スーパーで買ったナスを調理していたら、思わぬ痛みに襲われた──。そんな経験はありませんか。新鮮なナスのへた周辺には、小さなトゲがあり、触れると意外に鋭い痛みを伴います。

今年5月上旬には、X(旧ツイッター)上で「『なす』のトゲが痛かったとスーパのご意見箱にクレームがあったそう」という投稿が話題になりました。

身近な食品でも、思いがけないトラブルが起きることはあります。では、スーパーで買ったナスのトゲでケガをした場合、販売した店や生産者(農家)に法的な責任はあるのでしょうか。大和幸四郎弁護士に聞きました。

●スーパーの責任を問えるのか?

ナスは大好きな夏野菜の一つです。普段あまり料理しない私も、取材を受けて初めて「ナスにトゲがある」と知りました。

法的に見ると、スーパーと購入者との間には、ナスの売買契約が成立しています。通常、購入者が代金を支払ってナスを受け取れば、契約は履行されたことになります。

一方で、スーパーは商品によってケガをさせないようにする義務があると考えられます。これを踏まえると「新鮮なナスのへた周辺には小さなトゲがある場合がありますので、調理の際はご注意ください」といった注意喚起を掲示することが望ましいでしょう。

もしスーパーがこうした注意喚起を怠り、購入者がケガを負った場合には、治療費などの損害賠償責任を負う可能性があります。

ただし、購入者側も調理時に注意する義務があるため、過失相殺により、賠償額が減額されたり、ゼロになる可能性があります。

●農家の責任は問えるのか?

次にナスを作った生産者(農家)や流通業者の責任についてです。これらの事業者とは通常、購入者に直接の契約関係はありません。ただし、不法行為の要件を満たす場合には、形式的に損害賠償請求が認められる可能性があります。

この場合でも、購入者側の不注意が大きいと判断されて、やはり過失相殺が考慮されると思います。

いずれにせよ、現実的には責任を問うことは厳しいでしょう。

今年は例年以上に猛暑が続いています。精のつく新鮮な夏野菜をたくさん食べて、酷暑を乗り切りましょう。

【取材協力弁護士】
大和 幸四郎(やまと・こうしろう)弁護士
佐賀大客員教授、法律家退職代行事業「もうアカン」代表
事務所名:武雄法律事務所
事務所URL:http://www.takeohouritu.jp/

ナスの「トゲ」が痛かった…ケガしたら「スーパー」の責任?