参院選2025 議席数

 与党の歴史的“敗北”で幕を閉じた、今回の参議院選挙。衆参両院で少数与党となったことで、経済政策面における野党の影響力増大が予想される。この状況は日本経済にどのような影響を及ぼすのか。『ABEMA Prime』では、元デジタル大臣の河野太郎衆院議員と経済の専門家に聞いた。

【映像】「(続投)ありえない」顔出しで話す自民議員

■“減税政党”躍進と日本売りリスク2つのパターン

 野党の減税案を見ると、「食料品消費税0%」を訴えているのが立憲民主党(原則1年間、財源は国債以外)と日本維新の会(約2年間、財源は税収増分や上場投資信託など)で、「消費税一律5%」が国民民主党(財源は税収の上振れ分や国債発行など)、「消費税の段階的廃止」が参政党(財源は国債発行など)となっている。

野党の減税案

 第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏は、「マーケットの受け止めは、少数与党になっても自公中心の政権であれば突拍子もないことにはならないだろうと。最大のリスクは、やはり非自公政権の誕生だ。2パターンあって、1つ目が“アンチビジネス”寄りの政党が政権を取ること。もう1つが、積極財政でかなり議席を伸ばした政党が額面のどおりの政策をやってしまうこと。後者は財政を出しすぎなので、やや日本売りのリスクがある」と指摘する。

■消費減税の是非と経済への影響

 今回の選挙で与野党の意見が分かれた消費減税について、河野氏は「自民党は『給付』と言っていた。そのためには補正予算を通してもらわなければならないが、今の状況だと通らないだろう。逆に野党が優勢になり、消費税に関する統一案を国会へ提出すればそれを通るので、今ボールは野党側にある」との認識を示す。

 消費減税に対しては否定的な立場で、「財源がない中で、円安につながりかねないし、円安がさらなる物価高を招きかねない。“砂漠で喉の渇きに苦しんでいる人に塩水を飲ませるようなもの”と参議院選挙で申し上げてきたが、日本経済に与える影響はネガティブなものがある」と指摘した。

ガソリン税の暫定税率廃止

 永濱氏は、政党別の案によって影響は大きく異なるとし、「一度下げると戻すのは大変。食料品を段階的に下げていくのはありだと思うが、いきなり0%にして戻す(立憲と維新)のは非現実的だ。参政党の『段階的廃止』は、みんな買い控えしてしまうので逆に景気が悪くなると思う。国民民主の『一律5%』も年間15兆円の財源が必要となるので、やりすぎだ。ただ、国民民主はそれほど消費減税の優先順位はそんなに高くなく、ガソリン暫定税率の廃止や基礎控除の引き上げのほうだろう」との見解を示す。

 さらに、自公の給付案も「貯蓄に回ってしまう」とした上で、「物価高対策で考えるのであれば、自治体がやっているデジタル商品券のようなものを期間限定でやれば、貯蓄されないし、負担軽減になるし、銀行振込の業務もないので、一番良いと思う」と提言した。

■永濱氏「消費減税といった小手先の話になってしまっている」

 円安・円高の議論において、河野氏は「今円安でも輸出は増えていない」と指摘。「円安のメリットは、海外で儲けた利益を円に換算すると、輸出企業の利益が大きくなっているということ。逆に、年金のように固定収入で生活している人にとっては、輸入物価高が手取りの減少につながる。これだけ高齢化が進んでいる日本では、円高にして固定収入の人が自由に使えるお金を増やすほうがメリットは大きいと考える」との見方を示す。

国民負担率の推移

 一方、永濱氏は「日本経済の供給力がないのに無理やり円高にしても悪影響が出てしまう」とコメント。「日本経済を考えるのであれば、家計に対する減税よりも、国内の供給力を高めるために、それこそトランプ減税のメニューにも入っていたが、減価償却を優遇することで国内の投資を増やすとか、日本では難しいかもしれないが、残業代の減税をやってもっとたくさん働いてもらうようにする。そういった足腰を強くするための減税が日本経済にも必要なのに、消費減税といった小手先の話になってしまっているのは問題だ」と投げかけた。(『ABEMA Prime』より)

“減税政党”躍進による経済への影響は エコノミストが指摘する“日本売り”のリスク2つ 「消費減税は小手先の話」