突然だけど、皆さんはヨコミネ式教育というものをご存知だろうか。簡単に説明すると、横峯さくら(29)の伯父・横峯吉文理事長の運営する、たちばな保育園(鹿児島県)で行われている教育法だ。

子供たちの抱く、競争したい、少し難しいことをしたい、そして認めてもらいたいという願望を教育に反映させるというもので、「スーパー園児」を次々に輩出しているというのだ。

絶対音感を体得する子がどんどん誕生したり、4歳からそろばんを使いこなしたり、大勢の園児が側転はもちろん、逆立ちしたまま歩くことができる。この保育園の特集が、9月10日(木)の「バイキング」(フジテレビ系)で放送されていた。(文:松本ミゾレ)

子ども達が自力で火起こし!まるで園児版「虎の穴

たちばな保育園の特集自体は、この番組で2回目だという。以前の放送終了後には、5万件を越す問い合わせがあったというのだから、かなりの反響だ。

今回は標高1700メートルの山で、園児たちが1泊2日の登山合宿をする模様を紹介していた。その内容がまた凄い。普通、保育園が登山合宿なんて言葉を使わない。遠足が関の山だ。いや、使ったとしても合宿とは名ばかりの軽いハイキングのようなものだろうと思っていた。でも違った。思いっきり登山合宿していたのだ。

初日は1200メートル地点で1泊するため、そこまでバスで移動するんだけど、降りてからはまさに電光石火。料理は全て子どもたちが行う。火起こしすらも大人は助けない。園児たちは、一度だけ見本を見せてもらい、以降は自分たちだけの手で火を起こす。当然、薪になかなか火が移らず、試行錯誤の50分。失敗に失敗を重ねて、ようやく焚き木が上手く燃え上がった。

横峯理事長は「ここで大事なのは手を怪我させること」と話す。大人の助けがない中で、失敗から学び自分で考えて達成することで成功体験を培うのだそうだ。

過酷な登山に順位付け、これってアリなの?

火起こしに関しては、まがりなりにも園児を預かる立場の大人が手を貸さず、みすみす子供に怪我をさせる可能性があるわけなので、賛否両論あるだろう。ただ、僕の意見としてはこの教育方法は間違っていないと思う。

痛い目に遭いながら、効率の良い方法を自力で見出すというのは、何も火起こしだけに通じるものではない。失敗を重ねての成長は、どんな人間にも必要だし、その経験は早ければ早いほど良い。横峯理事長の言う成功体験は、確かに的を得ていると感じた。

ただ、それでもちょっとどうかなぁと感じる部分もあった。2日目の登山本番での模様である。スーパー園児らが挑むのは霧島連山の最高峰、韓国岳(宮崎県)。実家が近所なので知っているが、まあ荒涼とした、しかも傾斜のきつい山だ。これには流石の園児も苦戦を強いられた。

ところが、ここで横峯理事長がとんでもない発言をする。

「5合目まで競争します!」

開始の合図で子供たちは一斉に駆け出す! 韓国岳の急な傾斜とごつごつとした岩肌を一斉に駆け上る!しかもこの競争、順位付けまでする。これも上位でゴールできれば前述の成功体験に結びつく。でも、最下位になった子はどうなるのか。

案の定、1人の園児が競争に負けて泣き出した。過酷な登山の最中に、突然競争がスタートして出遅れてしまった彼の胸中やいかに。が、ここでさらに横峯理事長のおどろくべき発言!

「泣いてる人に構うな!無視しろ!」

仲間の苦しみに共感するのは人として大事なことでは

え? それはあんまりじゃないか!? ナレーションでは「横峯は、あえて心を鬼にして~」みたいな空気を読んだこと言っているけど、複数の子供たちに、特定の園児を無視しろなんて、理事長が言うのはどうかなぁ。それって成功体験をさせることとあんまり関係ないし、いじめの構図みたいじゃん。

なぜ「一緒に頑張ろう」ではダメなのか。どんなに立派な理念を掲げていても、「泣いてる子を無視しよう」と言っちゃう理事長のいる保育園は、僕は嫌だ。

すぐ手を差し伸べることが本人の成功体験を妨げるとしても、それは引率の先生たちにだけ言えば良い話。一緒に生活している子たちに無視を強要するというのは、やり過ぎとしか思えなかった。

仲間の苦しみや痛みへの共感って、社会に出る以前に人として大事なものだ。僕はもしもスーパー園児を養成するこの保育園に、その素養を持たない子が入園したときのことを考えると、空恐ろしくなった。

というか、泣いている子供を無視することが教育に繋がるというのであれば、別にこの保育園に入れずとも、自宅で、それが無理なら放り出して大いに泣かせておけば良い。極論だけど、泣いても手助けしなかったら、子どもは結局自力でなんとかしようと努力するんだろうし、だったら自宅でも存分に成功体験させられる。

5万件も問い合わせがあるということは、この保育園にわが子を入園させたいと思う親御さんが大勢いるということなんだろうけど、まだ年端も行かない子供を競争させるというのは抵抗がある。

「私も子供をここに入れたい!」という声もあるけど……

でも、ネット上にはヨコミネ式教育を強く支持する声が結構多かった。いくつか紹介してみたい。

「やりすぎだなって最初は思ったけど、とっても賛成だな! 私も子供をここに入れたい!」
「今の順位をつけない教育は、競争心をなくし、向上心をなくすよね…」

こうして肯定的なコメントをしている方々にとっては、かなり魅力的な教育環境と感じられるのが事実であって、それなりに魅力なのだろう。

でもまあ、僕がもしもなんかの手違いで明日子供に戻って、両親に「ヨコミネ式って知ってるか?」って聞かれたら即座に泣いて逃げ出すけど。

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