
夫の裏切りを知ったとき、悲しさよりも先に込み上げたのは怒りだった。
「こんな女に取られたのが悔しかった」
そう語るのは、30代の会社員・高橋さん(仮名)だ。高橋さんは不貞の証拠をもとに相手女性を提訴し、最終的に187万円の支払いを命じる判決を勝ち取った。
「あのときの感情は、もう二度と味わうことはないと思う」
悔しさと怒りを抱えながらも、自らの手でけじめをつけようとした日々を振り返った。
●300万円を請求、返ってきたのは「50万円」の提示「最初は300万円を請求しました」と高橋さん。弁護士を通じて相手女性に内容証明を送ったが、返答は「50万円なら支払う」というものだった。
「完全にバカにされていると思いました」と憤る高橋さんは、交渉に応じず訴訟を選んだ。
訴状では慰謝料に加え、弁護士費用を含めた総額330万円を請求した。
離婚問題にくわしい玉真聡志弁護士は「不貞慰謝料では、請求額の1割を弁護士費用として加算するのは、裁判例でも一般的」と説明する。
●夫は「夫婦関係は破綻していた」と証言裁判では、高橋さん本人と相手女性に加え、なんと夫も相手側証人として出廷した。
「俺たちはもう夫婦関係が破綻していたと思う」と法廷で語る夫の姿に、高橋さんは「気持ち悪いという感情しかなかった」と振り返る。
「自分がこの男を選んでしまったことが本当に悔しい。こんな女に取られたのも悔しいし、なんとも言えない感情。今後、二度と味わうことはないと思う」
判決では、請求額330万円のうち、187万円の支払いが命じられた。玉真弁護士は「妥当な額」と評価する。
「現在の不貞慰謝料の相場は170万円程度。それに10%の弁護士費用を加えた額が、187万円という判断に反映されたのだと思います」
一方、証人尋問の場でも相手女性には反省の色がまったく見られなかったという。「あれは和解しなくて正解だった」と担当弁護士からも言われたそうだ。
●相手側は控訴も「覆る可能性は低い」相手側は判決を不服として控訴したが、高裁での審理は1回で終了。玉真弁護士は「覆る可能性は低い」との見方を示す。
「もし損害額を減らす事情があれば、期日を重ねて再び証人尋問がおこなわれるのが通常です。期日が1回で終わったということは、追加の審理が不要と判断されたということです」
高橋さん自身も、担当弁護士から「これで判決が覆るなら司法なんて…」と言われたという。
●離婚は「保留」、条件を飲まない夫高橋さんはいまだ離婚には応じていない。有責配偶者である夫側が申し立てた調停は不成立に終わり、協議は続いている。
「夫は条件をまったく飲んでこない。養育費も慰謝料も、私の提示に寄り添う姿勢すらない。だったら、離婚しなくても別にいい。私が"うん"と言わない限り、向こうは離婚できないんですから」
そう語る高橋さんは、いまも夫の「わがまま」な主張を聞き続けている。こうした膠着状態は、すでに2年近く続いているという。

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