
結果的にマイチェン前となってしまった限定車
今週、ルノー・カングーのマイナーチェンジが発表された。新エンブレム採用、17インチへの変更、バンパーが全てボディ同色になるなど小変更に留まり、個人的にはほっとしている。
【画像】地中海をイメージした専用色のオレンジが眩しい!限定車『ルノー・カングー・クルール・ディーゼル』 全40枚
というのも実は、今回の記事は結果的にマイチェン前となってしまった限定車、『ルノー・カングー・クルール・ディーゼル』のレポートになるからだ。
先に限定車の特徴を確認しておきたい。まず、ボディカラーは夏の太陽が降り注ぐ南フランスの地中海をイメージした専用色『オランジュ・コロンジュ』で、特に滑りやすい路面で効き目のある『エクステンデッドグリップ』を装着。
さらに、『オールシーズンタイヤ』、『パーキングセンサー』(フロント/リア/サイド)、『イージーパーキングアシスト』、『スマートフォンワイヤレスチャージャー』、『10インチデジタルインストゥルメントパネル』(ATモデル)が装備される。
販売台数はAT(EDC)が100台(価格429万円)、MTが50台(409万円)となり、発表自体は5月10日と2ヵ月以上前なので、気になる方はお近くのディーラーへ早めに問い合わせたほうがよさそうだ。
「これだけうちの取材をされているのに」
さて、現行カングーにちゃんと乗るのは意外にも今回が初めてだ。
広報車の担当氏にも「これだけうちの取材をされているのに」と驚かれたが、過去何度もタイミングを逃しており、今回、ようやくじっくり取材することができた次第だ。
ルノー自体は、2代目メガーヌが新車の時代にR.S.の長期レポートを担当して以来、かなり深く取材を重ねてきた。カングーに関しても初代が新車の頃からリアルタイムで取材しており、そのよさは十分に理解しているつもりだ。自宅の駐車場が機械式でなければ、ショッピングリスト入りした可能性もあった。
ということでまず、車両を受け取り室内に乗り込んだ瞬間、直感的に「おお、これはルノーだ……」と思えたのが嬉しかった。
「ルノーを借りておいて何を書いているのか」と総突っ込みを受けそうなので、行間にある筆者の気持ちを解説すると、「シンプルだけどシンプルすぎない、いい意味でプラスチック多めの飾らない雰囲気は長年取材してきたルノーそのもので、感慨深いものがあった」となる。
アルカナやキャプチャーが既に次世代ルノーに突入していて、これはこれで好きなのだが、誤解を恐れずに書くならば、それよりも旧世代の作りで新しいものが何もないカングーは逆に居心地がよく、気持ちが落ち着くのだ。
個人的にカングーらしいと思う部分は全て健在
いいところはたくさんある。まずはシート。座面の厚みがしっかりあって、新車だからかまだ張りが強い感じはしたが、長距離でもあまり疲れを感じさせなかった。
ディーゼルエンジンも素晴らしい。トルクがしっかりあって走りやすく、高速中心で1000kmは余裕で走れそうな燃費だ。事実、800kmくらい走って給油したら、メーターが残り1130kmを表示したほど。
背の高いクルマであるが、重心の高さや上屋の重さを感じさせず、コーナーでも足がしっかり粘って意外とよく曲がるのも好きなところだ。現行型がデビューした時に大きくなった印象も受けたが、全幅1860mmは昨今のクルマの中ではそれほど大きくなく、ステアリングもよく切れて、狭い道での取り回しは想像以上によかった。
ADASの世代が旧かったり、観音開きのテールゲートが左ハンドル向けで、右側のリア窓が小さくて視認性が低いのは歴代ずっとなのでさておき、Aピラーの角度が個人的なドラポジと合わないのか、何度かブラインドになる場面があったのは唯一気になった。
Aピラー手前の窓がロザンジュ、つまりひし形のルノー・エンブレムになっているのは素敵なので、実に惜しい部分ではある。
しかし、相変わらず収納スペースの多い室内や、ブラックバンパーの商用車感などなど、個人的にカングーらしいと思う部分は全て健在。特にこの限定車はオレンジの発色がよく、初夏の日差しを浴びて、とにかく魅力的に感じたのである。今回取材したのはATだが、MTもあるのか……と、取材中も取材後もHPを真剣に見たのは本当の話だ。
ずっとこのままであるとは考えにくい
電動化や、排ガス規制や安全基準への合致など、現代のクルマはクリアすべき課題が実に多い。もちろん、それ自体を否定する気は毛頭なく、少なくとも自動車が社会悪にだけはなって欲しくないと心の底から願っている。
だから、特にディーゼルエンジンを筆頭に、カングーがずっとこのままであるとは考えにくいからこそ、初代からの雰囲気を受け継いでいる現行モデルに新車で乗るのは、今がラストチャンスではないかと思うのだ。
今回乗っていて思い浮かんだワードは、『懐かしいルノーの味がする』というものだった。良し悪しではなくあくまで好みの話として、最近のルノーでは失われつつあるものがカングーには残されている。
どうやらルノー・カングー・クルール・ディーゼルが眩しく見えたのは、日差しやボディカラーのせいではないのかもしれない。

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