ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロのデビュー作を、広瀬すず主演で石川慶監督が映画化する「遠い山なみの光」が、現地時間9月4日より開幕する第50回トロント国際映画祭スペシャル・プレゼンテーション部門に正式出品されることが決定した。石川監督と広瀬が喜びのコメントを寄せている。

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2017年にノーベル文学賞を受賞し、「日の名残り」「わたしを離さないで」など映画化作品でも高い評価を受けるイシグロ氏が1982年に綴り、王立文学協会賞を受賞した長編小説デビュー作品が原作。自身の出生地である長崎を舞台として繰り広げられる本作は、戦後間もない50年代の長崎、そして80年代イギリスという、時代と場所を超えて交錯する"記憶"の秘密を紐解いていくヒューマンミステリー。

日本人の母とイギリス人の父を持ち、ロンドンで暮らすニキ。大学を中退し作家を目指す彼女は、執筆のため、異父姉の死以来、足が遠のいていた実家を訪れる。母の悦子は長崎で原爆を経験し、戦後イギリスに渡ってきていたが、ニキは母の過去を何一つ聞いたことがない。夫と長女を亡くし、想い出の詰まった家で一人暮らしていた悦子は、ニキと数日間を共にする中で、最近よく見るという、ある「夢」について語り始める。それはまだ悦子が長崎で暮らしていた頃に知り合った、佐知子という女性とその幼い娘の夢だった……。

長崎時代の悦子を広瀬が演じ、佐知子に二階堂ふみイギリス時代の悦子を吉田羊、ニキにはオーディションで選ばれたカミラ・アイコ、悦子の夫・緒方二郎を松下洸平、その父親・緒方誠二に三浦友和、そのほか日本パートに柴田理恵、渡辺大知、鈴木碧桜(子役)が出演している。

トロント国際映画祭は、北米最大級の観客動員を誇り、アカデミー賞の前哨戦として知られる。スペシャル・プレゼンテーション部門は、世界各地の映画祭で高く評価された話題作や、気鋭監督の最新作、世界的な名匠の新作がラインアップされる注目のセクション。これまでに是枝裕和監督の「怪物」や、濱口竜介監督の「悪は存在しない」などが出品されており、今年はすでにダニエル・クレイグ主演の「ナイブズ・アウト ウェイク・アップ・デッドマン」やHIKARI監督の「レンタル・ファミリー(原題)」の出品が発表されている。「遠い山なみの光」は同映画祭で北米プレミアを実施する。

今回の選出に際して、石川監督は「戦後を生き抜き、海を渡った一人の女性の物語が、誰かの記憶と響き合うことを願っています」と語り、主演の広瀬も「長崎で生き抜いた女性たちが感じでいたこの感覚を世界に知ってもらえる機会があると思うと、とても光栄に思います」と喜びのコメントを寄せた。映画は、9月5日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開。

石川監督と広瀬のコメント全文は以下のとおり。

■石川慶監督

初めてトロント国際映画祭に参加できることを嬉しく思います。トロントは、多様な文化や記憶が交差する街だと感じています。この地で、戦後を生き抜き、海を渡った一人の女性の物語が、誰かの記憶と響き合うことを願っています。

広瀬すず
トロント映画祭!素直に嬉しいです。紐が解いていくたび、振動が激しくなっていくような、当時長崎で生き抜いた女性たちが感じていたこの感覚を世界に知ってもらえる機会があると思うと、とても光栄に思います。監督、すごいです。おめでとうございます!

9月5日から公開 (C)2025 A Pale View of Hills Film Partners