
この記事をまとめると
■八丈島でソーラーパネルを積んだN-VAN e:(でん吉)に試乗
■でん吉はモータージャーナリストの国沢光宏さんの自作
■年間4000km以上を屋根のソーラーパネル発電だけで走行できる
N-VAN e:はエンジン車の軽バンに比べて圧倒的に力強い!
そのわけは初乗りのN-VAN e:の標準車と、同じN-VAN e:のルーフに太陽光パネルを搭載して自ら電源を作り、給電しながら走行を可能にするカスタムカーを作った、業界のちょっと先輩、国沢光宏さんの愛車への試乗が叶うためである。
平坦だと思った八丈島は島をぐるり一周巡ると、アップダウンとつづら折れのコーナーが連続するカ所があったりして、“公道サーキット”としても最高。 ……と、行く先々で常にこの目線で道路環境や施設の状況を見てしまう偏った性格は直さねばと思うが、チャリンコ小学生のころも、レーシングカートに乗った高校生のころも、新しい道を走りたいと常に思い描いた少年の癖が、還暦を過ぎてもまだ抜けない、走り屋の哀しい”性”である。
一般公道ながら八丈島の交通は東京している。つまり、制限速度で走行していると地元に煽られて、流れはそれなりに速い。いわずもがな八丈島は東京都である。
自然の空気はこの時期、山側は涼しく、海側に降りてくるとそれなりの暑さに変わる、これはまず試乗したホンダの電動バイクEM1 e: に乗って体感した。この素晴らしい環境が東京の羽田空港から1時間足らずで到着するその利便性も含めて八丈島、一発で気に入ってしまった。
ということは別として、まずはエンジン車の軽デッキバンに3名乗車で試乗場所に向かう。トラックの性格上、積載荷重を考慮して1速は超ローギヤードなギヤ比設定により、エンジンはヒステリックにフケ切るも、速度はヒトの早歩き程度。2速にシフトアップすると、直前までの勢いはトルクバンドに載ったハズだがガクンと失せて、加速は鈍い。
という印象をもったまま、N-VAN e:に乗り換える。さすが”軽バン”……いやN-VAN e:は、室内に箱物を収納する際の容積は抜群。助手席まで畳み込めてフラットになるので、長尺物も、ミニバイク、自転車、サーフボードの類も飲み込む。助手席側はセンターピラー(Bピラー)なしに開くドアとスライドドアで荷物の積み下ろしを含む利便性と開放感に溢れている。
助手席、後席をフロアに収納してフラットにしたフロアは、マットを敷けば車中泊も快適だ。停車時に空調を使用しても、電動コンプレッサーもないのだから音の環境面も抜群で、試しに寝転んだらそのままお休みモードに入りそうだった。
走行はもうBEVらしいモータートルクに勝る加速の勝利。エンジン車では急だった坂道を平坦路のようにグイグイ登り、アクセルの強弱にダイレクトについてくる加減速は、音も抑えられて滑らかな走行が実現する。このあたりは、HEVやPHEVのモーター加速を体感していればおわかりだと思う。
積載荷重が大きいトラック、バスこそ回転と同時に最大トルクを発揮するモーターは活きる。ということもすでに広く知られた話。N-VAN e: は電気自動車であるがゆえに、通常の軽トラにはできない電化製品の仕様と静かで滑らかな走行が実現するクルマとしての本分が高いレベルでまとまっている。
本気で「実用性」が感じられるでん吉の性能!
一方、“国沢号”はどうか? ボクは氏のアイディア、ひらめき(同じか)を具現化する実行力に敬服する。陸・海、(空はまだだが)こんなことができないか、できると楽しいと思うことに挑戦する。そこに仕事仲間や友人らが集まり楽しく遊ぶ時間を共有する。そうしたオトナの遊びができるのも才能だと思う。
太陽光発電をクルマに取り入れようと思ったのも、電気をどうやって蓄えるかと考えたときに太陽光パネルを活用する技術に目が行った。過去にあったTV番組からのヒントだが、太陽光パネルがビル建物、自宅、空き地に設置が流行った時期があった。
当時は、たとえばN-VAN e: のルーフいっぱいを埋める太陽光パネルは数百万円した。しかし時代はアレよという間に進み、中国製の太陽光パネルの品質は上がり、同じ面積でも価格は数万円にまで下がった。
自然の恵み、太陽光を使えば”火力だ化石だ”何だと環境問題から切り離せ、カーボンニュートラルに貢献しつつ電気が生み出せる。ルーフに載る太陽光パネルは、晴れはもちろん曇りでも年間平均で600kWhを発電する。それを直接クルマに入れられるシステムはないため、リヤに搭載するポータブルのリン酸鉄リチウムバッテリー(LFP)に蓄える。
600kWhとは、たとえばN-VAN e: が電費7km/kWhだとすると、4200km走行できる。汎用の太陽光パネルを使い、市販の蓄電池に溜めながらクルマに供給しながら走行する。もちろんBEVの課題である充電という作業が省かれる。という時代を先取りしているのが国沢カスタムN-VAN e: である。
その走行性能は、もちろん自動車メーカーではない個人の改造だから弊害もある。それは汎用の太陽光パネル単体重量が28kgと重いこと。本来は建物の屋根や土地に設置するためパネルを支持するフレームがある。パネルだけなら5kg程度というからほとんどフレームの重量だ。
ボクは3代目プリウスのときにルーフに太陽光パネルを埋め込んだオプションを選択した苦い経験がある。それは停車中でも自動で空調が入り室内温度を管理するための機能で、時代を先取りしている!! と勇んで選んだものの、ルーフに”10kg”は明らかに操縦性と乗り味を悪化させたことを後悔した。
それが国沢号は軽のルーフに”28kg”である!! 期待と不安で試乗すると……えっ!? 至って普通である。いえばロール量は増えているが、それが通常走行で悪さをしない事実に驚いた。軽のボディサイズながら床にバッテリーを敷き、車重???kgのBEVはいかに底重心であるか、という重量バランスの重要さを改めて知る。ルーフラックに直留めした太陽光パネルがフレームごと揺れた際に発するガタガタギシギシ音が気になるといえばそうだが、ゴムマウントすれば問題なし。
自家発電〜給電しながら走行できるBEVの先進性に、そんなことはどうでもよくて、ただただ時代が模型の世界のような広がりを見せている現実を実体験できたことが嬉しいし楽しかった。
ホンダの提案は冒頭に話してしまったが、電動バイクEM1 e:の試乗と同時に八丈島を半周する電費競技もあった。スイカヘルメットを被ったTV番組を思い出すが、電動バイクのよさはこの時期の”太陽光”、紫外線、赤外線の熱量に加えて、エンジン熱からの暑さでとくに走行風を受けない停車中が極めて不快な思いが解消される。
しかもアクセル捻るとモーター音のみのほぼ無音でゼロ加速からストレスのない軽快そのもののダッシュが利く。巡航中も加速も減速もしないアクセルの丁度いい位置を探り、電費と速さを両立しながらゴール。
電費のみを重視した走行に負けたが、電費とともに走行時間を計算式に加えるべきだ、と負け惜しみ。BEVバイクこそコースティングと回生が重要だと改めて思うEM1 e: の試乗も、我が家に電動バイクがあってもいいと、ホンダラクーンコンポ、ステップコンポのユーザーはそう思うのであった。

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