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歴代最大の意味を持つ電動の試作車

車重2.8tの高級SUVが、岩だらけの小道を進む。グレートブリテン島南西部に位置するイーストナー・キャッスル開発センターの原野は、数10年に渡り、歴代のレンジローバーが磨かれてきた場所だ。

【画像】圧巻の走破性が生む頼もしさ レンジローバー・エレクトリック サイズの近い電動SUVは? 全157枚

ここへ英国編集部がやってきた理由は、過去最も大きな意味を持つ、新世代の試作車へ試乗するため。ジャガーランドローバー(JLR)社は、ジャガー I-ペイスでバッテリーEVの口火を切ったが、それ以来となる新モデルが2025年後半に発売される。

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ランドローバー・レンジローバー エレクトリック(プロトタイプ

まだ第一印象ではあるが、完成度は間違いなさそうだ。優雅で落ち着いた、アイデンティティは変わらない。きっと、世界は受け入れてくれるだろう。

最大の強みが、明確にレンジローバーらしいこと。既存のモデルラインの延長上にあり、ガソリンやディーゼルプラグインハイブリッド(HV)など並行して販売される。高級感に不足はなく、能力に長け、唯一といえる訴求力を得ている。

モーターやバッテリーは自社製 基礎骨格はMLA

レンジローバー・エレクトリックは、現行のL460型、エンジン版レンジローバーと同じアルミニウム製MLAフレックス・プラットフォームを基礎骨格とする。開発を率いた技術者サイモン・フェアブラザー氏は、当初からEVも想定されていたと説明する。

駆動用バッテリーは、ニッケルマンガン・コバルト系で、容量は118kWh。駆動用モーターは前後に1基づつ搭載され、合計での最高出力は549ps、最大トルクは86.5kg-mを得ている。これらの電動パワートレインは、JLR自ら製造している。

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ランドローバー・レンジローバー エレクトリック(プロトタイプ

航続距離は、現実的な数字で約480km。現在の技術と利用環境における、ベストバランスだと主張される。より馬力を高めることも、距離を伸ばすこともできるが、それには大きなバッテリーが必要になり、悪循環へ陥るとのこと。

ロングホイールベースも予定 3列目はナシ

サスペンションは、レンジローバー・スポーツ譲りのツインチャンバー・エアスプリング。アダプティダンパーとペアを組み、ボディの動きを精緻に制御する。重心位置が低く、アクティブ・アンチロールバーは非採用となり、乗り心地では有利だという。

車重は約2800kg。プラグインHVのレンジローバーから、100kg増に留めている。前後の重量配分は、より理想に近いそうだ。

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ランドローバー・レンジローバー エレクトリック(プロトタイプ

ボディは、ロングホイールベース版も予定されているが、3列7シーターは選べない。電動パワートレインの機器が、車両後方のフロア下部分を専有するためだ。

荷室の広さ自体は、通常のレンジローバーと変わらない。しかし、オプションのスペアタイヤを選択すると、荷室内に設置されることになる。

乗員の快適性とバッテリーの効率性を保つ新技術

乗員側の空間も、通常のレンジローバーと同等。広々とはしているが、後席で長距離をゆったり移動したいなら、ロングホイールベース版の方が良いだろう。運転席は、背筋を伸ばした姿勢に広々とした視界の、コマンドポジションで落ち着ける。

レンジローバーは2023年にマイナーチェンジを受けており、エアコンとドライブモードに充てがわれていた、ハードスイッチが省かれた。タッチモニターでの操作が面倒に感じる人にとっては、うれしくない変化かもしれない。

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ランドローバー・レンジローバー エレクトリック(プロトタイプ

現状ではレンジローバー・エレクトリック固有の技術となるのが、特許も取得された「サーモアシスト」。砂漠のような暑さでも、北欧のような寒さでも、乗員を快適に保ち、駆動用バッテリーの効率性を維持するというものだ。

走行中は、駆動用バッテリーが発する熱を回収。-15℃という寒さでも、効果的に車内を温められるという。

走りの印象とスペックは、レンジローバー・エレクトリック 試作車(2)にて。


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