「ムーヴ」がスライドドア化してライバルの「ワゴンR」ピンチか……って思ったけどいまのままでもイイぞ! ワゴンRを改めて評価してみたら魅力たっぷりだった

この記事をまとめると

■7代目のムーヴが登場しハイト系軽自動車に注目が集まった

スズキにはワゴンRワゴンRスマイルが存在している

■現行型のワゴンRは8年前に登場しているが今でも高いポテンシャルを秘めている

今こそリヤヒンジドアのワゴンRを再評価してみた

 自動車業界に携わる者として、最近、驚いたのが、7代目となる新型ダイハツ・ムーヴムーヴといえば、1993年スズキ・ワゴンRに続き、1995年に登場したハイトワゴン系軽自動車パイオニア的存在。”裏ムーヴ”としてカスタム、RSグレードを追加し、背の高さを生かしたゆとりある室内空間を実現した、大げさにいえば軽自動車に革命を起こした軽自動車だったのだ。

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

 ムーヴタントやムーブキャンバスと違って、王道のリヤヒンジ式ドアを備える、ダイハツを代表する軽自動車だったわけだが、2003年にスーパーハイト系と呼ばれる、背が高く(初代は1775mm)両側スライドドアを備えたタントが登場して以来、N-BOXスペーシアというガチライバルとの切磋琢磨もあり、軽自動車の主役はスーパーハイト系になっていったのも事実。

 ムーヴターゲットユーザーを60歳ぐらいの子離れ世代にシフトしつつ、後席の乗降性を高めるため、ハイト系でありながら両側スライドドアを採用し、カスタムを廃止することを決断したというわけだ(タントより車高は100mmも低く、先代ムーヴより25mm高いだけ)。※実際にはカスタム寄りのエクステリアデザインであることから、標準車を廃したといっていいかも。

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

 さて、ここでは、ダイハツ・ムーヴを横目で見てきたスズキのハイト系軽自動車ワゴンRについてである。このクラスのパイオニアであることはすでに説明してきたが、じつは、すでに2021年9月に、ワゴンRのスライドドア版であるワゴンRスマイルを発売(現在、新型ムーヴ対抗で絶賛CM放送中!!)。つまり、ダイハツ・ムーヴが、ライバルにあるスライドドアを新採用することは必然だったともいえそうなのである。

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

 現行ワゴンR1993年に発売された初代から数えて今や6代目(2017年~)。ハイライトのひとつがISG=モーター付き発電機を用いたマイルドハイブリッド化されたことと、依然としてライバルに対して軽量であることだろう。ISGは発進から100km/hまでのモーターアシスト(最長30秒)に加え、時速13km/h以下でのモーターによるクリープ走行(最長10秒)まで可能にしているのが特徴だ。

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

 現在のラインアップは標準車のFX、マイルドハイブリッドとなるFX-Sとカスタム系のZ、そのターボ版のZT、そしてアメリカンテイストあるスティングレー(T=ターボのみ)で構成。価格は129万6900円から176万5500円まで(2WD)と、ベースグレードの買いやすさもまた特徴となる。

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

ポテンシャルは今でも高い次元にあり

 そんなワゴンRに乗り込んでみると、クラス最大級のホイールベースによる、今でもハイセンスに感じられる室内空間のデザイン性のよさ、ゆとり、そしてなんといってもセンターメーター採用によるすっきりとした運転視界、ちょっぴり先進感ある上質さをインテリアに表現している。

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

 後席の居住性もクラス最上級で、リヤドアの開口部が広く、ステップからフロアに段差がなく、シート位置が高めにセットされていることで(ヒール段差350mm。新型ムーヴは300mmでしかない)、乗降性は抜群。とくに降車性はシートからの立ち上がり性に配慮されているためクラス最上の部類。後席足もとのゆとりもクラス最大級で、長身の大人でもゆったり寛げる空間が確保されている(ここに関しては新型ムーヴも同様)。

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

 具体的には、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準でワゴンRは前席頭上に230mm、後席頭上に145mm、膝まわりに最大320mm(160mmのスライド位置による)もある。ヒール段差はすでに説明したように、クラスでもっとも高い部類の350mmである。

