィックプリセットの「ウルトラ」、レイトレーシングは「高」にした。なお、アップスケーリングは「NVIDIA DLSS」を使用し、フレーム生成は「ON」としている。
スコアーは17599、平均フレームレートは103.93fpsと優秀だった。ただし、実際ベンチマークの画面をチェックしていると、急に40fpsあたりまで落ち込む瞬間を2回ほど目撃した。
ベンチマークソフトの不具合なのか、ドライバーとの相性なのかわからないが、場合によっては重たくなる可能性があるようだ。試しに、レイトレーシングの設定を「高」から「中」に変更してリトライした。
今度はフレームレートの落ち込みはなく、すべてのシーンを滑らかに表示。スコアーは18371、平均フレームレートも108.13fpsとわずかながら上昇していた。不安なくプレイしたいのであれば、レイトレーシングの設定は「中」まで落としたほうが良さそうだ。
では、4Kならどうか? 先の設定をベースに、グラフィックプリセットを「高」に変更。レイトレーシングの設定は、引き続き「中」のままにしてみた。
スコア-は15815、平均フレームレートは92.44fpsとなった。これなら実際のプレイに支障が出ることはまずないだろうが、MHWsベンチマークと現在の実際のゲームでは、やや乖離があるという話もある。
個人的には4Kにこだわるよりも、WQHDにして画質をウルトラに上げるほうが気持ちよく遊べそうだと感じたが、ここは好みが分かれるところ。自分好みの設定を見つけてほしい。
「超高」以上の画質ならWQHDが最適の黒神話:悟空
美麗なグラフィックが魅力のアクションRPG「黒神話:悟空」のベンチマークツール(以下、黒神話ベンチマーク)も試してみよう。画質はプリセットの「最高」、解像度はWQHDから探ってみた。
デフォルトでは、スーパー解像度が「DLSS」、サンプリング解像度が「50」、フレーム生成が「ON」になっていたので、そのまま採用。フルレイトレーシングレベルは「超高」に変更し、プリセットの画質レベルは「最高」とした。
結果は、95パーセンタイルのフレームレートで91fpsと十分遊べるレベル。もう少し画質を落とさなければ、快適プレイは遠いかなとも思ったが、問題なく遊べる性能だった。
ちなみに、もう少し余裕が欲しいのであれば、画質レベルを「超高」に落としてみるのもいいだろう。「超高」時なら、95パーセンタイルのフレームレートは101fpsまで上がる。
なお、さらなる高画質化を狙うには、サンプリング解像度を「100」にするという手があるので試してみた。とはいえ、処理がかなり重くなるので、画質レベルは「超高」に落とした。
95パーセンタイルで43fpsと、フレームレートが激減。いくら画質レベルを落としたとはいえ、DLSSによるアップスケーリングなしでは厳しい戦いだった。画質レベルを下げれば多少は改善するだろうが、それでは本末転倒だ。そこで、DLSSのサンプリング解像度を「75」にした場合はどうなるのか試してみた。
95パーセンタイルのフレームレートは73fpsまで上昇し、十分ゲームが遊べるレベルに回復。DLSSのサンプリング解像度を上げて、細部のディテールにこだわりたいなら、ここがラインかもしれない。
ちなみに、4Kでも試してみたが、画質レベルを「超高」、サンプリング解像度「50」にしても、95パーセンタイルのフレームレートは56fpsと物足りない結果に。
フルレイトレーシングを「超高」から落とせばなんとか遊べるレベルになりそうだが、ゲームのウリである美麗なグラフィックはなるべく損ねたくない。素直にWQHDで遊ぶほうが良さそうだ。
まとめ:鉄板静音ゲーミングPCにRTX 50シリーズという新風
PC選びでは、少しでも安く高性能なモデルが欲しいという心理が働く。特に高価なビデオカードを搭載するゲーミングPCならなおさらだろう。そのため、単純にそのCPUとGPUの組み合わせで最安のモデルをコスパが良いものと思われがちだ。
しかし、よく考えてみてほしい。PCの買い替え頻度は5~7年が一般的。いくら安くともうるさかったり、メンテンナンスがしづらく性能が低下しやすいモデルは、長期的に見るとコスパが悪かったなんてことになるかもしれない。
静音性やメンテナンス性など、目に見えづらいストロングポイントは案外大事なのだ。もちろん、そのぶん高価になりがちだが、例えば最安モデルから3万円高くとも5年使えば、1ヵ月あたり約500円の追加出費で済む。
今まで少しでもPCの動作音で嫌な思いをしたことがある人なら、静音PCの価値は理解できるはず。同居人がいる人なら特に同意を得られそうだ。ゲーミングPCは欲しいけれど騒音が……と悩んでいるなら、Silent-Master NEO Z890を選んで損はないだろう。

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