
歴史的なモデルカーやブランドをリバイバル
一世を風靡した歴史的な名車をそのイメージを伝承しつつ現代にリバイバルさせるといった手法は、ニュー・ミニやフォルクスワーゲン・ビートル、フィアット500などですっかりお馴染みです。
【画像】筆者が所有する『SPOT-ON MODELS BY NOREV』ブランドのミニカーたち! 全8枚
しかし自動車の場合は時代や環境に対応した、道具としての機能や実用性といった点を考慮しなくてはなりませんから、もちろん元ネタをそのまま再生産するというわけにはいきません。
最新のクルマとしての機能を備えなくてはなりませんから、結果としてみんな『見た目はそれっぽいけれど、やはり元ネタとは生まれた時代が異なる最新のノリモノ』になります。
翻って、モデルカー趣味の世界。実はこちらの分野でも、一世を風靡した歴史的なモデルカーやブランドをリバイバルさせる、といった事案は珍しくありませんで、本物のクルマと異なるのは、道具としての機能や実用性についてアップデートは考えなくても良いということです。
だから昔のモデルの生産設備(というか金型)が残っていれば、それを使って再生産すれば良いわけです。例えば、お馴染みのトミカ。トミカはすでに絶版となったモデルなども、特注モデルや復刻モデルとしてしばしば再生産されたりします。
単なる再生産モデルとはちょっと事情が異なる
今回このコーナーでご紹介するノレブのミニカーも、そんな『復刻モデル』なのですが、単なる再生産モデルとはちょっと事情が異なります。
パッケージをご覧いただければお分かりの通り、そのブランドのロゴは『SPOT-ON MODELS BY NOREV』となっています。熱心なミニカーファンならばご存知のとおり、『ノレブ(NOREV)』は第二次世界大戦終結直後の1945年9月に創立されたフランスの玩具メーカーです。
創業当初は子供用の玩具時計を設計、販売していましたが、1953年からはミニカーの製造にも乗り出し、今なお盛業。
そしてもう一方の『スポット・オン(SPOT-ON)』は、イギリス北アイルランドで生まれたミニカー。1935年に創立された玩具メーカー、トライアング社のダイキャストミニカー部門として1959年に生まれたブランドです。
同じ英国のディンキーとコーギーに続くミニカーブランドで、その作りは質実で堅牢ながら精密さも兼ね備え、現在のミニカーの標準スケールたる1/43に対し、1/42というほんの少し大きな縮尺を採用していることが特徴でした。
モデル化されるクルマは英国フォードのゾディアック、ヒルマン・ミンクス、オースチンA40、ボグゾール・クレスタ、アストン マーティンDBマークIII、ジェンセン541、ディムラー・ダートSP250、ブリストル406など、いかにも英国のブランドらしく英国車がその多くを占めています。
しかし、そんなドメスティックな製品ラインナップが災いしてか、スポット・オンは1967年ごろには終焉を迎えます。その後スポット・オンのミニカーは、通好みの希少なビンテージミニカーとして、熱心なコレクターたちの間で珍重されてきました。
1960年代当時のイメージそのままにリバイバル
一方、合従連衡、栄枯盛衰を繰り返すミニカー界にあって、今なお盛業であるフランスのノレブ。そんなノレブが、かつてトライアング社のブランドであったスポット・オンの商標を手に入れ、1960年代当時のイメージそのままに『SPOT-ON MODELS BY NOREV』のブランド名でリバイバルさせたのは2008年のことでした。
そのパッケージも、製図用コンパスと方眼紙をモチーフにした水色の箱で、これも典型的な初期のスポットオンのデザインを踏襲しています。オリジナルと異なるのは、『SPOT-ON』のロゴに『MODELS BY NOREV』が追加されていること。ミニカーのシャシー(裏板)にも、『SPOT-ON MODELS BY NOREV』の刻印があります。
このシャシーと箱によって、見た目はビンテージのスポット・オンのミニカーであっても、20世紀になってフランスのメーカーによって復刻されたレプリカであることがわかるわけです。
そんな『SPOT-ON MODELS BY NOREV』ブランドのミニカーも、そのほとんどが限定生産モデルでしたので、今となっては目にする機会もすっかり減りました。
復刻された当時は「メーカー自身がこのような復刻モデル、レプリカを作ってしまうと、貴重なオリジナルを所有しているマニアとしては複雑な気持ちなのでは?」などという意見も耳にしましたが、ミニカー好きの間でそんな話題となっていたのも、もう十数年前のことなんですね。時の流れを感じます。
ちなみに現在のノレブは分冊百科を得意とする出版社に素材(=ミニカー)を提供したり、実車イベントとコラボしてオリジナルのチューニングカーを実車とミニカーで同時発表したりと、あいかわらず意気軒高なのでありました。
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