
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者である親から虐待を受け、人権を侵害され続けたとして、「宗教2世」の8人が7月24日、教団を相手取り、計約3億2300万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
旧統一教会の信者が教団を訴えることはこれまでもあったが、2世が自らの精神的被害をもとにした提訴は初めてという。
●人生の重要な局面で選択や決定が許されなかった訴状によると、原告は20代から40代の男女8人。慰謝料や献金被害などを含めた請求額は1人あたり3300万円から約5984万円で、総額は約3億2308万円に上る。
原告らは、教団が「違法な伝道・教化手法によって親の信教の自由を実質的に奪ったうえ、2世に対しても直接的・間接的に人格権などを侵害する行為に及んでいる」と指摘した。
具体的には、幼少期から「恋愛は堕落の始まり」「統一原理に反する行動を取れば地獄に落ちる」「親や教会に背くことは神に背くことである」などと教え込まれたと主張。
異性との交際や進学・進路選択といった人生の重要な局面で、自由な意思による選択や決定が許されなかったという。
●原告「『絶対に逃さない』という強い思いから」提訴後、原告や弁護団が東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。
原告の1人で、四国地方に住む20代男性は、双子の弟が自死したことを明かしたうえで、次のようにうったえた。
「この訴訟は、私にとって、大きな意味が2つあると考えています。1つは、私が、教団の教えにより、自分の人生を自由に選ぶことができなかったこと、諦めざるを得なかった将来についての違法を問うものです。
2つ目の訴訟の意味は、私の双子の弟が自死したことに対して、教団の責任を問うことです。弟は生前に、統一教会との関係についてもう関わりたくないんだ、と話し、教会に行ったあとも辛そうな表情をしていました。
弟が、教団の信者ではない家庭に生まれていたら、違った人生があったと思います。この訴訟は、生き残った私が弟へできる唯一のことです。弟は、決して死にたくはなかったはずで、それは教団の影響を受けた死であり、その責任を教団は取るべきです」
会見に出席しなかった他の原告らについても、代理人がそれぞれのコメントを読み上げた。
「『絶対に逃さない』という強い思いから訴訟を起こさせていただきました」「せめて統一教会にはきちんと責任をとって欲しくて裁判を起こすことにしました」などと述べている。
今回の宗教2世による提訴について、弁護士ドットコムニュースは世界平和統一家庭連合に取材しており、回答がき次第、追記する。

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