日本弁護士連合会(日弁連)は7月22日、出入国在留管理庁が5月に発表した「不法滞在者ゼロプラン」について、「保護されるべき外国人までも排除しかねない」として反対する会長声明を発表した。

入管庁のゼロプランは、「ルールを守らない外国人により国民の安全・安心が脅かされている」との認識のもと、電子渡航認証制度の早期導入や難民認定申請の審査迅速化、護送官付き国費送還の促進などを柱としている。2030年までに退去強制が確定した外国人数の半減を目指すという。

● 外国人への偏見や差別につながりかねないと懸念

日弁連は「外国人についてのみ『ルール』を守らないという曖昧で漠然とした理由で『国民の安全・安心が脅かされる』とすることは、外国人に対する不安や偏見、差別につながりやすく、多文化共生の理念に反する」と指摘。「『非正規滞在者の存在イコール治安悪化の要因』といったような誤った認識の固定化を招きかねない」と懸念を示した。

特に問題視しているのが、難民認定申請の「誤用・濫用」への対応だ。声明では「申請者自らが当初から十分な主張をできるとは限らない」とし、実際に空港での申請が認められず収容され、1か月で不認定となったものの、裁判で難民と認められたケースがあることを挙げた。

また、2024年には3回の難民不認定処分を受けながら裁判で難民認定されたケースが2件あったことにも言及。「3回目以降の申請者であっても難民と認定される可能性を否定できず、本国への送還を促進することは基本的人権を侵害しかねない」と批判している。

●非正規滞在者「本人の責めによらない事情の者も」

日弁連は、非正規滞在者の中には「人身売買の被害者であったり、DVを受けていたりするなど、本人の責めによらない事情で在留資格を得られていない者・失う者も多数存在する」と指摘。日本で生まれ育ち、日本語で考え、日本社会に根付いている非正規滞在者もいることを挙げ、「国際人権法に基づいた権利擁護をすることで在留を正規のものとすることこそが不可欠」と主張した。

声明は「ゼロプランは国際人権法に反する」と結論づけ、「偏見に基づく差別が解消され、平等権が保障された共生社会の実現に向けて今後も力を尽くす」としている。

「不法滞在者ゼロプラン」は人権侵害の恐れ 日弁連、入管庁の新プランに反対声明