
この記事をまとめると
■海外では10人乗りチャーターワゴンといえばボンネットのあるLCV風スタイルとなる
ベトナムでLCVとして人気なフォード・トランジット
タイの首都バンコクで見ていると、10人前後乗車ぐらいのチャーターワゴンといえば、かつては日本でいまもラインアップされているハイエースワゴンであった。いま海外では、ハイエースというと日本でお馴染みのキャブオーバースタイルではなく、ボンネットのついた欧米でのフォード・トランジットやメルセデス・ベンツ・スプリンターのようなLCV(ライト・コマーシャル・ビークル)風スタイルのもので、全長は5mを超え、全幅も2m近くあるかなり大きなモデルとなっている。
タイのトヨタWEBサイトをみると、貨物積載向けではなく多人数乗車仕様としては、“ハイエース”、“コミューター”、そして“マジェスティ”がラインアップされている。ハイエースには3名乗車で貨物積載専用車があるものの、ATとMTを用意する12名乗車仕様のGLが用意されている。コミューターは15名乗車となり、マジェスティは日本でもかつてグランエースの車名で販売されていた、11名乗車可能な豪華ワゴンとなっている。
タイではこれらハイエース系車両が定番というかほぼ一択となっており、ほかの東南アジアの国々でも同じような傾向が見受けられるのだが、ベトナムのハノイへ行くと少々事情が異なっていた。
ベトナムでは、フォードのLCVとなるトランジットが圧倒的に人気で、タイでのハイエースの役割を担っていた。GM(ゼネラルモーターズ)が東南アジアから撤退するなか、フォードは多くの国々でピックアップトラックのレンジャーと、レンジャーベースのエベレストをメインに東南アジアに踏みとどまっている。ベトナムではこの2台のほかにクロスオーバーSUVとなるテリトリーとトランジットがラインアップされている。
ハノイのノイバイ空港から中心市街地へ向かう車中から見ていると、まずトランジットばかりに驚かされた。ただし最新型は、アメリカや欧州でのトランジットと顔つきなどが大きく変わっているのである。調べてみると、中国でのフォードの現地合弁会社のひとつでトランジットの現地生産を行っている「江鈴福特(JMCフォード)」で生産されている最新モデル「トランジットT8」というモデルと見た目が同じとなっていた。
フォードに次ぐ人気を誇るヒョンデ
さらに、ハノイ市内で街を走るクルマを定点観測していると、トランジットのほかにも似たようなLCVモデルが走っていた、それがヒョンデの「ソラティ」である。ソラティは韓国やベトナムで使われている車名で、ほかのエリアではH350という車名でも販売されている、2014年にワールドデビューしたモデルである。
ベトナム国内ではクルマに限らず韓国資本の活躍が目立っている。ベトナムでのヒョンデのパートナーは大手自動車メーカーのタインコンとなっており、それもあるのかVAMA(ベトナム自動車工業会)にも加盟せず、モーターショーも参加せずに勝手に「ヒョンデモーターショー」を展開していると聞いたこともあるぐらいベトナムでは存在感のあるブランドとなっている。ベトナム国内でのソラティの発売は調べた限りでは2017年からとなっているようだ。
ベトナムで強い韓国系ブランドであり、地元パートナーも大手企業なので、当然ながら販売ネットワークも強固で、数日間ハノイに滞在していたらトランジットとほぼ同じぐらいソラティを見かけることに気がついた。15名乗車ぐらいまでの小型バスのようなチャーター車両はトランジットとソラティの二択となっていた。ちなみにマイクロバスはヒョンデ・カウンティがメインで、三菱ローザがパラパラと走っているぐらいであった。
興味深いのはハノイ市内で2022年7月に運行開始された「146系統」路線に導入されたバス車両である。コミュニティバスのような雰囲気の小さいバスは、なんとロシアのガズというメーカーのソボルという車両であった。
2022年といえば2月にロシアがウクライナに全面侵攻した年であり、7月は侵攻後となっている。そのタイミングでわざわざロシアメーカーの車両を採用するあたりは、「ベトナムという社会主義国家の立ち位置が日本など西側諸国とは異なるのだなぁ」ということを感じさせられた。

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