
2030年燃費基準を達成
マツダはCX-60の商品改良に際し、XDハイブリッド・エクスクルーシブ・スポーツをベースにした特別仕様車、『XDハイブリッド・トレッカー(Trekker)』を発売。アウトドアのレジャーで活躍する装備を充実させただけではなく、燃費性能向上策を施した結果、2030年燃費基準を達成した。
【画像】よりアクティブな使い方をしたい!マツダCX-60の特別仕様『XDハイブリッド・トレッカー』 全29枚
今回は1500kmほど走らせて、その効果を体験することができた。まずはトレッカー独自の、特に燃費性能向上について記しておこう。
簡単にいってしまうと、マイルドハイブリッド搭載車の場合、ほぼ全域において『P2モーター』でエンジンを始動させ、駆動にも使用している。しかしトレッカーは、その一部のシーンでエンジン始動を『セルモーター』に任せているのだ。
クルマのおしがけをした経験のある方ならわかると思うが、クラッチを繋いだ瞬間、大きな抵抗を感じるだろう。つまりそれだけエンジン始動には力が必要だ。P2モーターはエンジン始動と駆動の両方を担っているので、いつエンジン始動が行われるかわからない状況では、常にその余力を残しておかなければならない。
その結果として、電動走行できる距離が少なくなっていたわけだ。極端な例えをすると、エンジン始動用に蓄えている力が約80%、走行用が約20%と書けばわかりやすいだろうか。そこでエンジン始動用の力をセルモーターにも負担させるようにすれば、電動走行用の割合が増えるわけだ。
まずはトレッカーのみで
ただし、スターターを使う場合のシチュエーションは限られている。基本的には2~5速の約40km/h以下の領域で走行している時だ。従って信号停車時などからのエンジン再始動は、P2モーターによって行われる。これは静かな始動が求められていると判断した結果だ。
また、アクセル全閉減速時のエアコン要件(エアコンがエンジン始動を要求した際)やアクセル操作に関係なくステアリングをある程度切った時なども、P2モーターでの始動となる。
ではなぜ今回トレッカーのみに採用されたのか?
このクルマのターゲットは、アクティブなライフスタイルの顧客を想定しており、特別仕様車限定カラーのジルコンサンドメタリックを設定。これは、「自然の中で映える色であり、アウトドアレジャーで活躍するアイテムも設定したことで、どこまでも走って使って頂きたいという思いからラインナップされた」とマツダ商品開発本部主査の柴田浩平さんは語る。
そして、「高価格SUVなのに燃費を良くするというのは、あまり世の中にはない発想です。燃費が良いことによる環境対応だけではなく、どんどん乗ってどんどん楽しんで頂きたいんです」と導入理由を説明。また、使用用途を踏まえると、スターター始動による音が若干あったとしても大丈夫ではないかという判断もあったようだ。
燃費性能はわずかだが向上
実際に走らせてみると、確かにセルモーターがまわる音は聞こえて来るが、それほど耳障りではなく、ドライバーが気にしていて初めて気づくレベル。同乗者はP2かセルモーターのどちらかわからないだろう。振動やそのほかのネガティブな要因も全くなかった。
燃費は、以下のとおりであった。
市街地:13.1km/L(WLTCモード18.7km/l)
郊外:16.1km/L(同21.5km/L)
高速:19.3km/L(同22.7km/L)
その後、トレッカーと同じパワートレインで、常にP2モーターでエンジンを始動する仕様となる『XDハイブリッド・プレミアム・モダン』で500kmほど走らせたところ、以下のとおりとなった。
市街地:13.1km/L(同17.5km/L)
郊外:14.4km/L(同21.4km/L)
高速:22.5km/l(同22.4km/L)
WLTCモード値と比較するとどちらも市街地及び郊外での乖離が大きいが、これは他のCX-60も同様なので、この燃費レベルは実測値に近いと考えられる。
さて、トレッカーで燃費性能が向上しているかだが、使用シーンが全く同じではないものの、僅かながらその効果はありそうだ。
市街地ではストップアンドゴーが多くP2モーターに頼ったため差はつかなかったが、郊外路は比較的流れに乗って走ることができるので、セルモーターを使用するシーンが増え、実測値にもその効果が表れているようだ。なお、高速燃費値の差はトレッカーのデータに、アップダウンの多い東名阪や京奈道路などが含まれているからだろう。
この結果を踏まえると、トレッカーと同様の仕様を他グレードに展開しても問題ないように感じた。

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