
この記事をまとめると
■TGR GR86/BRZ Cupの十勝大会で井口卓人選手がBRZ勢トップの4位フィニッシュ
■ダンロップ勢の奥本選手は占有走行でトップを記録するも決勝は9位に
■全車僅差のなかタイヤ選択や気温変化が勝負をわけるレース展開に
コストのかかる北海道戦でも出走多数で熱い戦い
全国のサーキットを転戦する、TOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup。7月13日(日)、年に一度の北海道十勝スピードウェイ戦・決勝が行われました。
年に一度の開催ということと、同じく遠いオートポリス遠征とは違ってフェリーなどの移動コストなどもかかることもあり、シリーズをとおして参戦しているチームでも、十勝に限ってはスキップするチームもあります。それでもプロフェッショナルクラスは22台が出走し、予選では20台が1秒以内に収まる超接戦を繰り広げました。
22台の出走のなかでBRZを操るのは、チームタクティから出場する87号車千葉スバルレーシングの久保凜太郎、88号車東京スバルレーシングの井口卓人、89号車栃木スバルレーシングの奥本隼士、そして909号車レカロレーシングの小暮卓史の4台です。
89号車奥本は、このTGR GR86/BRZ Cupに参戦して井口選手の走りに感化されたことから、スーパーGTの現場でスバルチームに突撃訪問営業を行った結果、第3ドライバーとして帯同を許可され、スーパーGTの現場でトップクラスのレースの勉強を行っています。また、スーパー耐久ではメルセデスAMGを操りシリーズチャンピオン争いを行っています。
そんな努力が認められ、先日行われたスーパーGT第4戦のセパン大会では、スバルのライバルチームでもある4号車初音ミクメルセデスAMGに搭乗。見事表彰台を獲得するという「シンデレラボーイ」として勢いに乗っています。そのシンデレラボーイは調子のいい勢いのまま、このワンメイクレース十勝大会の占有走行ではトップタイムを刻み、パドック内で話題を独占します。
7月中旬の北海道十勝地方。気温の変動も大きく、レースウイークが始まる前の7月9日(水)は30度前後の気温を記録しましたが、いざ走行が始まる10日(木)には気温がぐっとさがり22度となります。11日(金)の15時過ぎに行われた占有走行の時間には18度付近という涼しい気温になったことで、低温ほど強いダンロップタイヤにとっては好都合で、ダンロップユーザーの奥本選手がトップタイムを刻みます。
予選が行われた12日(土)は、雲が多いながら気温は少し高めの25度付近。チームタクティの3台は予選が始まるとすぐにコースインしてタイムを刻みます。
これは、十勝スピードウェイがほぼ高低差の無いフラットな地形であること、コースサイドの土がコースに乗りやすくダスティで滑りやすいこと、さらに路面のミューが低くグリップしにくいことなどを考慮して、路面が綺麗な最初にタイムを出そうという作戦にでます。
15分という予選時間のなかでどのタイミングでコースインするかは、他のカテゴリー以上に非常にシビアな選択となるこのワンメイクレース。徐々にライバルがチームタクティ3台のタイムを上まわっていきます。
その結果、井口が2位、久保が10位、奥本が11位、レカロレーシングの小暮が21位というポジションになります。トップから小暮まででちょうど1秒差という僅差のタイムとなり、翌日の決勝ではどのようなレースになるのか期待の高まるところです。
決勝は高い気温でBSタイヤ勢が優位に
13日(日)の決勝日では、気温がぐんぐんあがり28度くらいを示します。このワンメイクレースではサスペンションやマフラーなどは認定パーツなら交換が可能ですが、ナンバー付き車両でのレースということもあり、極端な車高ダウンなどもできないため、ほぼ性能差はありません。
タイヤはブリヂストンかダンロップから選択することになり、井口と久保はブリヂストン、奥本と小暮はダンロップを選んでいます。
前戦のスポーツランドSUGOでも気温が高くなり、ダンロップタイヤは暑さにマッチングせず、ブリヂストンの後塵を喫することになりましたが、今回も予選上位をブリヂストン勢が占め優位な情勢です。
そして、気温と路面温度を考慮してタイヤの空気圧をシビアにコントロールすることが、このワンメイクレースにおいて重要な要素になります。
十勝スピードウェイは1周3405mでほかのコースに比べるとコース長が短いこともあり、14周と周回数も多くなります。高低差が少なく直角に近いコーナーが多いこと、コースサイドの土がコースに入りダスティなことなどもあり、周回数は多いながらも抜きどころが難しいコースでもあります。しかし、全車タイム差が無いことで、コース上でのバトルも多くなり見応えのあるレースが予想されます。
今回の十勝大会ではコーナーの立ち上がり部分にボラードと呼ばれる棒が設置されました(一般道や高速道路にもある赤い棒)。これはコースを逸脱して走路外走行を抑制するためのもので、当たれば車両に傷が付きますが、ある程度の速度で走り抜けるとポラードが折れたりのします。
決勝レースの1周目は団子状態でコーナーに入っていくこともあり、早速このボラードがいくつか倒されてしまいます。そのため2〜3周目にコース上に散乱したボラード回収のためセーフティーカーランが行われました。
その後は随所で激しい攻防が繰り広げられ、2位からスタートした井口は、途中ひとつポジションダウンを落として3位でゴールするかと思いきや、最終ラップの最終コーナーで後続に横に並ばれ、チェッカー直前でスリップを使われて抜かれ、悔しい4位となってしまいます。
奥本は9位となり、久保は当初9位でチェッカーを受けたものの走路外走行のペナルティを受けてしまい16位という結果に。レカロレーシングの小暮は21位完走というレースになりました。
井口は「決勝のスタートで今週のすべてが決まったという感じだった気がします。クルマの仕上がりはいいのですが、前に追いつくほどの速さはなかったし、後ろを抑えるほどの余力もなかった感じです。最終ラップでライバルがコーナーをバシッと決めてきて、チェッカー直前で抜かれたのは悔しいです。しかし、ファステストの1ポイントを獲得できたので、着実にポイントを稼げているのはいいことです」とレースを振り返ります。
9位でポイント獲得した奥本選手は、「レースの結果としては悔しいですけど、占有走行で全体トップを取れたのは非常に嬉しいですし、自信にも繋がりました。ダンロップタイヤと気温やコースとのマッチングを合わせ切れなかったのが予選の結果かなと思います。とはいえポイントも取れましたので、コツコツ上位を狙って走っていきたいですし、どんなときでもダンロップ勢のトップで行きたいという意気込みでレースに挑んでいきます」と語ります。
また、クラブマンクラス唯一のBRZでの参戦となったレカロレーシングの270号車、江原聖洋選手の走りにも期待されましたが、決勝レース1周目でミッションブローによりリタイヤとなってしまいました。クラブマンクラスでのBRZは少数派なのでこちらも応援していきたいところです。
TOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup2025はシリーズ後半戦に入っており、次回第5戦は10月4〜5日に鈴鹿サーキットで開催されます。どのようなレースになるのか非常に楽しみです。

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