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EV需要の過大評価と敬意の欠如【記者コラム】

吉利汽車が欧州市場に進出した当初は、順調だった。同社はボルボを買収後10年間で主流のプレミアムブランドに成長させ、高い評価を受けていた。

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しかし、時が経つにつれ、他の欧州ブランドでの成功はほとんど見られなくなっていった。ポールスターは良質なクルマを設計しているものの、巨額の赤字を抱えている。ボルボは、組織が肥大化しすぎたため、人員削減を余儀なくされている。さらに、EX90の発売が遅れ、ようやく発売された後も完成度は高くなかった。

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吉利汽車はロータスに資金を投入したが、その運営は適切とは言えない。

吉利によるロータスの買収は、明るいスタートを切った。当時苦境に陥っていたロータスに、吉利が救いの手を差し伸べたのだ。状況は好転しつつあった。徐々に事業を拡大し、ノーフォーク州のヘセル工場とエミーラに投資し、伝統あるスポーツカーブランドに輝きを取り戻したかに見えた。

しかし、ミッドランズ地方に新しいデザインセンターを開設したことで、ヘセルの存在意義に影が差した。続いて、中国で開発・製造されたEVの新シリーズを発表。高級電動SUVセダンの需要を見込んで急ピッチで開発されたが、その需要は未だに到来していない。これにより、ロータスの心臓部が弱体化し、ヘセルとそこで働く人材、そしてその専門知識は軽視されるようになった。

吉利の巨額の資金も十分に活用されていない。既存の幹部の上にブランドへの敬意の欠ける人材を置き、ロンドンやアムステルダムに豪華な施設を建設するなど、わたし達が知るロータスとの乖離をさらに広げた。この浪費は、達成不可能なEV販売目標が全て大幅な未達に終わったことで、さらにひどいものになった。

ロータスのヘセル工場閉鎖。このニュースは6月末に報じられ、自動車業界に大きな衝撃を与えた。英国政府、吉利、ロータスの間で調整が続いていることは明らかだが、吉利はヘセルの存続を主張している。時が経てば、答えは見えてくるだろう。

確かなことが1つだけある。吉利はヘセルを適切に運営できておらず、英国自動車業界で高く評価されている生産拠点の衰退を招いた可能性が高いということだ。

一方、吉利は自社ブランドの英国導入を計画している。しかし、ノーフォーク州で多く売れることはないと断言できる。


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