
この記事をまとめると
■2024年問題に対応すべく国が物流効率化法を改正
■目的のひとつに「荷待ち時間の削減」が挙げられる
■新物流効率化法の荷待ちに関する内容について解説
物流効率化法が改正
「2024年問題」でトラックドライバーの不足が懸念されるなか、解決が難しいといわれているのが「荷待ち」である。これはかなり以前から物流業界で問題視されていたが、一向に解決の方向には向かっていない。その理由は、立場の強い荷主(荷出し事業者、荷受け事業者)の都合が優先されることに加えて、過当競争にある運送事業者がその要求を安易に受け入れていたことにある。
しかし、ドライバー不足が本格化したことで、行政はこの問題の解決に向けてやっと重い腰を上げた。それが、2025年4月に施行された物資の流通の効率化に関する法律(物流効率化法、国土交通省・経済産業省・農林水産省所管)の改正である。
そのポイントは、
・荷主、物流事業者には、物流効率化を図るために取り組むべき措置を講じる努力義務が課される
・物流効率化の取組状況について、国は判断基準に基づいて指導、助言や調査、公表などを行なう
・一定規模以上の事業者を特定事業者として指定し、中長期計画の作成などを義務付けて、それに基づく取組の実施状況が不十分の場合は、国が勧告、命令などを実施する
・特定事業者のうち荷主、連鎖化事業者(フランチャイズチェーン本部)には物流統括管理者の選任を義務付ける
などといったことだ。ここでいう「物流効率化」のなかに、積載効率の向上や荷役などの時間の短縮とともに、荷待ち時間の短縮が含まれており、その実効性の確保が求められている。
荷待ちは休憩ではなく労働
同法に基づくガイドラインでは、荷待ち時間を「トラックドライバーが荷物の積み下ろしのために待機する時間」と定義した。これには、以下の内容が含まれている。
・トラックの列待ち
物流施設に到着したときに、すでにほかのトラックが待機しており、荷役スペース(バースやプラットフォーム)に入る順番を待つ時間。
・荷物の準備の遅延
指定された時間に物流施設に到着したものの、荷主側の準備が完了していないため、荷降ろしや積み込みができずに待機する時間。
・積み下ろし場所の混雑
荷役スペースが混雑しているときの待ち時間。
・時間指定による調整
指定された配送時間に合わせるために、トラックドライバーが意図的に任意の場所で待機する時間。
これらの時間は、「使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」とされるために、すべて休憩時間ではなく労働時間と見なされる。すなわち、2024年に国土交通省の告示にある「年間の総拘束時間は3300時間以内、かつ1カ月の拘束時間は284時間以内」というトラックドライバーの拘束時間のなかに、荷待ち時間が含まれているということだ。
とはいえ、現場仕事である以上は予定どおりにいかないこともある。そこで、労使協定により「年間6カ月までは年間の総拘束時間が3400時間を超えない範囲内において、1カ月の拘束時間を310時間まで延長することができる」という例外規定が設けられているのだ。
これを超えれば、いかなる理由があってもコンプライアンス違反。事業者は物流Gメンや公正取引委員会などから、「働きかけ」や「要請」を受けることになるのだ。トラックドライバーに負担をかける長時間の荷待ちは、長年に渡って物流業界にはびこっていた悪しき習慣だ。一朝一夕で改善できるものではないかもしれないが、行政と業界が一丸となって改善を進めていくことが望まれている。

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