 以上はワゴンRスマイルも同じ。ちなみに新型ムーヴは前席頭上に220mm、後席頭上に195mm、膝まわりに最大340mm(スライド位置による)という、ワゴンRの上をいくスぺ―スを確保している。

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

 ただし、後席頭上に余裕があるのは、シートを低めにセット(ヒール段差300mmがそれを表している)しているからだ。個人的には太腿部分がしっかりとシート座面に密着した自然な椅子感覚のかけ心地が得られ、座りやすく、立ち上がりやすいワゴンRのパッケージが好ましく感じられるのだが……。

 リヤヒンジ式ドアのワゴンRとリヤスライドドアの新型ムーヴは、当たり前だが、車重で差がある。ワゴンRは標準マイルドハイブリッドNAモデルで770kg。カスタムZのターボモデルでも800kgでしかない(2WD)。一方、新型ムーヴはNAのメイングレードなるXで860kg。唯一のターボモデルとなるRSで890kg(2WD)となり、車重差はムーヴがスライドドアを採用したこともあって、60~90kg重くなってしまうのである。

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

 さて、ワゴンRマイルドハイブリッドとなるNAモデルの走りだが、出足から滑らかに静かに加速し、乗り心地はしっかり&しっとりで上質。プラットフォームの剛性の高さからサスペンションがよく動き、段差や荒れた道を走破してもショックを一発で吸収し、不快な振動を残さないため、じつに快適だ。

 操縦性に関しても、パワーステアリングは適度な重さで安心感があり、しかも切っていったときの自然な操舵フィールが好ましく、運転のしやすさ、気もちよさは想像以上。先代より運転席が15mm低まったこともあり、たとえばカーブ、山道、高速レーンチェンジなどのシーンでより低重心感覚ある安定した走りが可能になっている。

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

 動力性能は軽量な車重を生かし、市街地、平たん路では必要十分。高速走行や山道(の登坂路)を走る機会が多いというなら、もちろんターボモデルを薦めることになる。そのターボモデルは出足の滑らかさ、全域の静かさ、軽めのステアリングが織りなすリニアでウルトラスムースな手応え、扱いやすさ、そしてエンジンをまわしたときの気もちよさ、爽快感、クラスを超えた上質な乗り心地、高速走行での余裕、静かさなどなど、さすが軽ハイトワゴンのパイオニアならでは質感で、それはデビュー8年目の今でも決して古臭さを感じさせない仕上がりといっていい。

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

 さらに、カーブや高速レーンチェンジでの軽快感に満ちた身のこなし、安定感も文句なし。横基調のモダンインパネデザインによる、より幅広いクルマに乗っているかのような疑似感覚は、高速走行でのリラックス度に大きく貢献してくれるほどである。

 今となってはワゴンRのライバルは日産デイズ、三菱eKワゴンホンダN-WGNとなり、両側スライドドアを備えた新型ムーヴは除外されてしまうのだが、スズキは真正ハイトワゴンのワゴンRワゴンRスマイル二刀流でこのジャンルで競うことになる。スライドドアに抵抗がある、スライドドア車の割高な価格はゴメン!! という人にとっては、リヤヒンジ式ドアのワゴンRのような軽量ミニマムワゴンにもっと注目していいと思える。

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

 ただし、WLTCモード燃費を紹介すると、ワゴンRHYBRID FX-S(146万3000円)で25.2km/L(2WD)。新型ムーヴのX(149万500円)はスライドドア車でもさすが新しいだけあって25.3km/L(2WD)を達成。ヒンジドア車と同等の燃費性能を実現している。しかし、いい方を変えれば、8年前のデビューにして、最新のムーヴと同等の燃費性能をもつ……ということでもある!?

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

8年前に登場したワゴンRは今見ても魅力の塊だった

「ムーヴ」がスライドドア化してライバルの「ワゴンR」ピンチか……って思ったけどいまのままでもイイぞ! ワゴンRを改めて評価してみたら魅力たっぷりだった