フジテレビ系ドラマ『愛の、がっこう。』(毎週木曜22:00~ ※TVerFODで配信)の第3話が、25日に放送された。

今作は、まっすぐで不器用なあまり過去に恋愛で大きな過ちをおかしてしまった高校教師の愛実(木村文乃)と、複雑な家庭環境から義務教育すらまともに受けられなかった読み書きの苦手なホストのカヲル(ラウール)が出会い、お互いが本当の“愛”を知っていくというラブストーリーだ。

○感情の高ぶりを咀嚼できていなかったが…

「人を好きになるのは理屈ではない」――そんなことは誰しも分かっている。しかし恋愛ドラマにおいては、その理屈をどうしても求めてしまう。もちろんカジュアルな恋愛ドラマであれば、美男美女という容姿や、気が合う2人を描くだけでその理屈を突破できてしまうのだが、ことこの作品においてその理屈は最重要と言っていいだろう。

なぜなら教師とホストが恋に落ちるという大前提の前に、好きになるその理屈が分からなければ、視聴者の共感は生まれず、ただ設定をセンセーショナルにしただけの色物になってしまい、今作の持つリアリティーや社会派の側面が一気に崩れてしまうからだ。

だからこそ、今作ではいかにして教師とホストが恋に落ちるのか?について、ここまで注視してきたわけだが、正直前回まではその理屈が弱く、なぜ恋に落ちてしまうのか、深く理解し共感できるまでには至っていなかった。

その序盤までの理屈とは、やりがいを感じていなかった教師と、読み書きができないホストが、“学び”によってこれまでになかったふれあいを得て、好意を抱いていくというものだ。その“学び”による理屈については理解できるものの、それはただのきっかけであり、そこに教師とホストが結びつくもっと深い何か、もう一歩踏み込んだものが必要ではないかと感じていた。実際に今回の第3話冒頭までは、愛実がカヲルに対してかなり一方的に好意のベクトルを向けており、その感情の高ぶりを咀嚼(そしゃく)できず、温度差を感じてしまっていた。

しかし、だ。今回のラスト、愛実が常連客の明菜(吉瀬美智子)に放った一言――「カヲルさんはバカじゃありません」から一変した。ここまで考えあぐねていた理屈を飛び越えてしまったのだ。

「人を好きになるのは理屈ではない」という、物語上で視聴者に説得力を持って答えを出せるはずがないものを、今作は丁寧な心情の積み重ねで、巧みなストーリーテリングで、展開の妙で、飛び越えてしまった。

あの場面を経てもなお、なぜ愛実がカヲルに、またはカヲルが愛実に、惹かれ合う理屈を問う人はいないだろう。それほどに、あのセリフ、あの場面、あの時の愛実とカヲルの表情、全てが上質だった。そして今作がラブストーリーとしての新たな出発点に立った記念すべき場面だったとも言えよう。
○主人公たちの関係を知って増す緊張の予感

今回は2人に大きな進展があったが、まだまだ油断できない要素が今作にはたっぷりと詰め込まれている。元々はカヲルに入れ込んでいた生徒の夏希(早坂美海)や、絶妙な気持ち悪さを醸している愛実の婚約者である洋二(中島歩)が、主人公たちの関係を知ることでどんな影響を及ぼすのか。

またカヲルをおもちゃのようにしか扱っていない明菜も、2人が恋に落ちてしまうことで何かのスイッチが入り、ホストクラブ内での均衡が崩れていくのか…。緊張感が増す展開はさらに続きそうだ。

「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平 おおいしようへい テレビの“視聴質”を独自に調査している「テレビ視聴しつ」(株式会社eight)の室長。雑誌やウェブなどにコラムを展開している。特にテレビドラマの脚本家や監督、音楽など、制作スタッフに着目したレポートを執筆しており、独自のマニアックな視点で、スタッフへのインタビューも行っている。 この著者の記事一覧はこちら
(「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平)

画像提供:マイナビニュース