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交通安全を見守る「ロリポップマン」

英国全土の児童の保護者達が今、自治体の予算削減による学童擁護員の減少に歯止めをかけるためのキャンペーンを展開している。学童擁護員は横断歩道歩行者の安全確保にあたる職員のことで、英国では「ロリポップマン」や「ロリポップウーマン」という愛称で親しまれている(日本でいうところの「緑のおばさん」に相当)。

6月に発表された警察のデータによると、英国では2024年に413人の歩行者が交通事故で死亡したという。2023年比で2%増加し、道路関連死亡事故の4分の1を占めている。16歳以下の若者は、死者の4%、負傷者の10%を占めているため、学童擁護員の必要性が叫ばれている。

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ロリポップマンの存続を求め、保護者たちは各地でキャンペーンを展開している。

学童擁護員の数は過去10年間で半減したが、支持者は「子どもの安全を確保するために必要」と主張している。

ロンドン南部のクロイドン区議会は、今学期末に各学校から擁護員を廃止する自治体の1つだ。

「子どもたちの将来の安全が心配です」と、影響を受ける6校のうちの1校に通う児童の保護者は言う。「ロリポップマンとロリポップウーマンの存在は不可欠です」

クロイドン区議会の広報担当者は、「ほとんどの学童擁護員は数年前に段階的に廃止された」と述べ、残りの場所についてはリスク評価の結果、1か所に新しい横断歩道が常設され、3か所に一時的な仮説横断歩道が設置される予定だとした。

一方、全国の学校から学童擁護員が廃止されることに懸念を抱く保護者たちは、キャンペーンプラットフォームを通じて、学童擁護員の復活を呼びかけている。

その1つが、スコットランドのダンフリース近郊にあるダルビーティ高校の学童擁護員の存続を求める運動で、同校の近くには保育園と小学校もある。

10歳の孫が小学校に通うダイアナ・フィンニガンさんは、市議会の学童擁護員廃止に反対し、オンラインで署名活動を始めた。現在、500人の署名が集まっている。

「わたしは学校の近くに住んでいて、学校の外の道路が子どもたちにとってどれほど危険か毎日目にしています」と彼女は言う。「地方議員は、子どもたちは信号のある横断歩道を利用できると言っていますが、すべての子どもたち、特に幼い子どもたちが使うとは限りません。信号を無視して、命を危険にさらしてしまう子どもたちもいるのです。クルマが信号無視をするのを見たこともあります」

ダンフリース・アンド・ガロウェイ議会の広報担当者は、学校から学童擁護員を廃止する意向を確認し、「市議会のメンバーは、自動横断歩道から横断歩道監視員を撤収することを決定しました。議会職員は、保護者や介護者への連絡を準備中です」と述べた。

今月、交通安全慈善団体Brakeは、英国で毎日16人の小学生が道路で怪我をしていると指摘し、学校周辺での時速20マイル(約32km/h)の速度制限を全面的に導入するよう求めた。

しかし、Brakeのキャンペーンマネージャーであるルカ・ストレーカー氏は、学童擁護員が児童の安全確保に重要な役割を果たすことを認めつつも、安全対策が適切に実施されることの方が重要だと述べた。

ストレーカー氏は、「学校における交通安全の重要な要素の1つは、安全に横断できる場所を確保することです。それは学童擁護員でも、固定の横断歩道でも構いませんが、わたし達が確保しなければならないのは、子どもたちが安全に道路を横断できるような仕組みです」と主張している。

「ロリポップ」パトロールはいつ始まったのか?

英国では児童のための道路横断パトロールは1930年代初頭に導入されたが、1937年にバースで非公式に児童の横断を手伝い始めた学校管理人メアリー・ハントさんが最初の「ロリポップレディ」とされている。

政府が導入した新たな交通安全対策の一環として、学童擁護員が法律で正式に定められたのは、それから26年後のことだった。

ロリポップマンやロリポップウーマンの象徴的な道具であるカラフルな標識は、1960年代に導入され、棒付きキャンディに似ていることから「ロリポップ」と呼ばれるようになった。目立つ黄色いコートはその10年後に導入された。


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